教皇選挙のレビュー・感想・評価
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スタイリッシュなサスペンス映画
会場満席。コンクラーベ(教皇選挙)の内容が興味深く、枢機卿らのやりとりが面白かった。服装や建物のたたずまいがスタイリッシュ。驚きのラストに満足した。パンフレットの解説読みたかったが売り切れで残念。
確信のはざまで生きる
そんな人特有の陰の部分が漂うベニテスの儚さがよかった。完全でない自分に直面したことがある人。どちらの立場にも共感できる人。立派だけど、いわゆる生きにくい人、なんじゃないかなあ。テデスコやトランブレのような、自分に確信を持っている人の方が、なんか結局楽しそうにやってるような。
建物!服!音楽!めっっちゃすげー!! あと宗教的な映画じゃなく、めちゃくちゃエンタメ寄りの映画じゃん
とにかく見終わった直後の感情をタイトルにした。
本作はカトリック教会の最高司祭を決めるという非常に宗教的な行事がメインテーマではあれど、その実情は誰がリーダーになるかという権力争いを描いた映画であった。
私自身、典型的な日本人の宗教観というか無宗教観で育ったため、カトリックに詳しいわけでも、思い入れもない。ただ私は、なんかカッコいいという理由で神や宗教は好き。そこには拭いきれていない中二病もあるが、観光客がその土地の名物を味わったり、観光地に足を運ぶような、自分には無い異文化への憧れや好奇心という方が強い。
だから本作に神の御業であったり、祈りであったり、信仰的なモノが見れると若干の期待を胸に見に行ったが、蓋を開けてみると非常にエンタメ的でしっかりとしたミステリーで上質なサスペンスで、良い意味で全く違っていた。
本作に登場する神父達は、如何にして自分が又は誰を教皇にするか、誰を蹴落とすかの「策略」を絶えず行っており、信仰的な行為というか神の存在を語るようなシーンはほとんど見られなかった。
逆に神の存在を積極的に語っていたのは、シスターの「神は目と耳を与えてくださった」やベニテスの「神から与えられしこの体」というような、カトリック教会では役職に就けない女性や女性性を持つ2人が、人や役職や教会よりも、まず神に重点をおき、真摯に信仰していたという描き方、また教皇になるというカトリック教会に於いてのコペルニクス的転回が非常に面白かった。
また、本作を力強く下支え、芸術的にも映画的にも底を押し上げ素晴らしい作品としてたらしめた要因は、礼拝堂などのセット、出演者たちの装束、劇中音楽である事は間違いない。
純粋に美術的に卓越した完璧な完成度で観客を魅了し、礼拝堂の構築美は圧巻で荘厳であり、その優美さは極致的な素晴らしさを誇り、列柱の巨大さと優雅さ、宿泊場所の大理石?の壁も重苦しさや窮屈さはありつつ高貴的で神秘性も兼ね備えたデザインなども実に見事で、それらの場所に洗練さと品格さを極めたような深みのある紅の装束を纏った俳優たちが歩いている。
はい、もうカッコ良すぎて息できません。
また、序盤から中盤にかけて、弦楽器の低音が緊張感や不安定感を非常に高め、各シーンに見事に溶け込み映画全体の雰囲気を引き締めていた。
総じて、ストーリーもさることながら、映画としての要素であるセット、衣装、音楽も素晴らしすぎる非常に良い映画体験が出来た上質な作品であった。
あと何回かは劇場で見たい。
スリリングな密室劇
イタリア美術が好きなので、題材とアカデミー賞脚色賞受賞という触れ込みに惹かれて鑑賞。
教皇の死の当日と、外界と遮断されるコンクラーヴェの数日間、ほぼサン・ピエトロ大聖堂と宿舎の中だけで展開されるドラマですが、単調になるどころか息つく暇もない展開で、衣装も大道具・小道具も絢爛で見どころだらけだし、キャストの息づかいが当初は耳障りに感じるほど聴こえてくる音の緩急にも惹きこまれて2時間があっというま。
カトリック芸術は大好物ですが、その宗教的排他主義による歴史の血生臭さと女性のあつかいがあんまりなところから、宗教としてのカトリックには拒絶感が強いので、シスター・アグニスやベニテス枢機卿の糾弾や、システィナ礼拝堂の壁が崩されるカタルシス、最後の投票の際に崩された壁から風が吹きこみ、選出後には鎧戸が開け放たれて外界の光や音が降り注いでくる描写には正直、胸のすく思いでした。
