教皇選挙のレビュー・感想・評価
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ファーストカットからラストカットまで目が離せない。
見事な映画でした。
計算された映像、脚本。ファーストカットからラストカットまで目が離せない。
(ファーストカットとラストカットが素晴らしい。)
レイフ・ファインズが神がかった演技する。それにイザベラ・ロッセリーニの存在。なんとも美しく年を重ねて、この映画の良心のような役割。凛としている。
スタンリー・トゥッチも高貴な俗物を楽しそうに演じている。性格俳優(?)ジョン・リスゴーがなかなかの風格で楽しい(どこか嘘くさくて)。
それにカルロス・ディエス(この映画のヘソ)、セルジオ・カステリット、ルシアン・ムサマティ、の演技合戦も楽しい。
映像は青みを帯びた映像で、色調は赤と黒と白で統一されている。無駄のないカットと構図。それらの美しい映像を見ているだけで楽しい。
それに音が、かなり意図的に強調されていて映像効果を上げる。
フェリーニ、ヴィスコンティが撮影したあのチネチッタスタジオ(!)で撮影をしている。そのセットの素晴らしさ。美術の勝利でもあると思う。
話はコンクラーベ。本当に投票のみの話。外にほとんど出ない。それなのに奥行きと広がりのある映画になった。素晴らしい脚本(アカデミー脚色賞)。
映像、役者、演出と音、音楽が渾然一体となってラストへひた走る。
で、ラストカットで、ようやく息が抜ける。
実に面白い。
アカデミー作品賞を取ってもおかしくない作品だけど、取れなかったのもうなずける。
それは見てのお楽しみ…。
監督のエドワード・ベルガー、覚えておこう。
選挙管理委員はつらいよ
カトリックの教皇が亡くなり、後継ぎの選挙を委ねられた首席枢機卿のローレンス。宗教的カリスマを選ぶにもかかわらず、完全に人間と人間の権力争いであり、アメリカ大統領選挙や日本の総裁選を思わせる話だった。
ローレンスは総裁選でいえば幹事長のような実務系リーダーという位置づけだろう。世間から隔離されて厳粛に行うべき儀式を遂行するだけでもかなりのプレッシャーがあるが、有力候補者のスキャンダルなど次々に問題が持ち上がり苦悩する。
面白いのは中立であるべきローレンス自身が弱小派閥に属していて、自分たちのリーダーに票を集める密議にも出席しなければいけない。一方、自分自身も候補者としてわずかに票が集まっている。ローレンスはせっかく派閥リーダーに投票しているのに、リーダーはローレンスに集まった票を見てつむじを曲げてしまう。最後にはリーダーもローレンスに人徳があるのを認め、ローレンスも自分自身に投票するに至る。
そうなのだ、首席枢機卿として選挙を取り仕切ることができる器だということが、教皇としての資質を潜在的に意味している。荘厳な礼拝堂、枢機卿が顔をそろえる大広間が、ローレンスの舞台だ。公平な人物のローレンスは、自分が名乗り出なくても「推される」だけの価値がある。しかし、それを上回る人物が最後には教皇職をかっさらっていく。大筋、そんな物語だったと思う。
若干あれっと思ったのは、ローレンスはスキャンダルを抱えた候補者に直接詰め寄っていき諦めさせるなど、立ち入った行動にも及んでいる。政治でいえば身体検査みたいなもので、任命責任が問われては大変だ。それにしても政治工作のような行動は、結局選挙結果に汚点を残すことにならないだろうか。
候補者同士が対立する理由について、もう少し思想的な深みが欲しいとも思った。確かにイスラム教徒などの敵を作って戦うのか、内面で信仰を深めるかの対立は描かれているが、こんなに老獪な人たちが最後には「正論」に諭されて投票したのかと思うと、やや拍子抜けだった。総裁選では「選挙で国民に通用するか」という大義に殉じる余地もあるが、この場合は何が決め手になったんだろうか。
書き留めておきたい台詞は、宗教者に必要なのは確信ではなく疑念を持ち続けること。理想を求め続けることが大事であって、理想そのものを体現する教皇を選ぶのは不可能だ(大意)。所詮は人が人を選ぶのであって、そのなかで揉まれて石が玉となっていくように、リーダーの器は作られていくのかと思った。
これは○○○○○映画!2025年どころかオールタイムベストに食い込む
これはドラマであり、ミステリー映画です!!!
