教皇選挙のレビュー・感想・評価
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ローマが舞台なのに何故製作国にイタリアが入っていないのか?
正直前半30分近くは退屈に感じた(おまけに枢機卿の名前を覚えられず苦労した)が、その後は目が離せなかった。音楽も素晴らしい。この選挙システム(=決選投票にしないでずっと同じメンバーでやり続ける)は改善すべきだと2度目の投票からずっと感じていたが、伝統を守っておかげ(?)で番狂せとなった。最後の告白にはたまげた。ローマが舞台なのに何故製作国にイタリアが入っていないのか不思議だったがこのストーリーならまあイタリアは協賛したくないだろう。
枢機卿の内密
字幕版を鑑賞しました。
序盤に 睡魔が襲ってきて、登場人物の 低音の心地良い声だけが 聞こえたまま 一瞬 目をつぶってしまいました。眠気との戦いを覚悟していましたが、これほど強いとは。
眠気覚ましガムを 口に入れたことは どうか 内密にお願いします。
教皇が決まるまで 枢機卿たちが根気比べする コンクラーベ(原題『CONCLAVE』)は、教皇選挙それ自体は 実際に行われていますが、その実態はベールに包まれているため、今作の脚本はフィクションで、舞台となるシスティーナ礼拝堂も 本物ではなくセットとのことです。
ローレンス(レイフ・ファインズ)視点なのが分かると、だんだん会話の意味も わかってきます。
選挙2日目で 引き込まれて、選挙3日目ともなると、映画の中の バチカン市国のシスティーナ礼拝堂に いるような感覚になります。
音の演出が 臨場感を高めていて、演技が細かく 言葉だけではなく目での会話もあり、中盤あたりから 緊張感がずっと継続していたので、終盤の 礼拝堂に穴が空いた瞬間は とてもビックリしました。
精巣は 體の外にあり、卵巣は 體の中にあり、神聖なる受精の時(考え方によっては神の御前で)は、ペニスは頭を丸出しにして射精し、ヴァギナはそれを覆い隠している状態です。
男性が脱帽して挨拶する習慣は、もともとは キリスト教的な発想から来ているのかもしれません。
人間は 體の仕組みから 生き方や在り方を 学べるのかも しれないという希望に、あらためて氣付くことが できました。
もし 最初に造られたアダムの體の中に イヴ(子宮)が あったとしたら、イエスの體の中にも あったかもしれない...などと、ベニテス(カルロス・ディエス)の台詞のおかげで、インスピレーションが搔き立てられました。
「確信」についても 考えさせられました。
明るいエンディングの曲が、シリアスな作風に 絶妙にマッチしているように感じました。
多様性
今年一面白かったんですけどー。
全世界14億人以上の信徒を誇るキリスト教最大の教派・カトリック教会で、新教皇を決める教皇選挙を「コンクラーベ」と言うらしい。
「なるほど、“根比べ”ね。上手いこと言うな。」と意味不明なことを思ってしまいましたが⋯。
世界中から100人を超える候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の閉ざされた扉の向こうで極秘に投票が行われるそうで、
密室って、それだけでミステリー感増しますもの。
票が割れる中、水面下でさまざまな陰謀、差別、スキャンダルなどなど、
神に仕えていても、結局は人、下世話な話なわけですよ。
「理想ではなく、理想に仕える者」
「確執と寛容」などなど、個人的言葉メモに、メモりたいセリフ多し。
ラスト、選挙を執り仕切っていたローレンス枢機卿は、バチカンを震撼させるある秘密を知るところで終わるのね。
密室ミステリードラマとして、終始ドキドキさせられていました。
ローレンスとベリーニ以外存じ上げない俳優さんたちだったので、余計にリアル感が増して、
ローレンスの八の字眉毛の不安げな顔と、暗めで荘厳な感じの音楽と、
これまた極秘の教皇選挙の様子を覗き見る感じが、余計にドキドキを煽るんですよね。
なんだか全てが本当にあったことなの?!って思わされて、
また、要所要所に良いセリフ言うんですよ、ローレンスとベニテスが、それに心震わされるわけで。
そして、ラスト、そうなん!?みたいな。
