「陰謀論にラブ・ロマンスで応える実に凝った脚本 神業的なエンディングの傑作」フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン ITOYAさんの映画レビュー(感想・評価)
陰謀論にラブ・ロマンスで応える実に凝った脚本 神業的なエンディングの傑作
ウェルメイドでオーソドックスな作風のラブ・ロマンス。
ケリーの’60年代のファッションが美しく、流れる曲もいい雰囲気の中、
偶然の出会いの時のコールのカッコよさ。
抜群のシチュエーションに、口説き文句が実にスマートで自然。
その相手との驚きの再会。
NASAのPR作戦が始まり、二人は最初は反目するも、徐々に相手を理解していく。
二人で協力して、有力議員を説得する抜群のチームワークで、二人の仲も急接近。
小型機に同乗しての夜間飛行、なんてロマンチックなシチュエーション。
並行して、宇宙飛行に携わる多くの人々の夢と情熱も描かれていくという素晴らしい脚本。
そこに、大統領側近モーの悪魔の命令が下される。
秘密でフェイク映像を用意することになり、二人の仲に不穏な空気が流れ始める。
さらに、成功してもフェイク映像を流せと言う。
これに反発したケリーたちは、裏で協力し合い真実の映像の方を流そうと奔走。
そして、ついにアポロ発射の時を迎え、物語はクライマックスに。
生中継の時が来るがアポロでは機材トラブルが発生、フェイク映像の撮影も巧妙過ぎて、どちらが放映さているかわからない。
さて実際流れてるのはどっちか???
爆笑しながら、ドキドキハラハラ。
ここに伏線だった不吉な予感の黒猫が活きてくる、凝ったシナリオ!
単にどっちかになって終わらせない、二転三転するのが実にうまい。
結果、真実の映像を流して大正解でしたという結末が、上手すぎる。
話としても凝っているし、正しいことが報われる、万事ハッピーという神技的決着。
奇跡的な「全方位ハッピーエンド」で気持ち良く見終われるとってもいい作品でした。
昔からあった典型的な陰謀論を、ウェルメイドなロマンチック・ラブコメディに仕立ててしまうというのが何ともユーモラスでスマート。
こんな内容なのに、NASAが全面協力したリアルなセットと映像の迫力満点。
個人的に欲を言えば、発射の瞬間はもっとディテールが観たかったけれど、それだと全体とのバランスが崩れてしまったかもしれない。
唯一、想像と違ったのは、絶対にエンドロールでタイトル曲がフルで流れると思ってたのに、それが無かったのがとっても残念!
何で???それでは本国ではベタすぎるとかあるのだろうか?
(しかも女声バージョンを期待していたのはエヴァの影響か?)