(ミケランジェロの絵画がそこまで好きじゃなくて、システィナ礼拝堂も圧が強すぎると感じるクチなので…これがサン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会を爆破されてたら悲鳴上げてますけど)
ローレンス枢機卿の表情や声や身振りで心情が如実に伝わってくるところは感服の一言です。パワーゲームのドラマって、役者の圧が強すぎて観ながらさめちゃうことも多いのですけど、自他ともに認める管理者として一歩引いた立ち位置にいた主人公が、主力候補者たちのあまりの堕落ぶりに自ら認めていなかったはずの教皇への思いが芽生えていく故教皇を幻視する場面は静謐でしたし、一度袂を分かったベリーニ枢機卿が改心してやってくるときの回廊での対話は、画面の美しさとローレンス卿の野心の表明が対照的だし、ベニテス枢機卿が教皇に選出されたことに拍手しているときの落胆や怒りや受容の回心が目まぐるしく変わっていく表情の変化の生々しさはおそろしいほどでした。
あと、イタリア語独学者なので、イタリア語まじりの会話がとても聴き取りやすかったのもうれしかったです。テデスコ枢機卿とか、イタリア語ネイティブの役者さんなのに、宗教者という設定だからか早口過ぎなくて。
ローマ教皇よりローマ法王と言いがち世代です
全世界14億人以上の信徒を有する
キリスト教最大の教派・カトリック教会
その最高指揮官であるローマ教皇の死。
世界各国から100人を超える魑魅魍魎
基、次期教皇候補者枢機卿たちが集結(笑)
聖職者と言えど、所詮「人」である。
玉座欲しさに、如何なる卑劣な所業も
ライバルを蹴落す為なら神の業よろしく。
また
教皇の座に座れないなら別の組織の
最高権力者でもいいな。だなんて
いや如何にも人間らしいです。
(すごく裏切られた感がしたわぁ、この時)
次々と明らかになるスキャンダルは
もはや聖職者も一般企業のそれも関係ない。
選挙を執りしきるローレンスだけが
逝去された教皇の死を、悲しんでいたように見えたし
彼こそ、公明正大で、次期教皇に相応しく思えたが
己の信仰心に疑念が深くあったのでしょうか。
ラスト、まさかの衝撃の事実「どうなるこれ?!」
英国アカデミー賞では作品賞を受賞🏅
(脚色賞、英国作品賞)
本家アカデミー賞では脚色賞を受賞🏅
個人的には本作が本家アカデミー賞でも作品賞で
いいんじゃないの?と思います。
面白い!そして意外と大袈裟でもない模様
面白かった!始まってすぐから不穏な雰囲気でドキドキが止まらず、最後まで飽きることなかった。
実際のコンクラーベは2013年が最後らしい、その時ニュースで見た程度の知識しかなかったけど、教皇の死から始まり指輪の破棄とか部屋の封鎖とかこんな細かい手順が決まってるんだ!とその謎の全容を垣間見れて、鍵のかかったシスティーナ礼拝堂の中を想像できただけでも興奮する。
アカデミー作品賞、少なくともアノーラよりはこっちでしょうとは思うものの、多くの反発をくらいそうな宗教批判とも取れる内容が選ばれるわけないか。。
ちなみに今の現実のフランシスコ教皇は初の米大陸出身でアルゼンチン発、質素で貧民寄り。その前もドイツ、ポーランドと三代続いてイタリア人がいないとのことで、映画のテデスコの純血保守派な発言やそれの反対姿勢で同性愛や中絶や女性登用といったカトリックでのタブー?の容認コメントを出そうとする革新派なベリーニ、アフリカ出身者などで競い合うのは意外と実情に近い派閥設定なんだなと思った。そういえば2019年あたりから法王とは言わなくなったらしい。知らなかった。
104人?の枢機卿が各国から集まり、隔離が始まる直前に怪しい情報や謎の候補者が届く、その後色々な候補者の秘密がでてきて、dean進行役?のローレンスが一人ずつ悪事を暴いて排除していく。
一応聖職者のトップであり、筆頭候補になりそうな人がそんな揃って致命傷抱えてるのはご都合主義かなとは思うものの、神に仕え強い信仰を持とうとも誰も完璧ではない、「私たちは理想を追うものであって理想ではない」「確信を持ってしまうことこそ罪。常に疑うことが必要」、そんな言葉を交えながら、不完全な人間をわかりやすく体現してくれる人たちとなる。
カトリックの人たちには到底受け入れられないのかもしれないが割とリアルな姿に見えた。最後まで面白かった!