ローレンスだっけ?ベリーニだっけ?言ってたもんね、多様性って⋯。
構想、脚本、演出、音楽、赤黒白でまとめた衣装や、礼拝堂内の装飾も美しく、全てのバランスが良く、
ミステリー映画を観た満足感を得られました。
はぁ〜、面白かったぁ〜。
主題とは裏腹な面白さ
権力闘争が豪華な映像で描かれるのが良かった。
普通の人間はカトリックの知識は無いはずなので、解説を読むとより良く理解できる。
外面と内面で描きたいものがミスマッチしているのが、ウケる要因だと思う。
解説を良く読解した上で、もう一度劇場で観たい映画。
>追記
2回目を観ました。
登場人物がちゃんと分かって見ると、最初から面白いですね。
キノフィルム好みのコントラストバキバキな映像も、このぐらい重厚な映画だと絵が映える感じになるのは面白い。
カットがめちゃめちゃ上手い。ディレクターズカットも観たい気もするけれど、切るべきところを適切に切っている編集者の手腕が凄まじいと感じた。
ローレンス枢機卿が最初から最後まできちんと話の中心にいたのも、改めて見返すと芯が通っていて見やすい一因でした。
見れば見るほど面白さがあると思うので、聖職者のコメンタリーとか聴きながら観たいですね。
観ているこちらも猜疑心でいっぱい
この作品は是非とも予備知識なしで鑑賞いただきたい。
パンフレットも鑑賞後に読んで欲しい。
そのほうが楽しめると思います。
(しかし、カトリックとプロテスタントの違いやカトリックの大まかな規則などそのあたりは押さえておくとより良いかも。)
映像はとても重厚で美しく、システィーナ礼拝堂はレプリカだそうですがカトリック特有の荘厳さもひしひしと伝わってきました。
枢機卿たちの着衣の深紅が威厳や虚栄心や野心をまざまざと見せつけられるようでこれまたすごくインパクト大。
バックに流れる音楽もこちらの恐怖心にも似た心持を存分に引き付けるには十分すぎるほど崇高で重い。
枢機卿は神に仕える者であり、神ではない。
この言葉がすべて。
映画のストーリーを予想すれば人間の欲望が渦巻いちゃって、すったもんだあるんでしょ?って言うのがオーソドックスな流れかと思われますが、「神に仕える者」でもあるわけで、己に対しての深い深い猜疑心があるわけです。
ここがキモと感じました。
もちろん、選挙ですから男たち(枢機卿)の政治的な思惑も絡んでくるわけなんですが、あくまでもこれは肉付けに感じました。
真実は一つではなく、信仰は己の中にあるのではないか。
欲望は悪魔と言いますが、のまれるのも退けるのも己の中次第。
そして、それを見破れるのか受け入れるのか、共に考えるのか。
私はリベラルな考えが強めなので作品が投げかけてくる答えの様なものにほぼ共感するのではないかと思いますが、果たしてこの作品を受け入れることが出来るカトリック信者は何パーセントくらいいるのであろうか。
真実が語られたときはセリフにうっかり涙してしまったけれども、最後は鑑賞者にゆだねられたんだろうと思います。
すごくよかった。
インノウケンウテルス
コンクラーベが完全密室で行われる1週間以上に及ぶ教皇選挙だっていうことは知っていた。まさに、根くらーべ。
アカデミー賞脚色賞作品。
ということは原作の小説があるわけですな。
三分の二以上の票を集めないと決まらないのを知った。世界中から100人以上の枢機卿が集まり、自薦他薦の投票を三分の二に達するまで繰り返す。上位決選投票はしない。一票だけの人が30票以上。えげつない根回し合戦が繰り広げられるから完全密室。スマホ類は取り上げられて、情報操作、漏洩をシャットアウト。
賭博や八百長防止のために携帯取り上げられて缶詰にされるボートレーサーと同じだね。
これじゃ決まるわけないよなぁ、と思って眠くなってしまう。
亡くなった教皇が秘密裏に認可していたカブールの枢機卿は男性なのにお腹の中に子宮(ウテルス)と卵巣がある完全な両性具有(ヴァギナはないらしい)。極めてマレな病態で、自分の精子と卵子を人口受精させて、自分の子宮で育て、帝王切開で自分のクローンが産めるかもしれないのだ。
一番、神の子にふさわしいかも。
知らんけど。
それでも、彼の教皇名を聞いたときには感動しました。
最初、陰嚢兼····なんとか?と思った。
インノケンティウス。英語ならINNOCENCE.
