「不器用だが、熱く貫く」モンキーマン Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
不器用だが、熱く貫く
ポスターの上にジョン・ウィックの文字が輝いていたせいもあるのは事実ですが、最初の賭け試合が終わるまで、キアヌ・リーブスが出るとばかり思っていたのは、やはり秘密にしておきたい。
◉子どものような一途さで
お前は何者だと問われて、何者でもないわ! と答えたレイとは違い、無言のまま自分はリベンジャーであると、身振り手振りで告げる主人公。キッドは復讐のためにハヌマーンの化身となり、さほどの紆余曲折も無しに、こちらは悪の化身ともなった聖者と警察署長が支配する巣窟に踏み込んでいく。そこは子供であるし、ためらいはない。
◉何も足さない、何も引かない
痛みを紛らしてくれる麻薬みたいに、筋書きに要るかも知れない諸々の要素を飛ばした、痛快なアクション。血の量は増え、叩き割られる頭蓋骨や足腰の数もガンガン増えていった。とにかく闘いシーンが痛そうだなぁと言う感覚。
キッドの記憶を辿って、逸らしようのない怨恨がキッドを突き動かしていることも見せてくれたから、彼の行為に浸れたのは事実でした。
◉独りで死んでいく
とは言っても物語である以上、キッド一人の恨みと、寄り添った人々の悲哀が重なる瞬間があるならば、それをきちんと見たかったし、怨恨の対象である巨悪が膨れ上がる姿とかも見たかったです。
でも、神に近づいたキッドでありながら、基本は血しぶきだけ。
それから、命は捨てたキッドだが隠遁者たちとの触れ合いも含めて、何か人としての優しさは残していたようで、聖者と相討ちになったのは残念でした。
またいつか会おうみたいな表情を見せながら、キッドは風に吹かれて消えるのだろうと思っていました。有りがちではあっても、復讐者の明日を想像したかった。