*追記
そしてまさかの上映期間中のフランシスコ教皇の訃報。。
順番逆だったらちゃんと上映できたのだろうか。。。
ご冥福を祈ります。
----以下覚書----
枢機卿 Cardinal
大司教 Archbishop 司教 Bishop
Bellini アメリカ人、権力に興味はないと言うが、自分を売り込むなら自分はなんでも認める、同性愛も女性の起用も他の宗教もというリベラル派。日和見で権力に負ける。
Tedesco 来ないことを望まれていた過激保守派、イタリア人以外が教皇をやるなんて考えられない、ラテン語に戻すべき、攻撃してくるやつとは戦争だ!派。暴言で負ける
Adeyemi ナイジェリア人、多様性の象徴?昔の女性関係の罪を暴かれて負ける。トレンブレのせいだが前教皇の策略か?
Tremblay カナダ人だったらしい、無難な候補に思えるが収賄などで事前に解任されてたらしいという噂、教皇が手を回して落ちるように仕組んだのか?
ベニテス アフガニスタン人、国はイスラム教がメインのため正体を隠しており、誰も知らない枢機卿だった。貧困層に寄り添い平和を求める。しかし彼にもタブーがある。実在のフランシスコ教皇に一番近い貧民に寄り添う設定。
選ぶ者、選ばれる者―『教皇選挙』に見る信仰と葛藤
あらゆる宗教儀礼には、「死と再生」の物語が繰り返されます。
映画は、カトリック教会において新たなローマ教皇を選出する厳かな儀式「コンクラーベ」を描いた作品です。バチカン市国の元首であり、信仰の象徴でもあるローマ教皇の座をめぐるこの選挙は、単なる宗教的な行事ではなく、さまざまな思惑が交錯する緊張感あふれるプロセス。伝統と革新、信念と策略、人々の心が複雑に絡み合う様子は、まさにミステリーの醍醐味といえるでしょう。
本作の美術や衣装はとても精緻で、システィーナ礼拝堂をはじめとするバチカンの荘厳な空気を見事に映し出しています。厳かな空間のなかで繰り広げられる駆け引きは、まるで一枚の絵画を眺めているかのような美しさ。その世界観に引き込まれ、思わず息をのんでしまうほどです。
物語のなかで描かれるテーマは、宗教に限らず、私たちが生きる社会にも通じるものばかり:
・どんな組織にもある「リベラルと保守」「伝統と革新」の対立
・指導者を選ぶ過程で浮かび上がる権力闘争と駆け引き
・「選ぶ者」と「選ばれる者」の間で揺れ動く人間の心理
・「女性には任せられない」という制度に疑問
・誠実な人ほど、実はトップに立ちたがらないという現実
・権力を持つ人でさえ、時に規律を破らざるを得ない状況
・誰も疑問を抱かなければ、時代遅れの慣習は続いていく
・異端視される人こそ、確信をもって新たな道を切り開く存在
・組織に属さない視点だからこそ、見えてくる新しい可能性
なかでも印象的だったのが、首席枢機卿ローレンスのスピーチ。「もし確信だけで疑念を抱かなければ、不可解なことは消え、『信仰』は必要なくなる」この言葉は、まるで信仰の本質そのものに切り込むような鋭さを持っています。決して冷たいわけではなく、人々の心にそっと問いを投げかけるような説得力がありました。
ラストシーンでは、音を消した演出によって、観る者の想像力に委ねられています。この余白の美しさこそ、近年の映画の魅力のひとつ。観る人それぞれの解釈が生まれ、作品の余韻がより深く心に残ります。ローレンスがシスティーナ礼拝堂で迷子になっていた亀を、広場の池に戻すシーン。その仕草には、彼の優しさや、抱えてきた重荷から解放されるような安堵感が感じられました。
そして、新たな視点を持つベニテス枢機卿が新教皇となることで、これまで閉ざされていた修道女たちと教会の未来に光が差し込むそんな希望の兆しが読み取れます。
『教皇選挙』は、宗教の枠を超え、権力のあり方や人々の信念の揺らぎを繊細に描いた作品。観る者の心を深く揺さぶる、奥行きのある傑作でした。
閉鎖空間の会話劇が面白い!