レイフ・ファインズが説教するときの言語はラテン語なんですかね。
レイフ・ファインズとスタンリー・トゥッチはズリ落ちそうな小さい帽子似合うねぇ。ふたりの額のシワ数えていました。スタンリー・トゥッチの勝ち。このふたりの教皇は絶対同性愛カンケイじゃないかと最初から思ってました。
追記
本邦公開中の2025年4月21日にローマ・カトリック教会第266代教皇のフランシスコ教皇が亡くなりました。これから本物のコンクラーベが行われます。公開期間延長、上演回増やされるかな?
日本からも2024年12月にフランシスコ教皇から任命された枢機卿が出席するらしい。
追記2
シスター役のイザベル·ロッセリーニ。母親はイングリットバーグマン。
バラの品種にイングリットバーグマンという深紅のバラがあります。
第264代ローマ教皇のヨハネ・パウロ二世の名が付けられたバラは真っ白でとてもゴージャス。
追記3
ゴールデンウィークに上演延長、上演回数増やしてる映画館すごく多いです。どちらかというとシニア向け作品なのに、新宿では若い人たちでいっぱいの館も。もう少し早くフランシスコ教皇がなくなっていれば、 レイフ・ファインズは初のオスカー受賞できたと地団駄踏んでるかもね。
教皇選挙
・昔ながらのローマカトリックの権力欲、名誉欲に溺れる腐敗を描く
・と思わせておいて、実は最先端のダイバーシティを問いかける
・ローマ法王は、カトリック教徒にとって生身の人間の最高峰
・その法王が黒人でも女性でもあなたは受け入れられるかという挑戦的な内容
・黒人は何十年もかけて許容できるまできたが、女性はどうかと最後に問いかける
・枢機卿と言えど権力欲、名誉欲は昔ち変わらず法王たる資格はない。それを超越した有資格者が女性だったらどうなのか
・リベラルな民主党時代に作り始めた映画が、ダイバーシティクソ喰らえのトランプ時代に封切られたのは皮肉
新たな風…が吹く
…重厚感のある建物
未知なるローマ教皇の世界
新たな教皇を決める
選挙がはじまる
…教皇選挙
部外者は入ることができない
男だけの世界
これからどんなことが起きるのか
興味深かったけど
序盤は少し退屈さを感じる
選挙がはじまり
票が分かれてなかなか決まらない
模索しながらも
女性問題で失脚する者
賄賂の問題で票がこちらに流れてくる
もしかしたら・・自分にも
…野心がない
と言っていた(ローレンス枢機卿)
野心があったのね
爆発で窓が壊れ壊れた窓から…
明るい太陽の光と風が入ってきた
新たな風が~
新たな教皇が生まれる
その新たな教皇には
"秘密"が
・・・
驚きは隠せないかったが
…戦争の深刻さを語り
いまの実情を知っている者として
教皇になり得るふさわしい人物
ラストで部屋の窓を開けて
窓の外を見ると
シスター達が出てくる
そこには優しい日常があった
主演レイフ.ファインズの
ローレンス枢機卿役が魅力的
他にキングスマン、ザメニューにも
出演し独特の演技に惹きつけられます
いいですか?暴力を振るっていいのは化け物共と、異教徒共だけです。
と、ヘルシング以外にキリスト教ものを見た事が無い人にとっては、この映画はいっちょん、わからん!わからんとです!
いや、ロケ地とか、撮影とか、照明とか、衣装とか、美術とか、音響とかは、何かいいんだよ?良質な劇場でクラシックを聞いているような気分になれるのです。
俺はキリスト教には興味が無いので、最後の晩餐、ミッション、ジーザスクライシストスーパースターwすらも見た事が無い。
神様って、本当にいるのだろうか?いるのなら、世の中に、悪い奴等が蔓延りすぎじゃね?天罰って、本当にあるのか?神の雷は無いのか?モンティパイソンの巨大指はないかw
神様は、シラミの如く、大量にわらわらしている各個人の願いをいちいち叶えるって、不可能だろ?面倒くさくて。神を信じて得する事はあるのか?何で、目に見えないモノを信じるのか?