ふ〜ん教皇決める選挙の映画〜???くらいの感じで見に行ったら開始数分の教皇が亡くなった時のみんなの重っ苦しい空気に教皇亡くなるとこんなやべえの...と映画にスムーズに入っていける導入になっておりすごい。
八手先まで読んでいる前教皇の仕組んだバッチリとした先の読めない教皇選挙の計画を主人公のローレンスを通じて味わう映画です。
なのでオチに関しては衝撃的かつネタバレです。これは実際に見て味わってほしいですね。
全体的に画面がとても綺麗で落ち着きがあるにもかかわらず、展開が先が読めずどんどん引き込まれて映画に没入しちゃいます。すごい映画でした。
「名作映画集」の一つにチョイスされて数十年後に再度映画館で上映してそうな、とても良く作られた名作映画でした
教皇選挙conclave英語の発音はコンクレイヴ。コンクラーベじゃないよ。
3月31日(月)
先週から観ようと思っていて、なかなか観られなかった「教皇選挙」をTOHOシネマズ日本橋で。
カトリック教会の最高指導者ローマ教皇が亡くなり、新教皇を決める教皇選挙が行なわれる。
教皇選挙は、定員120人以内の80歳未満の枢機卿によりに行なわれ、枢機卿団はサンタ・マルタ邸に泊まり込み外部との接触は断たれ、投票はシスティーナ礼拝堂で行なわれる。2/3以上得票をしたものが新教皇となる。
映画でも電話が全て取り外され、窓にはシャッターが取り付けられるシーンが有る。
物語は静かに展開するので眠気を誘われるというレビューがあったが、私はミステリー要素もあり緊張感を持って観たので眠くはならなかった。
バチカンではロケ出来ないため(そりゃあそうだ。教皇選挙の内容は公開されていない)、セットや既成の建物を使って撮影されているが、雰囲気は素晴らしい。
カメラの動き(動かないのも含めて)、構図、色調、音、編集、衣装デザイン、美術全てが素晴らしく、見終わった後は映画を観たと言う感じを強く持った。
教皇選挙を取り仕切る首席枢機卿ローレンスを演じたレイフ・ファインズが見事である。オジさんばかりの中での紅一点?のイザベラ・ロッセリーニは儲け役での助演ノミネート。
投票が繰り返され票が割れる中、有力候補に次々とスキャンダルや不正が明らかになり、脱落して行く(買収で票を集めるのがジョン・リスゴー)。ローレンスも自分に教皇の目が出て来て色気を持ったりするが、テロによる爆破(それこそ神の怒りのような演出が凄い)で投票は中断。ここでの枢機卿の発言で状況が大きく動く。
テロによる爆破でシスティーナに光と風が差し込み、新たな投票で新教皇が決まる。
第1回目の投票で1票しか得票がなかったものが新教皇になると言う意外な展開だが、更にその後に衝撃的な展開が待っている。
全ては前教皇の思いどおりに運んだと言う事か。前教皇は八手先を読む男だった。深謀遠慮とはこういう事を言うんだな。
無事に教皇選挙を終えたローレンスは、空を見上げ安堵とやすらぎと満足感に満ちた表情を見せる。
シスターが3人出て行く。教皇選挙中の緊張感はない。3人が出て来たドアが閉まる音とともに映画は終わる。
いや、映画ってこれでしょ。
主演男優賞は、レイフ・ファインズが相応しいな。(シャラメは若いからまだチャンスは有る)
作品賞と編集賞は「アノーラ」から「教皇選挙」に変更出来ませんかね、アカデミー様。
脚色賞だけと言うのが何とも惜しい映画であった(個人的意見ですが)。
おまけ
亀は卵のうちは雌雄が決まらないそうです。原作には亀は出て来ないとの事。(又聞きです)
亀は、オスの精子を生きたまま体の中にため込むことができるため、数年間交尾をしなくても有精卵を産むことがあります。この特殊な能力は「遅延受精」と呼ばれます。
「教皇選挙」で亀について勉強してしまった。
おまけ その2
本当に教皇が亡くなりましたね!
この映画を観た後では、どう教皇選挙が行われるのか(行われて決まったのか)、が気になりますね。
キリスト教にちょっと詳しくなった
コンクラーベってものがあるのは知っていたけど、ベールに包まれているものだったので、今回の映画で実際にどんな風に行われているかリアルに知ることが出来た。
刻一刻と新事実が分かっていき、選挙の情勢も日を追うごとに変わっていくので、退屈する暇がなく満足感が高かった。
でも、最後にベニテスがすーって教皇に選ばれたシーンはあっさり終わりすぎな気がしたから、もうちょっとだけ過程を描いても欲しかった。
BGMが”光る君へ”とおんなじ感じやったから、ちょっとだけ嬉しかった。たぶん楽器の系統がおんなじだけやと思うけど笑
非常に効果的なBGM!