教皇選挙は根比べ
と、オヤジギャグが言いたくなるぐらい、教皇選挙は面倒臭いことは知っていましたが、その内側は、まさに “cum clavi(鍵がかかった)”で、覗き見ることが出来ない世界。
きっと、昔から陰謀渦巻く選挙やったんやろな〜と、勝手に想像していましたが、今作はほんまある意味想像通り。
大体、決選投票とかしないで、永遠に規定の票を得るまで投票し続けるって、策謀しろと言ってるようなもんですよね。
その、鍵がかかった内側を、ほぼ、おじいさん同士の会話劇と音楽だけで、エンターテイメント作に仕立て上げた凄い映画でした。
最後、どんでん返しの上にさらに、返したどんでんを屋台崩しにしてしまうぐらいの展開には、びっくりしました。
首席枢機卿のローレンス枢機卿も、選挙を仕切りつつ、ベリーニ枢機卿を教皇にすべく動くのですが、なかなか上手く行かず、えっ?誰になるんやろ?と、新教皇になる人物を予想しながら観れたのも面白かったし、うわー…こいつが新教皇になんのはアカンやろ…と、思いながら観るのも面白かったです。
今までベリーニ枢機卿一択だった、ローレンス枢機卿が、自分の名前を書いて、投票しようとした瞬間、テロリストの爆破で礼拝堂の密閉してた窓が吹き飛ぶ場面、その後一気に、まったく有力候補でなかった人物が新教皇に選出され、そして…という、最後の怒涛の展開が、めちゃくちゃ面白かったです。
テロはあかんけど、爆破で吹き飛んだ窓は、カトリックの時代に合わないタブーやドロドロとした陰謀めいたところに風穴を開けるとともに、様々な宗教、人種、バックボーンとも向き合っていかなければならない…というか、向き合い共存すべきという、強いメッセージを感じました。
最後に選ばれた新教皇には、かなりびっくりしましたが、私もこんな教皇なら色々良い方向に変わって行くんやろな〜、と思いました。
驚くべき展開
最初はおじさんの選挙の話なんて興味ない…
と思っていたけど、えっ、ミステリーなの?と知って俄然観たくなって劇場へ。
オッペンハイマーの時も同じようなことを考えたけど、ひたすらおじさんたちが投票を繰り返してるだけの会話劇なのに何この面白さ!上質のエンターテイメントすぎる!
これは早くも今年のマイベストでは?!とかなり興奮して帰ってきた。
以下ネタバレ含む。
映像も音響もこの世界に没入するための手段として最高でした。枢機卿たちの衣装の赤が最初から最後まで印象的。音楽はストーリー展開をリードしてくれるしかなり観る人にとっては親切な作りでは?
おじさんばかりで女性の存在感薄すぎ…まあでもローマ教会の話だからそこは仕方ないよね、と思っていたら、まさかそれが伏線とは!!
文字通り教会に「風穴を開ける」シーンはかなり衝撃だったけど、それ以上の衝撃がラストに残っているとは想像しなかった… 私が鈍いだけかもしれないけど、まさかこんな展開になるとは思いもせず。現代社会への強烈な皮肉が続いた後に作り手が見せてくれたinnocenceと希望…いつのまにか涙が流れてました。
ネタバレ踏まずに観られたことに感謝。
亀とローレンス
新教皇は108の枢機卿から2/3以上の票を得た
人物が選ばれる。
新教皇が決まった時は白い煙。
決まらなかったら黒い煙。
閉ざされた礼拝堂の天窓から差し込まれた
光と煙は前教皇からの願いの訪れだろうか。
閉鎖体制からの脱却。戻るべき場所に帰る。
ローレンス主席枢機卿、その為に君を残したのだと。
新しい光を差し込みたかったのかもしれない。
金、地位、権力、欲望が水面下で蠢くので。
ローレンス主席枢機卿は取り仕切るのが大変
で胃が痛そう。善き友は亀だが、自分自身と重ねて
た感じもした。何があっても逃げられなくて元に戻る。
彼がヴォルデモートだったとは知らず。
イザベラ・ロッセリーニが
『女性は目に見えない存在』と言い放つが
世界に目を向け凝らす存在。
彼女が映るだけで緊張感が増す。
テデスコ枢機卿は庵野秀明監督に似てたなぁ。
ベニデス枢機卿は本並健治さん似。
我々は理想を目指す者であり、理想そのものではない。
完璧な人間は存在しないが『神は全てお見通し』