漫画の鉄腕アダムだったか、ビッグバンをおこした超進化した生命体が神の正体だとかと言う説には、心踊り、行方不明になったガイバーの漫画家が信じていたと言われる宇宙人を神と讃える宗教にはちょっと興味がありました。
いつもの長い前置きはここまでにして、
さあ、この映画!次期法王を決める為のコンクラーベの選挙( ん?頭痛が痛いみたいな例えなのか?) を粛々と描いていて、撮影、BGM、お爺ちゃん俳優の重厚な演技など良かったので、何部門も受賞するかと思いきや、アカデミー賞は脚色賞のみ受賞だったのが、不思議でした。
何故、脚色賞が受賞したのかというと、ラストの告白シーンですね。あれは、ちゅ、多様性だけど、いるかなぁ?あの多様性は?
ぬるま湯でぬくぬく暮らしていたモブ教皇共を蹴散らす、本当の地獄を経験した者にしか言えないスピーチで充分だと思うのだよ。
NHKでこの映画が特集されたそうだが、俺が見た回は平日昼間なのに、ほぼ満員、そして老夫婦の二人連ればかりで、映画館で見かける、映画好きにだけ分かる同族嫌悪...、じゃなく、
この人達、普段、映画は見ないだろうな?という匂いがしたんだな。多分、ガチのキリスト教の信者だと思う。そんなに、流行るタイプの映画じゃないもん。
客席には、お爺さんお婆さんばかり、映画本編もジジイの佃煮で、庵野秀明に似ているお爺さん以外はイマイチ見分けがつかなかった。デニーロとか、ショーン・ペンとかを混ぜた方が良いと思います。
古民家を改築した喫茶店で、美味しい抹茶を飲んだ時のような満足感を得られる映画。でも、お腹いっぱいになれないんだよなぁ。
やっぱ、映画は爆破!暴力!破壊!裏切り!ゾンビ!お化け!お色気!がないとつまらん!ジャンクフード映画最高!!
見て良かったです
「子宮摘出―――。」
漢字四文字で全てがひっくり返った。
選挙で新しい教皇に選ばれた男は、実は女性であったのだ。
辛うじて声は出なかったものの、驚きや悔しさと言った様々な感情を受け止めた呼吸は、荒く低く劇場に響いてしまった。
いや、声を出してしまっても良かったかもしれない。むしろ声を出して周囲から白い目で見られるべきだった。だってその人達はこの作品で得られる、本当の感動を味わうことができないのだから。私はとても嬉しかった。映画を見る前日コンクラーベや教皇について予習しておいて良かった。
カトリックの主たる教皇が男しかなれないことを日本人の何人が知っているだろうか。
タイトルなし(ネタバレ)
正直ノーマークだったが観て良かった作品。とにかく画面の美しさが良かった。天井画や彫刻、建物の美しさは勿論、枢機卿の衣装の荘厳さや白い傘と赤い衣装のコントラストが画面に映えた。内容に関しては派手な面白さは無かったが考えさせられる内容だったかと。選挙って難しい…笑 そこに更に宗教観・差別・スキャンダル等入ってきて彼らは神に仕えているのかそれとも権力に仕えているのか…の問いかけに考えさせられた。最終的に決まった教皇にも実は秘密があり…がどこまでも清廉潔白な人間は居ない終わりが、ある意味人間らしくて良かった。それこそ宗教的に両性具有はタブーであるはずだがそれさえも認める事が”前進”なのかなと思った。
いまいち理解出来なかった。
カトリックの事をよく知らないのでいまいち理解出来なかった。最後にメキシコの人が教皇になるにあたって両性具有だということが分かって何かマズイということだろうか?カトリックでは両性具有が恐らく認められないからと言うことだと思うが、ここは海外と日本では感覚が違うのでいまいちどんでん返しに感じなかった。おもしろかったのはタバコを吸って教皇選挙をやってること。電子タバコ吸ってて人間味が有って面白かった。
「トラ××」の話ではない。
カトリック教会と言えば信者にも構成員にも女性が多いのに組織の上層部に女性をおかない家父長制の権化のような宗教組織である。
枢機卿である男達が次の教皇を醜く争うなか、シスターである女達は食事や寝具の準備に従事させられるだけで投票権も発言権もない。男と同じく目も耳も口もあるのに、だ。
だからこそ、あのラストは爽快である。
~以下ネタバレ。結末に触れているので注意~
