「なぜに今、〔カプリコン・1〕なのかと思ったら・・・・」フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0なぜに今、〔カプリコン・1〕なのかと思ったら・・・・

2024年7月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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予告編にふれた時に、
ある程度映画を観ている人なら
〔カプリコン・1(1977年)〕を想起するだろう。

国家の威信を賭け、火星探査のために打ち上げられた有人宇宙船「カプリコン・1」。
が、失敗を恐れた政府の陰謀で、三人の搭乗員は実際には乗ってはおらず、
地球上に秘密裏に造られたスタジオに連行され、
宇宙中継の芝居をさせられるとのプロット。

ただ、予期せぬ事故が起こったことで目論見は外れ
事態は二転三転。
{SF}映画のようで、実態は{サスペンス}との、手に汗を握る名作。

で、本作は1969年に人類史上初の月着陸をはたした「アポロ11号」を題材に。

往時から、そして今でも
「本当に月に行ったの?」「フェイク画像じゃないの?」との声は多くあり、
それを逆手に取る。

失敗を恐れた政府は、射場の近くに設えた巨大スタジオから
月着陸以降の場面のフェイク画像を中継しようとたくらむ。

とは言え、先作と同様、今回も{SF}の皮を被った{スクリューボール・コメディ}。
女詐欺師と純朴な青年の{ラブロマンス}には
〔レディ・イヴ(1941年)〕等の名作があるのだが、
そういった古いモチーフをより洗練し盛り込んでいる。

政府側の心配もむべなるかな。

〔ライトスタッフ(1983年)〕でも描かれたように
宇宙開発は失敗の歴史。

ましてや、戦費が膨大に掛かる「ベトナム戦争」も同時期にあり、
宇宙関連の予算は削減のやり玉に挙げられる。

それを阻止するためにアサインされたのが
PRマーケティングのプロ『ケリー(スカーレット・ヨハンソン)』。

実力をいかんなく発揮し世間の耳目を集めるとともに、
スポンサーを付けることで歳費調達にも成功。

とは言え、政府機関に弱みを握られている彼女は
フェイク画像の中継にも渋々協力する。

『コール(チャニング・テイタム)』は
元々は宇宙飛行士を志望も身体に問題があり、断念。
今は「NASA」の発射責任者としてプロジェクトを牽引する。

二人は出会い、当初は『ケリー』の強引なやり方に反発していた『コール』も
彼女が上げる実績により、次第に意気投合するように。

しかし、フェイク画像中継の計画が露見したことで
一旦こじれた関係も
結局は共同戦線を張るように。

タイトルにもなっているジャズのスタンダードナンバー〔Fly Me To The Moon〕の
録音テープは、アポロ10号・11号にも積み込まれ、
人類が月に持ち込んだ最初の楽曲になったという。

その曲に導かれるように、
アポロ計画も二人の関係も大団円を迎える。

評価は、☆五点満点で☆☆☆☆。

髪型や髪の色、赤い唇、
更には顔の黒子の位置やサブリナパンツの着用などから
『マリリン・モンロー』を念頭に置いたであろう
『ケリー』の造形はコケティッシュ。

プレゼンテーション場面のテンポと滑舌の良さ
したたかな仕掛けも特筆もの。

ほぼ出突っ張りで演じる『スカーレット・ヨハンソ』の存在だけでも
本作を観る価値はあり。

ジュン一