の見せ方が上手い。
『自分自身の常識を疑って迷う。そして決して確信をせずに、確信を追い求める』のセリフは印象的。
亀とローレンスだね。
脚本も秀悦。
芸術と娯楽性、サスペンスが楽しめる映画でした。
主人公の名前が一番の皮肉。
主人公のトマスはキリストの復活を疑った事で有名な使徒と同じ名前。
その名前の通り周囲や前教皇を疑いながら行動して教皇候補の過ちや陰謀を暴き、一番疑いの目を向けなかった候補を新教皇になるけど、実は子宮の有る両性具有だったという結末が、なんとも皮肉が効いてる。
派手なシーンは無いし宗教色が全開だけど一味違う映画を見たい人にはお勧め。
映像の美しさと目が離せない展開で充実した仕事終わりの夜
カソリックでありながら、観光以外で教会に行ってないエセ信者でもある私は、どの様にコンクレイヴが行われているか全くを持って知らなかった。 次期Popeが決まるまでの何日間にもわたる選挙中のバチカンでの日々を描いた作品。最後までとても見応えがあった。
聖職者とはいえ人間には変わりない… 喫煙や地面に落ちたタバコの吸い殻、ケータイをいじる様子、出世欲などなどなどなど、人間の弱さについて考えさせられた。何十年も前に通っていた教会のベルギー人の神父様の言葉を思い出した。 私が教会常連のおばあさま方に裏で悪口を言われたりしていたので、神父様に、足繁く通う熱心な信者なのに何故嫌がらせをするんだろうかと問うた所、教会という場所は心の弱い人こそが集まる場所なんだよ、と。 話は映画から少し逸れたが、聖職者でも罪を犯すんだなと。人間だから。
映画に戻ると、赤と白の色がどの場面でも際立ち、古い建物のレンガというか、サンドストーンに映えていて、しばらく続きが放映されていないアメリカのテレビドラマ、”The handmaids tale”を彷彿させた。
ローレンスを始めとする俳優の演技もさることながら、シスターアグネスの存在感。さすがです。
あ、あと、ローレンスはPopeになりたいわけでもないが何人かに投票され、野心があるんだろ!と責められる場面… 野心がある人には無いって言った所で信じて貰えない… 人間くさい。どこにでもあるんだなと思った。
完観しないとカラダに悪い
聖職者とて生身の人間っちゅうのは分かった。
むちゃくちゃ美しい映像やけどなんちゅう嫌な話。
見始めたら心が蝕まれていく。
ラストの救済なしには目にも耳にもとても美しい鼻糞みたいな映画。
音楽も好みやし物語にも合っててよかったけれど、BGMなしのほうが緊張感マシマシだったんやないかいな。
ただラストのエンディングの曲はドンピシャで最高にノセてくれてスキップしそうになった。
期待していたモノとは違った(面白かったけど)
コンクラーベを舞台にした陰謀渦巻く政治劇や、もしくはミステリーを期待していたのですが、そういうのではなかったです。
いわゆるキリスト教的な価値観をあまり持たない大多数の日本人にとっては、おそらく(物語上の)敵対者となるテデスコ枢機卿の言い分や立ち位置の方が『リベラル』とされている主人公たちの立場よりは共感できるのではないかと思います。
結末に関して、これはキリスト教文化圏の方達がどのように受け止めるのか正直、私にはわかりませんでした。
もし、たとえばこれと同じようなことがたとえば日本の皇室で起きたとしたら、それこそ歴史的大問題に発展することは確実なので、
この結末が『善き事』なのか『悪い事』なのか、どちらとして描かれているのか、教養のない私には一度では読み取れませんでした。
順当にいけば主人公が時期教皇に選出されていたのを『異教徒』の自爆によって邪魔され、覆された、と考えればバッドエンドのようにも思えますし、
「これでいいんだ」的なハッピーエンドのようにも捉えられなくはないなと思います。
とりあえず(皆、同じ服を着ていて顔と名前が一致しないということもあって)一度見るだけでは理解しきれない映画でした。
二回目観たら感想も変わるかもしれません。
荘厳な雰囲気と名優達の共演によるアンサンブル
【イントロダクション】
ロバート・ハリスによる同名ミステリー小説の映画化。