ベニテス枢機卿は男性として育ったが、盲腸の手術の時に卵巣と子宮が体内にあることが発覚した。「染色体から自分を女性と定義づける人も居る」と話しているように、見た目は男性に近いが「性染色体や性腺、内性器、外性器などの先天的な発達が非定型的な状態」である性分化疾患(DSD)なのだろう。
*かつては両性具有(半陰陽)やインターセクシャルという呼び方もされていたが現在あまり使われていない。
「修道院の生活は質素で周囲の男性との身体の違いに気がつかなかった」と言っているように身体の発達が男性としては非定型的な部分がある。おそらく産まれたときはペニスがあるので「男性として割り当てられた」が、子宮と卵巣があり、染色体からいっても生物学的には女性に近い存在なのである。
日本人で言うと「性別が、ない!」で有名な漫画家、新井祥がDSDとしては有名である。新井氏は女として育ったが、結婚後に妊娠しないことでDSDであることが発覚した。以後、乳房切除やホルモン治療を受けて見た目は男性化しているが戸籍は女性のままである。
DSDをトランスジェンダーと混同している人、またわざと混同させようとしているトランス活動家もいるが、トランスジェンダー当事者はDSDのような身体的疾患はなく、性自認(いわゆる心の性別)が身体と異なるというケースがほとんどである。
「割りあてられた性別」とは、ペニスがあり出生後に男性と判別されて男性として育ったったが、卵巣と子宮があり染色体がXであるベニテスのように、性分化疾患により出生時に染色体と異なる性別を割り当てられたケースを指すのであって、身体疾患のないトランスジェンダーが使うのは言葉の簒奪である。
トランスと混同しないでくれと言っているDSD当事者が多いようにベニテスをトランスジェンダーと呼ぶべきではないだろう。
この映画をクィア映画と呼ぶ人が居るが、そもそもクィアの定義が人によって大幅に異なるうえに、人によってはペドフィリア(幼児性愛者)やネクロフィリア(屍体愛好家)などの性的嗜好を含むと公言する者もいる(個人的にはそんなものはただの変態であってセクシャリティでもなんでもないと思うが)。
生まれつきの疾患であるDSDをクィアに含むのには問題があるだろう。
ベニテスはDSDであることを知って自分の身体について悩んでいた。ゆえに枢機卿を辞任しようとさえした。しかし前教皇は比較的柔軟だったようで、子宮切除をすれば問題ないと判断していたことが明らかになる。もちろん性器や生殖器を切除したところで染色体が変わるわけではないし筋肉や骨格が完全に異性になるわけではない。しかし現実的に異性として生きるにあたり性器や生殖器の切除が現実的なラインであることは多くの人が納得するところだろう。性同一性障害の人が性別を変更するに当たっても身体的特徴を異性に近づけるよう手術しているなどの条件がある。(一部のトランス活動家が性器や生殖器の切除は人権侵害であり戸籍性別変更の条件を撤廃すべきなどと主張しているが、そもそも男性器があるままで手術を希望せず自分が女性だと主張しているような人は性同一性障害でもなんでもないだろう)
しかしベニテスは「神の御業」に手を加えることをよしとしなかった。
そもそも、もしベニテスがDSDではない普通の女であったら、または幼少期などもっと早い段階でDSDであると診断を受け女として育っていたら、教皇はおろか枢機卿にもなれなかっただろう。聖公会やプロテスタントでは女性の司祭や牧師がいるがカトリックは女性の司祭をいまだに認めてすらいない。ベニテスも女性として育ったなら一介のシスターどまりだったかもしれない。ベニテスがコンクラーベに参加出来たのは「神の御業」ゆえにベニテスが少し変わった身体で生まれたからだ。ベニテスはそこに神の采配を感じたに違いない。
他の候補者がスキャンダルや足の引っ張り合いで自滅したとはいえ、そこにテロが重なってベニテスの演説がその場の者たちを動かした。