このBGMのおかげでサスペンス感が確立したと言ってもいいよね。あと、セリフの音量も切迫感出してる印象。
政治的な駆け引きでどうなるのか?っていうのをうまく引っ張ってる。こういうシーソーゲーム的な展開は日本だと若手でやりそうだよね。そこで、ローマ法王ってことで、年配者たちの立ち回りとなって作品が仕上がってる。これは邦画だと出せない味かな?こう言う展開だと必ずふざけたキャラいれそうだもん。コンクラーベという舞台がシリアスさを担保してるとも言えるからね。いい感じ!
なのは、ラスト前までで、あのラストはなあ、、、正直やるわけないパターンをやったからこその驚きというか。うん、ラストがあかんよね。そう個人的には思った。途中までは★5だったよなあ。でもラストで落ちた。あのオチは、、、ノーコメント。あ、あと、最初と最後のタイトルが画面目一杯なのはちょっとなあ、と思った。合ってないよ、さくひんに
ベリーニ役の人、「ザ・コア」のムカつく学者の人じゃん!めっちゃ、久々に見た!それはよかった!
あ、BGMだけじゃなく、エンドロールの曲も重厚な感じで良かったよ!
2025年劇場鑑賞17作品目
後半の展開は予想を裏切る
枢機卿たちのドロドロとした権力闘争は、どの世界でも綺麗ごとでは済まされない。
前半はややもっさりとした展開が続くが、システィーナ礼拝堂での爆発をきっかけに物語が一気に動き出す。そして、観客が「この人が選ばれるのでは?」と思った人物が新教皇に選出される。物語はそこで終わるかと思いきや、まさかの秘密が明かされ、衝撃のラストを迎える。
先週『エミリオ・ペレス』を観たばかりだっただけに、対照的なこの二本の映画に、今の時代を映し出すものを感じた。
見事な赤の戦慄と隔絶された漆黒の闇、そして天から放たれた白煙に神の姿を感じた!
我々、人と言うものは永遠なる俗世を生きている。
どれほど神に近い言葉を述べ様とも
どれだけ善の行いをしようとて、
決して神には成れないし、
足元にすら遠く及ばない存在なのだ。私は常に自心へ戒めている。
--------
「神はその独り子をお与えになったほどに、世を愛された。それは、御子を信じる者が一人として滅びることなく、永遠の命を得るためである。」
-------ヨハネ3章16節-----
今日は、「教皇選挙」の鑑賞ですね。
カトリック教会のトップに君臨するローマ教皇死去に伴って執り行われる
教皇選出選挙(Conclave・コンクラーヴェ)の内幕に迫った話展開。
今まで幾度となくキリスト教題材の映画は多くあったが、これ程深い感銘を受けた作品は他には無かった様に思います。
大変格式があり、重厚でかつ厳格な思いを受けました。
過去、宗教映画ではトラブル発生が多く 一歩間違えるとデモや裁判が起こり
作品が窮地に陥る事がありました。
アジア圏(日本等)では仏教や無信仰者が多いので この作品を最後まで観て
過剰評価する人が多いと思われますが、実際世界では色々と問題視されてしまう事態も少なくないでしょう。(”パッション”、”最後の誘惑”、””ダ・ヴィンチ・コード”など)そう言った点で本作は最優秀作品には選ばれなかったのかも知れません。
とにかく素晴らしかったです。
最後の最後まで 結果がどうなる事かと・・・
コンクラーヴェを執り行う主人公(ロ-レンス)。亡くなった教皇から使命を受けていて 次々起こる周囲の疑惑、疑念。
これらを一つづつ払拭していく彼。そこは強い信念と ”確信” が無ければ出来なかったであろうと感じ取れます。
-------素晴らしい俳優陣----
トマス・ローレンス枢機卿役:レイフ・ファインズさん
アルド・ベリーニ枢機卿役:スタンリー・トゥッチさん
トランブレ枢機卿役:ジョン・リスゴーさん
テデスコ枢機卿役:セルジオ・カステリットさん
アデイエミ枢機卿役:ルシアン・ムサマティさん
ベニテス枢機卿役:カルロス・ディエスさん
シスター・アグネス役:イザベラ・ロッセリーニさん
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(良かったポイント)
・深い疑念、悩みに陥ったとき 一度だけベットに横たわる 教皇のお姿が彼の目の前に一瞬映ります。
この場面、ハッとさせますが 教皇の笑顔がそこにあり、それにより彼の心を
迷うこと無く真成る道へ誘っているのが分かります。
この思いが 観ている方にも伝わってきます。