全世界で14億人以上と言われるキリスト教の教派・カトリック教会。その最高指導者であるローマ教皇の逝去により、空座となった教皇の座を巡る“教皇選挙(conclave)”が執り行われる事になる。世界中から100人を超える候補者が集まり、閉ざされたシスティーナ礼拝堂で極秘の投票が始まった。
選挙を執り仕切るローレンス首席枢機卿役に『キングスマン:ファースト・エージェント』(2020)、『ザ・メニュー』(2022)のレイフ・ファインズ。監督は、Netflix『西部戦線異常なし』(2022)のエドワード・ベルガー。脚本に『裏切りのサーカス』(2011)のピーター・ストローハン。第97回アカデミー賞、脚色賞受賞。
【ストーリー】
ローマ教皇が心臓発作により急逝した。自らの信仰に疑問を抱えている首席枢機卿ローレンス(レイフ・ファインズ)は、生前の教皇に辞任を申し出るも却下されており、彼の急逝により次期教皇を選出する教皇選挙〈コンクラーベ〉の指揮を執る事となった。
世界各国から100人を超える枢機卿がバチカンのシスティーナ礼拝堂に集結する。その中には、前教皇と親交のあったベリーニ(スタンリー・トゥッチ)、ナイジェリア人のアデイエミ(ルシアン・ムサマティ)、前教皇との間に諍いを抱えていた保守派のトランブレ(ジョン・リスゴー)、伝統主義の保守派であり野心家のテデスコ(セルジオ・カステリット)らの有力候補が居た。
選挙の行われる礼拝堂は勿論、枢機卿たちが宿泊する聖マルタの家までもが厳重な隔離状態に置かれ、外部と連絡を取れないよう通信機器までもが預けられる。
前教皇の死を嘆く暇すら与えられず、コンクラーベの準備に奔走するローレンスの前に、参加者リストに載っていない枢機卿が現れる。アフガニスタンのカブール教区からやって来たベニテス(カルロス・ディエス)は、前教皇が秘密裏に任命した人物だった。
選挙の開会宣言にて、ローレンスは“確信”こそ最も恐れるべき罪であり、信仰は“疑念”と共に歩むものだと説く。
いよいよ選挙が始まり、初日は有力候補らが大混戦を極める。必要得票数である72票を集める候補者が現れなかった為、選挙は2日目へと持ち越される。
やがて、ローレンスは各候補者たちへの疑念を持ち、それぞれの候補者が抱える秘密を明らかにしていくことになる。
権力への野心、それぞれの抱える信仰、様々な思惑と共に、コンクラーベは前代未聞の様相を呈していく。
【感想】
カトリック教会を扱ってはいるが、作中に登場する固有ワードの意味は会話の内容から推察出来るようになっており、キリスト教に明るくない人でも問題なく楽しめる作りとなっている。疑念が真実を明るみにしていく過程も順序立てて見せてくれるので、観客に対して非常にフェアな作品とも言える。
教皇選挙という一つの“選挙”を通して描かれているのは、教皇という強大な立場を前にして浮き彫りとなる人間のエゴと野心、そして罪(秘密)である。この普遍的なテーマ設定があるからこそ、本作は観る者を引き込み離さないのだろう。
ローレンスの選挙前演説で語られる内容は、そのまま本作が辿り着く結末を端的に言い表しており、秀逸な台詞だった。
「私が最も恐れる罪は“確信”だ」
「信仰は生き物だ。“疑念”と共に歩むべきだ」
この考え方の通り、彼は候補者たちへ常に疑念を向け、彼らの抱える過去の罪を暴いていく。
冒頭でベリーニが語ったように、前教皇が「常に8手先を読む」人だったのならば、ローレンスがコンクラーベの責任者となるように、彼の辞任を却下した事も頷ける。そして、彼はまさしく“疑念”を胸に、それぞれの有力候補者の罪(秘密)を暴いていく。
当選すれば初のアフリカ系教皇となるアデイエミは、30歳の頃に19歳のシスターと性交経験があり、彼女との間に子供を儲けていた事が明かされる。婚姻や性交の許されないカトリックの枢機卿にとって、それは許されない罪である。たちまち、彼は候補者の座から転落する。
