「面白さはあったのですが、好きになった理由への疑問を思わされました。」恋を知らない僕たちは komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
面白さはあったのですが、好きになった理由への疑問を思わされました。
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
この映画『恋を知らない僕たちは』は、いわゆる高校生の男女3対3の、恋愛6角関係ストーリーです。
それぞれの若い俳優の皆さんの瑞々しい演技で、物語も展開があり面白さはあったと思われました。
もちろんハードルを下げればそれでも十分面白さある映画になっていたと思われましたが、一方で、映画としての深さに関してはどうなんだという疑問はあったと思われます。
特に、それぞれがなぜ相手のことを恋愛として好きなのか、その理由の深さある描写が欠けていた問題があるように感じました。
この映画『恋を知らない僕たちは』は、主人公・相原英二(大西流星さん)の幼馴染であった汐崎泉(莉子さん)が、同じ中学に転向して来るところから始まります。
主人公・相原英二が汐崎泉に自分の想いを言えないままでいる間に、相原英二の親友の別所直彦(窪塚愛流さん)が汐崎泉に告白し、汐崎泉は別所直彦と付き合うことになります。
この時に、主人公・相原英二は自分の汐崎泉への想いを悟るのですが、汐崎泉と、親友の別所直彦の2人の両想いの関係も壊すことが出来ず、自分の汐崎泉への気持ちを封印して3人は高校に進学します。
この映画序盤で、主人公・相原英二や、汐崎泉や、親友の別所直彦が、それぞれなぜ相手を好きなのかという深い描写はありません。
ただ、中学の時の話ですし、外見も良い幼馴染との男女の関係において、そこまで深い描写がなくても、幼馴染や親友などの幼少期からの信頼やウマが合うなどの関係性や、外見の好みなどで、互いがひかれ合ったというのはなんとなくは理解は出来ます。
その後、3人の関係性は変わらないまま高校に進学し、そこで出会った高校の先輩にむげに扱われていた藤村小春(齊藤なぎささん)や、図書委員の池澤瑞穂(志田彩良さん)や、軽音部の瀬波太一(猪狩蒼弥さん)と出会うことで、高校生男女6人の恋愛6角関係に物語は発展して行きます。
その後、最終的に主人公・相原英二は、汐崎泉への想いをあきらめて、藤村小春に告白して2人は付き合うことになり、ハッピーエンドで物語は終わります。
しかし、映画を観ている1観客からすると、なぜ主人公・相原英二が藤村小春を好きになったのか、深いところでは分からないままと思われました。
主人公・相原英二が藤村小春と保健室でキスをするシーンがありましたが、これも先輩の上条タカヒロ(小宮璃央さん)から逃げる為に相原英二と藤村小春が保健室のベットに逃げ込み、たまたま2人の顔が近づいたので突発的に起こった本能的なキスに思われました。
もちろん、主人公・相原英二は幼馴染・汐崎泉への想いを果たせず、藤村小春は先輩の仕打ちで悲しんでいる時にハンカチを差し出され好きになった別所直彦への想いを果たせず、2人は互いに傷を抱えていてそれを互いに癒すための2人の保健室でのキスだったとは思われます。
ただ、主人公・相原英二と藤村小春が(それぞれ汐崎泉や別所直彦への想いを封印した感情を超えて)恋愛の好意をなぜ持ったのか、積極的な深い所での描写はないままで映画は終了したと思われました。
図書委員・池澤瑞穂が主人公・相原英二に好意を寄せるのも、たまたま図書の雪崩があって2人の顔が近づき合って、池澤瑞穂がドキドキの感情を持ったから以上の描写もありませんでした。
もちろん、人間もしょせん根底は動物であるから、本能的に外見の好みや接近などで恋愛感情なんて湧くものだ、と言われれば全くその通りだと思われます。
ただ人間を深く描写する映画作品においては、もう少し人間的に深い所での感情描写が必要だったとは思われました。
また、軽音部の瀬波太一がどのような音楽を好んでいるか、図書委員の池澤瑞穂がどんな本を普段読んでいるか、など、他の4人も含めて、それぞれ6人の背景ある深い人物造形描写もなかったように思われます。
藤村小春が、自分は自分の望みを優先して、汐崎泉や藤村小春のように、相手を思いやって行動出来ないと涙する場面があって、そのシーンは私も良いシーンだとは思われました。
しかしこの藤村小春が涙する女性3人のシーンは、恋愛の話というよりも友情の話であって、恋愛映画の本筋からは外れた感動とも思われました。
もちろん今作は私のようなこんなうざい考えをする人間相手には作られておらず、全く私のような人物をターゲットにした映画ではないとは思われます。
ただ、若手の酒井麻衣 監督を目当てにして観た1観客からすると、映画の水準としては、人物や関係性の描写の深みの部分では問題の多い映画で、酒井麻衣 監督はこの水準で満足していて良いのだろうか?とは、僭越思われました。
点数はその点から厳しい私的評価になってしまいました。
しかしながら、それぞれの役を演じた、大西流星さん、窪塚愛流さん、齊藤なぎささん、莉子さん、猪狩蒼弥さん、志田彩良さん、などは瑞々しい演技をされていて、観るべき点も一方で多くある映画だったとは思われています。