・教皇部屋侵入:(手紙)
場内108人もの枢機卿への疑惑資料の配布。自ら禁断の部屋へ勝手に入ったこと。部屋全体に轟く驚きと批難の声。
その時にシスター・アグネスが発する言葉が場内を一瞬で静まり納めます。
何故彼がそれをしたのか・・・その行動の意味を知らなくては成りません。
ここの一節は脚本:黒沢さんの”雨あがる”の作品にも 同じ様に感じる所があります。何をしたかでは無く、何の為にしたかを知らなくてはいけないのです。
・爆破と白煙
ローレンスが票を投じたときの場内右上採光窓が自爆テロの爆発の影響で割れて
会場に白煙が全体に舞ったとき。
この一瞬の中に私は何かを画面の中に感じました。
この場面を神の怒りと捉えられる方は多いと思うのですが、これはロ-レンスの迷う過ち”確信”を神が戒めているのだと感じました。
と同時にこの場内で執り行われているコンクラ-ベ自体(枢機卿等へ)への
過ちを指摘しているのだと感じます。
・ベニテス枢機卿の最後の言葉:
今回初めて枢機卿として認められそして招かれ、選挙に参加した人物。
彼の発する言葉一つ一つに ハッと我の心の奥底を覗かれてしまっている事に気付かされます。教皇の持つ絶対的な意味を全員が再認識をした瞬間でしょうか。
そして 漸く投票の結果が導き出されます。
そして、ローレンスの役目に平穏が戻ったと思ったら
最後に、本当に最後に神が投げかける問いがそこにありました。
それは 最初にこの場に集まった者達が口にした事。
”女性では無いこと”・・・ それでした。
性別とは何か?
その真意を神は既に皆に対して見据えておらていたのだと感じました。
・・・・ 深い沈黙と、そして人の願いとしての諦めが漂います。
そこに私達は俗世に生きる人で有る姿を 見たと思います。
~ そっとローレンスが窓の外を見るとき、
三人の修道女が下の建物から出て行く姿があり、あの騒がしかったコンクラ-ベは過ぎ去った事を告げていました。~
ご興味御座います方は
今のうちに
是非劇場へどうぞ!!
ミステリーとは?
「次期ローマ教皇をめぐる極上のミステリーが、その禁を解く」というのがこの映画の宣伝文句である。が、最初に言っておくと「ミステリー」でもなければ「禁」も解いてないし、言わずもがな「極上」でもない。
まず、ミステリー要素が薄すぎる。確かに、有力候補が失脚していく流れのなかに、陰謀めいたものはある。しかし、それも「ライバルの性的スキャンダルの相手をコンクラーベに送り込んだ」というセコいもの。しかも、陰謀要素はこれ1回きりである。これでミステリーなどと胸を張れるのだろうか、と首を傾げたくなる。
そして、展開があまりに大雑把だ。有力候補が消えていき、残るは主人公一派と保守派となる。熾烈な争いが描かれると思いきや、教皇に選ばれたのは見せ場のあまりなかった謎の枢機卿!しかもそのきっかけは「争いはよくないものです(要約)」との言葉のみ。これ一発で教皇選挙を制するのである。そしてその後、実は女性だったことが発覚。もう一波乱あるか…と期待させつつそのまま映画はエンドロールへ突入…。
はっきりいって、超展開としか表現できない。しかも前述の陰謀もどきで2人の有力候補が消えるまで、上映時間の半分以上を費やしているにも関わらず、である。あまりにストーリーラインが乱暴だと言わざるを得ない。「教皇選挙の禁を解く!」などど言うからにはコンクラーベの闇や深淵に迫れると思いきや、この体たらくである。
その他、いきなり第一回選挙で黒人枢機卿がトップに何の違和感もなく躍り出たり(現教皇であるフランシスコが初の南米出身!と騒がれたことを鑑みれば、あまりに非現実的なことがわかるだろう)、建物外の自爆テロで教会の壁のおかしなところが壊れるなど、違和感を覚える部分も多々あるが、上述の問題点と比べれば些末なものである。
このように、この映画が「極上のミステリー」などではないことは明白だ。であれば、何をしたかったのだろうか。考えるに、「教皇選挙」は舞台仕掛けに過ぎず、作中で繰り返される「多様性」や「進歩」を訴えたかったのだろう。言い換えれば、制作陣の思想が第一であって、カトリックという宗教はそれをミステリもどきに見せるおもちゃにされたのではないか、と邪推せずにはいられない。