前教皇との間に諍いを抱えていたトランブレは、教皇の死の直前に彼から解任を言い渡されていた。その理由は、彼が他の枢機卿を買収し、選挙の際の票を買い取っていたというものだった。また、アデイエミを失脚させる為、彼が関係を持っていたシスターを呼び寄せたのもトランブレだった。シスター・アグネスの告発もあって、トランブレの当選も無くなった。
前教皇と親交があり、権力に興味を持たず、変革を受け入れる姿勢を見せていたベリーニすら、国務庁から買収されていたという秘密を抱えていた。また、野心を持たず、「教皇はまともな人間のする仕事ではない」とすら語っていた彼だが、テデスコの当選を阻む為の話し合いの場では、「教皇庁では、もっと女性にも活躍してほしい」と、まるで自分が当選した際の理想を語っているかのようであった。教皇の座に興味がないと言いつつ、自身の得票数が他の候補者より少ない事、ローレンスに数票が集まった事により、ローレンスの野心を疑う。その裏には、同時に彼に対する嫉妬心すら窺わせる。
結果的に、彼はレースの上位に躍り出る事はなかったが。
強烈な伝統主義の保守派であり、野心家としての面も隠さないテデスコは、ローレンス達の前に立ち塞がる強敵としての存在感を放っていた。ベリーニの話によると、彼は前教皇に対する不誠実な対応や情報漏洩と、数多くの問題も起こしてきた様子。
そんな彼らは、どこまでも「人間」なのだ。
それは、作中に登場する台詞にも表れている。
「我々は理想に仕える身だ。理想そのものではない」
神に仕える身ではあるが、それぞれが野心やエゴという「弱さ」を抱えている。そして、それが故に彼らは対立する。終盤で問題になるイスラム教との宗教戦争の兆しを前に、テデスコは「脅威はすぐそこまで迫っている」と説くが、その脅威は、外部からだけとは限らず、寧ろ内部にこそ強く存在しているのだ。
そんなエゴと我欲に取り憑かれながら選挙を進める枢機卿たちに、実際に戦地で説いてきたベニテスが問いかける。
「本当の戦争をご存知か?」と。そして、彼は候補者達の醜い争いを「くだらない」と一蹴する。
最終的に、最も清く正しく信仰を掲げるベニテスが新教皇の座に就く。しかし、そこにもある重大な秘密が隠されていた。
全編通して描かれる、荘厳で美しい雰囲気。外部との接触を絶たれた環境下で渦巻く陰謀と疑念。これぞ「映画」。「古き良き映画」だろう。
また、フォルカー・バーテルマンによる、静かながらも確実な「不穏さ」を感じさせる音楽も秀逸。
しかし、「古き良き映画」とは同時に、新鮮さに欠けるとも言える。前述した作品としてのフェア精神も、それが故にラスト5分以外には驚きに欠け、大方こちらの予想通りの真相には、若干の肩透かしを食らいもした。
これは、私が本作の前評判の高さやアカデミー賞・脚色賞受賞という箔、“ミステリー要素”という部分に過剰な期待を寄せてしまったが故でもあるのだが。
「教皇は本当に、ただの心臓発作だったのか?」
「密かに外部と連絡を取る手段を確保している枢機卿が居るのではないか?」
「礼拝堂の外で起きるテロ事件は、誰かが教皇の座を狙うが故の自作自演ではないか?」
「そもそも、ローレンスは本当に教皇の座に興味はないのか?」
こうした様々な“疑念”が、鑑賞中絶えず私の中を巡り、それを上回る衝撃を期待してしまったが故なのだ。また、探偵役となるローレンスもまた外部の情報を不必要に仕入れるわけにはいかない立場故に、自身が抱いた疑念は部下が調査して報告するという流れだったのも、探偵役と共に謎を追うというミステリーの面白さを損なってしまっていたように思う。
【観る者を鮮やかに裏切る、衝撃のラスト5分】
ネットで“ネタバレ厳禁‼︎”と言われていた全てが、このラスト5分に詰まっている。
混戦を極めた野心と疑念渦巻くコンクラーベを乗り越え、晴れて新教皇となったベニテス。
だが、彼はインターセックスであり、男性の肉体ながら子宮と卵巣を持つという特異体質だった。この驚愕のラストを当てられた人は居るのだろうか?私自身、これまで様々な物語に触れてきた故、そうそうの事では驚かないという自信があったのだが、このラストにだけは素直に驚かされた。天晴れとしか言いようがない。
