「逆転の発想、「ゴジラ-1.0」の影響も」フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
逆転の発想、「ゴジラ-1.0」の影響も
もともと、アポロ計画には無理もあった。もし、月面に人を送り込もうと思ったら、
まず、地球を離れて月をひと回りして戻ってくるところから始めて、
次に、月の周回軌道に入ることが目標、
できれば月にタッチダウンして地球に帰還することを経て、
月に着陸することが真の目的。
こうした試みを、まず無人のミッションで行い、有人のミッションに移行することができれば理想的。NASAのとった戦略は、司令船、機械船、月着陸船を組み合わせるという複雑なもの、こんな計画がたった10年で、本当にできたの?じゃあ、月に行かなかったとしたら、アームストロング船長たち3人は、一体どこにいたの?
この映画は、NASAの全面的な協力の下、こんな難しいアポロ計画は、上手くいきっこないから、フェイク映像の準備を表の計画にするとの、いわば逆転の発想で作られている。さて、実際は、どうだったのだろうか?
主人公は、私の大好きなスカーレット・ヨハンソンの扮する、なうてのPRレディ・ケリーと、チャニング・テイタムの務めるNASAの打ち上げ責任者コールの二人。背景は1969年。ケリーは、生きてゆくためには仕方がなかったとは言え、母に教えられて人を騙して生きてきた極めて魅力的な女性。一方、コールは、朝鮮戦争の英雄で、身体のことがあって宇宙パイロットにはならず、打ち上げに関わっている。アポロの次のスペース・シャトル計画でも、船長には空軍最高の操縦士が就くと聞いたことがあった。コールは、アポロ1号で、3人の飛行士を喪ったことを、今でも悔やんでいる。そんなコールに、ケリーは、どんどん魅かれてゆく。あんなに真面目なコールも、最後は、ささやかなウソをつくことを覚える。
この映画で、一番美しい場面の一つは、コールがケリーを載せて、朝鮮戦争の時のP-51マスタングを操縦して、800kmを旅するところ(ただ、戦闘機は複座に変更されていた)。この場面は、あの「ゴジラ-1.0」を思い出させてくれた。実際の機体とVFXの組み合わせ。マスタングと言えば、ケリーはフォード・マスタングのPRで認められて、NASAのアポロ計画に携わることができたのだった。しかも、P-51マスタングの動きは、この映画に出てくる「妖精」を連想させる。一方で、コールは、いつもライバル社のブルーのシボレー(GM)カマロSSコンバーチブルを乗り回している対比の見事さ!
見どころ満載の傑作映画!