他方、ネット上ではこの映画を評価する声もある。しかし、それは「教皇選挙」というよく知らない宗教の未知の儀式を見たから面白く見えるだけであって、それは某スペイン村に行ってはしゃぐ子どもの反応と大差ない。あるいは、この映画の露骨すぎるメッセージに共感する人は、内容ではなくイデオロギーでもって評価するだろう。いずれにせよ、「物語」として評価の俎上に上がるものではない。なお、登場人物の演技やカット等、単なる映像作品としては光るものがあったことを申し添える。
これは満点
映画を観てると、冒頭からこれはヤバい、面白いヤツだと思う作品が稀にありますが、この映画はまさにそのような映画。
基本的に会話劇にもかかわらず、この緊張感!思うに、録音(音と劇伴がめちゃくちゃいい)と演出がすごいんだろうな、と素人ながらに思わざるを得ない。これは詳しい人に解説してもらいたい。
レイフ・ファインズの顔を大きく捉えるカットが多い。それはすなわちローレンス枢機卿の苦悩。個人的な苦悩を抱えながら、役割を全うしようとするローレンス卿。管理者とはかくも孤独。身につまされますねー。いちど教皇になる覚悟を決めるイコール苦悩を乗り越える覚悟。めちゃくちゃかっこいいです。
物語はそこから少し逸れて行きますが、今のアメリカの状況に対するアンサー的でもあり、個人的にストンと腹落ちしました。
野心とは、かくも醜いもの、人間とは聖職者も変わらず弱いもの、それを喝破した者が教皇になるラストに救いを感じました。映画(や物語、創作物全般)を通じ希望を感じることに喜びを覚えます。ほんとうに、めちゃくちゃおもしろかった!!!
世界の縮図としての教会
エンタメとしてのミステリーの面白さと、現実世界への批判や問いかけが見事に融合していて、マジで面白すぎる!
カトリックの枢機卿なんて日本だと身近ではないけど、
ちゃんと1人の人間として描かれていたから主人公を応援しながら最後まで楽しく鑑賞できた。
コンクラーベ中に発覚していく枢機卿たちの汚点は現実より軽く感じたけど、汚点そのものより、主人公ローレンスがそれに対してどう行動するかが面白かった。
最初は、仲間である枢機卿への疑いについてどこまで踏み込むべきか…という葛藤に始まり、徐々に管理者として正しいと思う事と教会の規則を天秤にかけるなど、どんどん葛藤が大きくなる。そして悩みながらも規則を破っていくさま(前教皇の部屋への侵入とか)はとても痛快。
そしてラストにはバチカン史上1番の規則違反かもしれない事に直面したけど、自分の正義を信じて沈黙することを選ぶ。
シーンとしては静かだけど、やってる事は超破天荒な感じがとても魅力的な場面だった。
私は幼稚園から高校まで一貫のキリスト教系の学校出身。キリスト教が身近な環境で育ったけど信者ではない。幼稚園の時とかは言われるがままに色々信じてたけど、小学校くらいから次第にキリスト教の教えと現実の矛盾、みたいな事に疑問を持ち始めたのを覚えている。
映画でも描かれていたけど、教えでは人間はみんな平等と言いながら、神父だけが豪華な服を着て、シスターは質素な服で下働きみたいな扱いな事とか。
苦しんでる人は助けなきゃいけないと言いながら、同性婚は認めず、それで苦しんでる人には神に祈って許しを求めろとか言う事とか。
でもこういう長い伝統の中で出来た規則が、世の中の変化に対応出来なくなる事って教会だけじゃ無く、組織や会社や家族とかだってある事だと思う。
今まさにバチカンでも、様々な矛盾に対して伝統を守るのか革新するのか揺れている真っ最中らしい。
この映画ではこういう葛藤に対してどうするか主人公の行動によって示しながら、鑑賞者に問いかけてくる。教会という特殊な場所を舞台にしながら普遍的なメッセージがある。
女性や様々なマイノリティの立場についての映画は色々あるけど、舞台を世界で最も歴史が長く保守的な組織のひとつであるバチカンにした所に、原作のコンセプトの強さがあると感じるし、挑戦的でとても好き。
ストーリーやテーマ以外の、音楽や美術や衣装もとても見応えがある。枢機卿の衣装が豪華で権威的な感じはムカつく!でも素敵!コンクラーベの時だけにしか使われないだろう道具も見ていて楽しい。
ずっと同じ所にいるのに飽きないのは、演出的にも色々工夫がされてそうだけど、初見ではそこまで追う余裕は無かった。
それくらい細かい所まで色々作り込まれている。
他にも確信を疑う事が大事(意訳)とか、ありのままの自分で勝負する!(超意訳)などのセリフや
さりげなくもしっかりシスターの存在感があった事など
響く所の多い好きな映画だった!