選挙を終えて多くの枢機卿たちがそう判断したように、また映画を鑑賞した者たちも思ったように、選びうる選択肢の中でベニテスが教皇として最もふさわしい人間なのである。未成年を妊娠させて捨てたアデイエミ、誹謗中傷大好きトランブレ、イタリアのトランプみたいなテデスコ、気骨に欠けるベリーニ、言ってみれば「生物学的男性」の枢機卿にはろくな選択肢がない。ローレンスが一番マシといえばマシだけど彼は羊飼いより管理者の方がふさわしい。そこで男性として育ったとは言え生物学的には女性に近いベニテスが教皇に選ばれることに意義がある。
ベニテスの身体について知ったローレンスは驚くが、そして事実を明らかにすることなく新教皇を受け入れる。前述の候補者たちの問題に比べたら身体の違いなど些細なことだ…と思ったかどうかはわからないが、彼の尊敬していた前教皇も事実を知っていたことが大きかったのだろう。
そもそも何故女性がトップになったらいけないのだ。性別関係なく最もふさわしい人間を選ぶべきだろう…とまではいかないかもしれないが、制作側のカトリック教会組織に対する大いなる挑戦を感じる。
これはクィア映画ではなく、むしろ旧態依然とした家父長制に対して、「いい加減前進しろ」とケツを叩く映画ではないだろうか。
しかしどこかでベニテスの身体の事実が明らかになったときが本当にカトリック教会が試されるときだろうな…。比較的リベラルなローレンスでさえあの反応だったのだから、ベリーニでさえ動揺しそうだし、テデスコやトランブレなんかはベニテスに教皇を辞めろとか言い出しそう。そこから前進できるかどうか。組織のトップは優れた者でなければいけないが、トップだけが優れていても組織はそれだけじゃダメなのだ。
「これは宗教ではない・・・
、宗教とは伝統ではない、前進することだ。」
というカブールの新入り大司教の言葉が、胸のすく思いだった。この言葉で票が一気にこの大司教に流れて選出されたが、あれを聞いてこの人に投票しないわけにはいかない状況だっただけで、連中が本気で改心したとは思えず、一時的な効果という気がした。ローマ・カトリックはこれまでも様々なスキャンダルが発覚し、健全な宗教団体かどうか揺らいできた(一大勢力のためにどこからも異端だと言われないだけでそもそも最大の異端だという見方もあるそうな)。そういう事件にも言及があったが、この映画は、伝統と威厳を見せつつも、およそ神に仕える者とは思えない欲深くて手段を選ばない人間を描いて、宗教者の表と裏、上に立つ大司教という立場であっても敬虔とは限らないことを示していた。そうだろうなぁ、やはり人間なんてこんなものなのだろうなぁと思う。宗教って何だろうとあらためて考えてしまう。
それは置いといて、映画として非常によく出来ていて、サスペンス要素、主人公の苦悩、衣装、天井画や様々なしつらえなどが、興味深くて見応えがあった。主人公が投票した瞬間にテロの爆風で吹き飛ばされたときは驚いたが、あのときの主人公は、神からの警告といったことも想像したかと思えた。その後、爆風で空いた窓から風が吹き込むというのも、まさに空気が変わることを示したような、何かを示唆するシーンだったが、何を狙ったのだろう。(精霊が入ってきたとか!?)
最後にもうひとつ発覚する新教皇に関する秘密、現在重視されている「多様性」(トランプ政権除く)につないだのだろうか。一昔前では追加されない展開だろうなぁ。
イザベラ・ロッセリーニを久しぶりに見られたのは良かったが、無名の女優でもいいような役どころだった。もう少ししっかりした役にしてあげて!という気がした。
教皇
どうやら好評らしいという前情報だけで観に行きました。
申し訳ない前半はウトウトしてしまいました。
大きなアクションは無く
メインは会話劇です。
ローマ教皇が死去して
新たな教皇を決める選挙の数日間を描きます。
しかし内容は
欲望、見栄、地位、スキャンダル。
神に仕える聖職者の本当の姿が可視化される。
誰がトップになるか?
隔離された空間で決まるまで続く選挙期間。
次々に露になる人の裏側。
音が良い!
地味な映画なのに
音が凄い。
ビックリシーンも身体がブルっとしました。
そして選挙が終わり。
いや~お疲れ様~。って安堵している中
あれれれれ?
まさかの急展開のクライマックス。
。。。マジか。
是非結末は劇場で!
人間っておもしろい!!