因みに、話し合いに訪れたローレンス相手に、ベニテスが「(スイスへの旅行の目的は)子宮と卵巣の摘出手術を受けるはずでした」と語り出した瞬間は、“未だ女性の権利が弱いカトリック教会において、性転換手術による『史上初の女性教皇(女教皇ヨハンナの実現)』という男性優位社会への反逆”かとも思った。
しかし、実際には、彼は男性/女性両方の性的特徴を有しており、それ故に苦悩の人生を過ごしてきた人だった。
前教皇は、インターセックスを理由に辞任を申し出るベニテスを諭し、「摘出手術を受ければ良い」と在任を認めていた。だが、ベニテスは「これこそが神の作りたもうた身体なのだから、私はこの姿を受け入れて生きていく」と考えを改め、より困難な道を選択する。
先を読む事に長けていた前教皇は、あるいはベニテスがこの解答に行き着く事すら折り込み済みだったのかもしれない。
【総評】
荘厳な雰囲気と、不穏な空気を煽る音楽。豪華実力派俳優陣の演技合戦と、映画館で鑑賞するに相応しい、これぞ「映画」というものを体験出来た。若干の不足感を抱きつつも、ラスト5分の予想を遥かに超えた衝撃は、真っさらな状態で食らう醍醐味が詰まっていた。
一般人より人間臭い聖職者たち
決まるまで何度も選挙を繰り返す事は知っていたけれど、その合間にいろいろ戦略を練っていたりしているのか。聖職者のトップ集団なのにあんな汚い罠とか仕掛けていいわけ?とかたくさんの駆け引きが出てくる。でも結局は正論が勝つのかな…えっ!という映画だった。
堅苦しいようで、すごく面白かった。
多様性を認めつつも
緊迫感のある音楽や不穏感のある空気など、硬派な語り口のミステリーとして楽しめました。
映像的にも、厳かな建造物や宗教的なモチーフ、厳粛な選挙の様子など見応えがありました。
宗教的伝統的な厳粛さと俗っぽい選挙選の組み合わせは、どこかシュールさを感じます。
選挙の票集めなどは俗世間と変わりませんし、そもそも宗教とは言え結局ただの権力争いだとは思いますが。
ナショナリズムやリベラル、分断や偏見、多様性への賛否など、今の社会情勢、現実の選挙戦を連想させる構図になっているところも面白かったです。
そんな中、自分が正しいと確信することの危うさを語る主人公の言葉には、大いに共感しました。
個人的には宗教などは特に信じていませんが、真っ当に信仰に向き合う人間を見ると、宗教も大切だなという気にもなります。
パワーバランスで投票先を決めるのではなく相応しい人間に投票するという、理想的な結果もスッキリしました。
組織がガタガタの時に組織体制を批判してインパクトのある演説をする人間に投票したという見方をすると、ポピュリズムの危うさもあるかも知れませんが。
ラストのラストも予想外かつ成程そう来るかと思わされるもので良かったです。
多様性を認めつつも選挙が可能な地位にあるのは男性のみ、選挙の裏で黙々と食事などの世話をしていたシスターたちの描写が効いてきます。
とは言え、最後は結局、誰が教皇になったのかハッキリと分かる場面はなく、再投票して別の人物が教皇になった可能性も考えられるような。
あのまま教皇になったと信じたいですが、今の現実では無理なのでしょうし。
ラストカットも、扉が閉まるところなど、女性への扉はまだ閉ざされていると示唆しているようにも感じてしまいました。
主人公演じるレイフ・ファインズの、淡々としつつも内面の葛藤や迷いを滲ませる演技も素晴らしかったと思います。
真に教会が必要としている教皇とは
冒頭から、昔映画館で観た重厚なミステリー洋画を思い出し、カメラの撮り方が上手く引き込まれました。
ローマ教皇が亡くなったことによる教皇選挙で、室外でスマホを触っている人物がいたので、現代の物語ですよね。
首席枢機卿のフローレンスは、本当に教会が必要としている教皇候補者を求めているのがよく分かりました。
最終選挙で、フローレンスが自分の名前を書いているのがお茶目でした。
時々出ていたカメは、オスとメスの区別はつきにくいですね。
ラストの終わりかたも余韻があり、良かったです。
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