我々は生身の人間だ
バチカン市国の国家元首であるローマ教皇が急逝し、コンクラーベ( 教皇選挙 )を取り仕切る事になったローレンス枢機卿をレイフ・ファインズ( 映画「 イングリッシュ・ペイシェント 」では冒険家アルマシー役を。)が好演。
室内の設えがシンプルで美しい。
聖職者であるが故に葛藤する候補者達の姿がリアル。
繰り返される投票 … 。閉ざされた場所での孤独な戦いが続く。
予期せぬラストに驚かされた。
ー 神のご意志に
映画館での鑑賞
スタイリッシュなサスペンス映画
会場満席。コンクラーベ(教皇選挙)の内容が興味深く、枢機卿らのやりとりが面白かった。服装や建物のたたずまいがスタイリッシュ。驚きのラストに満足した。パンフレットの解説読みたかったが売り切れで残念。
確信のはざまで生きる
そんな人特有の陰の部分が漂うベニテスの儚さがよかった。完全でない自分に直面したことがある人。どちらの立場にも共感できる人。立派だけど、いわゆる生きにくい人、なんじゃないかなあ。テデスコやトランブレのような、自分に確信を持っている人の方が、なんか結局楽しそうにやってるような。
建物!服!音楽!めっっちゃすげー!! あと宗教的な映画じゃなく、めちゃくちゃエンタメ寄りの映画じゃん
とにかく見終わった直後の感情をタイトルにした。
本作はカトリック教会の最高司祭を決めるという非常に宗教的な行事がメインテーマではあれど、その実情は誰がリーダーになるかという権力争いを描いた映画であった。
私自身、典型的な日本人の宗教観というか無宗教観で育ったため、カトリックに詳しいわけでも、思い入れもない。ただ私は、なんかカッコいいという理由で神や宗教は好き。そこには拭いきれていない中二病もあるが、観光客がその土地の名物を味わったり、観光地に足を運ぶような、自分には無い異文化への憧れや好奇心という方が強い。
だから本作に神の御業であったり、祈りであったり、信仰的なモノが見れると若干の期待を胸に見に行ったが、蓋を開けてみると非常にエンタメ的でしっかりとしたミステリーで上質なサスペンスで、良い意味で全く違っていた。
本作に登場する神父達は、如何にして自分が又は誰を教皇にするか、誰を蹴落とすかの「策略」を絶えず行っており、信仰的な行為というか神の存在を語るようなシーンはほとんど見られなかった。
逆に神の存在を積極的に語っていたのは、シスターの「神は目と耳を与えてくださった」やベニテスの「神から与えられしこの体」というような、カトリック教会では役職に就けない女性や女性性を持つ2人が、人や役職や教会よりも、まず神に重点をおき、真摯に信仰していたという描き方、また教皇になるというカトリック教会に於いてのコペルニクス的転回が非常に面白かった。
また、本作を力強く下支え、芸術的にも映画的にも底を押し上げ素晴らしい作品としてたらしめた要因は、礼拝堂などのセット、出演者たちの装束、劇中音楽である事は間違いない。
純粋に美術的に卓越した完璧な完成度で観客を魅了し、礼拝堂の構築美は圧巻で荘厳であり、その優美さは極致的な素晴らしさを誇り、列柱の巨大さと優雅さ、宿泊場所の大理石?の壁も重苦しさや窮屈さはありつつ高貴的で神秘性も兼ね備えたデザインなども実に見事で、それらの場所に洗練さと品格さを極めたような深みのある紅の装束を纏った俳優たちが歩いている。
はい、もうカッコ良すぎて息できません。
また、序盤から中盤にかけて、弦楽器の低音が緊張感や不安定感を非常に高め、各シーンに見事に溶け込み映画全体の雰囲気を引き締めていた。
総じて、ストーリーもさることながら、映画としての要素であるセット、衣装、音楽も素晴らしすぎる非常に良い映画体験が出来た上質な作品であった。
あと何回かは劇場で見たい。
スリリングな密室劇
イタリア美術が好きなので、題材とアカデミー賞脚色賞受賞という触れ込みに惹かれて鑑賞。
教皇の死の当日と、外界と遮断されるコンクラーヴェの数日間、ほぼサン・ピエトロ大聖堂と宿舎の中だけで展開されるドラマですが、単調になるどころか息つく暇もない展開で、衣装も大道具・小道具も絢爛で見どころだらけだし、キャストの息づかいが当初は耳障りに感じるほど聴こえてくる音の緩急にも惹きこまれて2時間があっというま。
カトリック芸術は大好物ですが、その宗教的排他主義による歴史の血生臭さと女性のあつかいがあんまりなところから、宗教としてのカトリックには拒絶感が強いので、シスター・アグニスやベニテス枢機卿の糾弾や、システィナ礼拝堂の壁が崩されるカタルシス、最後の投票の際に崩された壁から風が吹きこみ、選出後には鎧戸が開け放たれて外界の光や音が降り注いでくる描写には正直、胸のすく思いでした。
