「明るいノリのコメディ映画」フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン クロイワツクツクさんの映画レビュー(感想・評価)
明るいノリのコメディ映画
平日休みが取れたので見てきたが、そこそこ客は入っていた。年齢層が高そうだったのは、映画の内容か平日だったからか。
冒頭で妊婦に扮したケリー(スカーレット・ヨハンソン)が、ムスタングにシートベルトを、的なマーケティングの売り込みをしているのだが、他の映画でも見たような提案だな、と思ったが思い出せなかった。『フォードvsフェラーリ』だっただろうか。
このあとどう話が展開するのかと思いきや、政府のエージェントらしき、モー(ウッディ・ハレルソン)という怪しげな男が登場して、アポロ計画のマーケティングをケリーに依頼する。
冒頭からコミカルな展開で、1960年代の風物を描いているので、懐かしいコメディ映画の雰囲気。ケリーのマーケティングは、どこまで事実に基づいているのかはよくわからないが、オメガがアポロの公式腕時計となったのは有名な話だ。カメラはハッセルブラッドだったらしいが、この映画では出てこなかったように思う。映画でタイアップできなかった企業は除かれているのかもしれない。
アポロ11号の発射責任者、コール(チャニング・テイタム)と、ケリーとの出会い、車と飛行機でのドライブ?もデート映画(って今は言わないか)としてよくできている。ケリーの秘書や、コールの同僚や仲間たち、癖の強い政治家連中もいい味を出しているし、登場人物が多いのに、ストーリーもごちゃごちゃせずに良くまとまっている。黒猫の伏線回収も見事。ロケット打ち上げシーンは迫力があって良い。
胡散臭いエージェントのモーが、『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』を歌って踊るシーンもいい。この男もどこか憎めないキャラクターだ。
終盤の月面での撮影が不調に終わった場合の保険として、裏で行われる月着陸映像の撮影は、『カプリコン1』を嫌でも思い出すが、昨今のアポロ捏造疑惑という都市伝説にも絡めていて面白い。この撮影を行う映画監督がゲイっぽいというか、ゲイなんだろうけど、なんとなく、『マネキン』を思い出した。全体的に見ていて、’80年代に多かった、ダイアン・レインとか、リー・トンプソンみたいな若手の女優が出ていたような、明るいノリのエンターテインメント映画を思い出して楽しい時間を過ごせた。
最近は、こういうノリのアメリカ映画あまり見かけない気がする。あんまり映画.comでの評価は高くないようだが、私は映画館を出た後も明るい気分でいられるような映画をもっと見たいので、若干点は甘目につけてみた。