閉鎖された厳かな空間に、100人を超えるおじさん。同じ衣装、同じような年ごろ。その条件下でどんどん展開される会話劇。「これついてける?大丈夫そう?予習してくればよかった…」って思ったのも束の間、アフリカ系枢機卿とメイドのいざこざが明るみに出たぐらいから一気におもしろく。
「しっかりやらないと」と思えば思うほど候補者たちの思惑に翻弄され、密告が集まり、前教皇の部屋に忍び込んだりして自身が暗躍者のようになっていくローレンス。
足の引っ張り合いによって有力者の悪事が次々暴かれ、失脚に次ぐ失脚で候補が絞られ二転三転。ただの機能に徹しようとしていたローレンス自身も次第に野心を持っていく。日本の国会を見てるみたい。いい歳した権力のあるおじさんたちが、怒って泣いて懇願して逆ギレして秘密を暴露して罵り合いながら全力でお互いの足を引っ張る。陰謀、過ち、スキャンダルが次々と暴かれる。聖職者を決める崇高な選挙は野心と思惑が渦巻く泥試合に様相を変えていく。清廉潔白な人などいないのか?でも、だから人間っておもしろい!!
ローレンスが秘密を知るたびに、その内容が明かされずに進むのが印象的。観客は他のおじさんたちと同じように、最大の驚きを持ってバッと事実を開示される。余計なことを考える間もなくグルッと世界が反転する。
これ終わるんか…?と絶望しかけたとき、「戦うとおっしゃるが、何と戦うのです?」の言葉にハッとさせられる。そこから続く、他人と戦うのではなく、怒りに負けそうな自分と戦うのです。仲間だけでなく全てを愛してこそ善き人間だ(ここまで言ってないかもだけどそう聞こえた)。みたいな言葉に本当にそうありたいと思った。やっと私たちは正しいものを選べる。そう思ったのも束の間、選び取った純白は、ここにあってはならない真っ赤な一滴だった。
ここで「言語道断!すぐやり直し!」とならないのが、現代を舞台にこのテーマをやる意味だろう。
コンクラーベのこともっと知りたい。
「スカッと」と「えらいことになった」がもう止めらてないスピードで未来を突き破って行きそうなラストの先。とてもいい意味でフィクションならでは。完璧。
キノシネマのまっ赤な座席が映画の中からそのまま伸びてきてるみたいでさらに最高でした!
タイトルなし(ネタバレ)
「どんでん返し」というレビューをよく見るのだけど、そうではなく、これは「衝撃のラスト」でしょ
例えるならこんな感じ
↓
山頂へ続く人気のない荒れた林道を運転してるドライバーがレイフ・ファインズ
数々の難関、悪路を乗り越えてようやく山頂が見えてきた...と思ったら、
急にわき道から飛び出してきた別の車(選ばれた枢機卿がドライバー)と正面衝突して終わる
満身創痍の体で、それでも徒歩で山頂にたどり着いてみたら、
山の反対側には広い舗装道路があったとか、ロープウェーで大勢の人が押し寄せていた、
というラストならば「どんでん返し」
バチカンの密室一大イベントという、普段見られない世界観にどっぷり浸らせてくれるという意味では良作
ライバル役たちがチョロすぎる
映像的には良かったし、社会問題の要素を盛り込んだのは良かったが、ストーリーが単純すぎると思いました。
「選挙」という題材から、もっと濃い政治劇を期待していました。
主人公がスキャンダルの証拠を突きつけるも、海千山千の悪党どもはのらりくらりと追求をかわして生き延び続け主人公は歯噛みする、そんな展開を期待していました。
しかし、作中のライバル達は、主人公が証拠を突きつけると簡単に激昂して自滅していきます。悪党としてはチョロすぎます。
ドキュメンタリーを期待してたが
ただのパロディ映画でした。残念
さらに不義の子をシスターとの間に産ませた枢機卿を黒人にしたところに監督の人種偏見を感じる。
映像は綺麗だったが得るものもなくつまらない映画だった。
こんな映画をありがたがってはいけない。
キリスト教はわからないけど
教皇が死去してしまったので、次の教皇を決める選挙を行う話。
キリスト教は正直わからないし、見始めてあぁこれ見る映画見違えたかとも思いましたが、主要な候補者のスキャンダルや思想を主人公が見つけて行く過程はとても面白く見れました。
とても静かで、淡々と物語が進む中で、飽きてしまう部分も確かにある。しかしどう云う結末を迎えるのか気になって見ていると、予想外の落ちにたどり着く。誰かじゃなくて選ばれだ人の秘密なのだが。
何か伏線が散りばめれられていたりすればもっと面白かったのにと思った。
気づいてないだけかな。
全169件中、61~80件目を表示
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