(ミケランジェロの絵画がそこまで好きじゃなくて、システィナ礼拝堂も圧が強すぎると感じるクチなので…これがサン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会を爆破されてたら悲鳴上げてますけど)
ローレンス枢機卿の表情や声や身振りで心情が如実に伝わってくるところは感服の一言です。パワーゲームのドラマって、役者の圧が強すぎて観ながらさめちゃうことも多いのですけど、自他ともに認める管理者として一歩引いた立ち位置にいた主人公が、主力候補者たちのあまりの堕落ぶりに自ら認めていなかったはずの教皇への思いが芽生えていく故教皇を幻視する場面は静謐でしたし、一度袂を分かったベリーニ枢機卿が改心してやってくるときの回廊での対話は、画面の美しさとローレンス卿の野心の表明が対照的だし、ベニテス枢機卿が教皇に選出されたことに拍手しているときの落胆や怒りや受容の回心が目まぐるしく変わっていく表情の変化の生々しさはおそろしいほどでした。
あと、イタリア語独学者なので、イタリア語まじりの会話がとても聴き取りやすかったのもうれしかったです。テデスコ枢機卿とか、イタリア語ネイティブの役者さんなのに、宗教者という設定だからか早口過ぎなくて。
ローマ教皇よりローマ法王と言いがち世代です
全世界14億人以上の信徒を有する
キリスト教最大の教派・カトリック教会
その最高指揮官であるローマ教皇の死。
世界各国から100人を超える魑魅魍魎
基、次期教皇候補者枢機卿たちが集結(笑)
聖職者と言えど、所詮「人」である。
玉座欲しさに、如何なる卑劣な所業も
ライバルを蹴落す為なら神の業よろしく。
また
教皇の座に座れないなら別の組織の
最高権力者でもいいな。だなんて
いや如何にも人間らしいです。
(すごく裏切られた感がしたわぁ、この時)
次々と明らかになるスキャンダルは
もはや聖職者も一般企業のそれも関係ない。
選挙を執りしきるローレンスだけが
逝去された教皇の死を、悲しんでいたように見えたし
彼こそ、公明正大で、次期教皇に相応しく思えたが
己の信仰心に疑念が深くあったのでしょうか。
ラスト、まさかの衝撃の事実「どうなるこれ?!」
英国アカデミー賞では作品賞を受賞🏅
(脚色賞、英国作品賞)
本家アカデミー賞では脚色賞を受賞🏅
個人的には本作が本家アカデミー賞でも作品賞で
いいんじゃないの?と思います。
面白い!そして意外と大袈裟でもない模様
面白かった!始まってすぐから不穏な雰囲気でドキドキが止まらず、最後まで飽きることなかった。
実際のコンクラーベは2013年が最後らしい、その時ニュースで見た程度の知識しかなかったけど、教皇の死から始まり指輪の破棄とか部屋の封鎖とかこんな細かい手順が決まってるんだ!とその謎の全容を垣間見れて、鍵のかかったシスティーナ礼拝堂の中を想像できただけでも興奮する。
アカデミー作品賞、少なくともアノーラよりはこっちでしょうとは思うものの、多くの反発をくらいそうな宗教批判とも取れる内容が選ばれるわけないか。。
ちなみに今の現実のフランシスコ教皇は初の米大陸出身でアルゼンチン発、質素で貧民寄り。その前もドイツ、ポーランドと三代続いてイタリア人がいないとのことで、映画のテデスコの純血保守派な発言やそれの反対姿勢で同性愛や中絶や女性登用といったカトリックでのタブー?の容認コメントを出そうとする革新派なベリーニ、アフリカ出身者などで競い合うのは意外と実情に近い派閥設定なんだなと思った。そういえば2019年あたりから法王とは言わなくなったらしい。知らなかった。
104人?の枢機卿が各国から集まり、隔離が始まる直前に怪しい情報や謎の候補者が届く、その後色々な候補者の秘密がでてきて、dean進行役?のローレンスが一人ずつ悪事を暴いて排除していく。
一応聖職者のトップであり、筆頭候補になりそうな人がそんな揃って致命傷抱えてるのはご都合主義かなとは思うものの、神に仕え強い信仰を持とうとも誰も完璧ではない、「私たちは理想を追うものであって理想ではない」「確信を持ってしまうことこそ罪。常に疑うことが必要」、そんな言葉を交えながら、不完全な人間をわかりやすく体現してくれる人たちとなる。
カトリックの人たちには到底受け入れられないのかもしれないが割とリアルな姿に見えた。最後まで面白かった!
*追記
そしてまさかの上映期間中のフランシスコ教皇の訃報。。
順番逆だったらちゃんと上映できたのだろうか。。。
ご冥福を祈ります。
----以下覚書----
枢機卿 Cardinal
大司教 Archbishop 司教 Bishop
Bellini アメリカ人、権力に興味はないと言うが、自分を売り込むなら自分はなんでも認める、同性愛も女性の起用も他の宗教もというリベラル派。日和見で権力に負ける。
Tedesco 来ないことを望まれていた過激保守派、イタリア人以外が教皇をやるなんて考えられない、ラテン語に戻すべき、攻撃してくるやつとは戦争だ!派。暴言で負ける
Adeyemi ナイジェリア人、多様性の象徴?昔の女性関係の罪を暴かれて負ける。トレンブレのせいだが前教皇の策略か?
Tremblay カナダ人だったらしい、無難な候補に思えるが収賄などで事前に解任されてたらしいという噂、教皇が手を回して落ちるように仕組んだのか?
ベニテス アフガニスタン人、国はイスラム教がメインのため正体を隠しており、誰も知らない枢機卿だった。貧困層に寄り添い平和を求める。しかし彼にもタブーがある。実在のフランシスコ教皇に一番近い貧民に寄り添う設定。
選ぶ者、選ばれる者―『教皇選挙』に見る信仰と葛藤
あらゆる宗教儀礼には、「死と再生」の物語が繰り返されます。
映画は、カトリック教会において新たなローマ教皇を選出する厳かな儀式「コンクラーベ」を描いた作品です。バチカン市国の元首であり、信仰の象徴でもあるローマ教皇の座をめぐるこの選挙は、単なる宗教的な行事ではなく、さまざまな思惑が交錯する緊張感あふれるプロセス。伝統と革新、信念と策略、人々の心が複雑に絡み合う様子は、まさにミステリーの醍醐味といえるでしょう。
本作の美術や衣装はとても精緻で、システィーナ礼拝堂をはじめとするバチカンの荘厳な空気を見事に映し出しています。厳かな空間のなかで繰り広げられる駆け引きは、まるで一枚の絵画を眺めているかのような美しさ。その世界観に引き込まれ、思わず息をのんでしまうほどです。
物語のなかで描かれるテーマは、宗教に限らず、私たちが生きる社会にも通じるものばかり:
・どんな組織にもある「リベラルと保守」「伝統と革新」の対立
・指導者を選ぶ過程で浮かび上がる権力闘争と駆け引き
・「選ぶ者」と「選ばれる者」の間で揺れ動く人間の心理
・「女性には任せられない」という制度に疑問
・誠実な人ほど、実はトップに立ちたがらないという現実
・権力を持つ人でさえ、時に規律を破らざるを得ない状況
・誰も疑問を抱かなければ、時代遅れの慣習は続いていく
・異端視される人こそ、確信をもって新たな道を切り開く存在
・組織に属さない視点だからこそ、見えてくる新しい可能性
なかでも印象的だったのが、首席枢機卿ローレンスのスピーチ。「もし確信だけで疑念を抱かなければ、不可解なことは消え、『信仰』は必要なくなる」この言葉は、まるで信仰の本質そのものに切り込むような鋭さを持っています。決して冷たいわけではなく、人々の心にそっと問いを投げかけるような説得力がありました。
ラストシーンでは、音を消した演出によって、観る者の想像力に委ねられています。この余白の美しさこそ、近年の映画の魅力のひとつ。観る人それぞれの解釈が生まれ、作品の余韻がより深く心に残ります。ローレンスがシスティーナ礼拝堂で迷子になっていた亀を、広場の池に戻すシーン。その仕草には、彼の優しさや、抱えてきた重荷から解放されるような安堵感が感じられました。
そして、新たな視点を持つベニテス枢機卿が新教皇となることで、これまで閉ざされていた修道女たちと教会の未来に光が差し込むそんな希望の兆しが読み取れます。
『教皇選挙』は、宗教の枠を超え、権力のあり方や人々の信念の揺らぎを繊細に描いた作品。観る者の心を深く揺さぶる、奥行きのある傑作でした。
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