教皇選挙のレビュー・感想・評価
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教皇選挙を当事者目線で体感できる高質で重厚なサスペンス作品
全世界14億人の信徒を持つカトリック教会の頂点を決める教皇選挙の舞台裏を描いた作品。
ロバート・ハリスの小説『CONCLAVE』を原作とし、小説はベネディクト16世の選挙にも参加したラッツィンガー枢機卿の日記をもとにしている。
現実世界ではベールに包まれ、内部の人間しか知りえない教皇選挙の内情がリアルに描かれ、当事者目線で選挙を疑似体験できる作品となっている。
前教皇の死去によりバチカンのシスティーナ礼拝堂には世界各地から枢機卿が集められ、次期教皇を選出する教皇選挙が行われる。
教皇選挙を表す『コンクラーヴェ(Conclave)』はラテン語で『鍵のかかった(部屋)』を意味するが、文字通り選挙人である枢機卿団は次期教皇決定までバチカンのシスティーナ礼拝堂に閉じ込められ、外部との通信も完全に遮断される。
これは1268年に教皇選挙が紛糾し、3年近く空位が続いたことに怒った民衆が、教皇決定まで選挙人を会場に閉じ込めたことに端を発し、以来このシステムが確立され現在に至っている。
この映画には次期教皇を目指す6名の枢機卿が登場する。
ひとりはこの映画の主人公であり、前教皇から主席枢機卿を任され、野心もなく規律に厳格で清廉潔白だが、自信の信仰に疑念を持つローレンス。
前教皇と政治的な方向性が近く、多様性を尊重するリベラル派だが、人望に欠けるベリーニ。
同じく教皇に近い思想を持つリベラル派だが、汚職に手を染めるなど腹黒く野心家のトランブレ。
前教皇の方針を真っ向から否定する強硬保守でタカ派のテデスコ。
唯一の黒人で次期教皇の最有力候補だが、過去の不貞行為という爆弾を抱えており、排外主義的で保守派のアデイエミ。
出自に謎が多いものの、ぶれない信念を持ち、清廉潔白で信仰心が厚く、前教皇の計らいで秘密裡に枢機卿に任命されたベニテス。
選挙は世俗の政治さながら、教会の伝統を守ろうとする保守派と多様性に寛大なリベラル派という対立軸で進行していく。
『聖職者も生身の人間であり、理想の姿を追い求める者であって、理想の姿そのものではない』
聖職者とはいえ、そこはやはり人の子。候補者それぞれの思惑や陰謀が複雑に絡み合い、選挙戦が進むにつれ、候補者の汚職や過去の不貞問題が次々に明るみとなり、そのたびに選挙戦の勢力図は刻一刻と変化していく。
どちらに転ぶか分からない混乱の行方を固唾を飲んで見守るスリリングな展開が続き、選挙は次第に泥沼化していく。
『選挙は戦争じゃない!』『いや、戦争だ!』もはや聖職者の選挙とは思えないこんなやり取りがなされ、混乱は頂点を極める。そうして枢機卿団のイライラが頂点に達した時、ベニテス枢機卿がこう問いかける。
『みなさん何と戦っているのです?』
そこでハッと我に返る枢機卿たち。人は価値観が対立したとき、つい戦闘態勢を取ってしまいがち。我々世俗の世界でも保守と革新、多様性と排他主義などあちこちで世論の分断が見られるようになった。
しかし、対立や分断からはなにも生まれない。『自分は何と戦っているのか?』そう自問し、戦いではなく、相手の主張と向き合うことでしか解決策は生まれない。映画は我々にそんなことを問いかけている気がした。
少し話が脱線したが、最終的に次期教皇に選ばれたのは、権力闘争とは終始距離を置き、信仰に忠実で高潔な魂を持つベニテス枢機卿だった。
彼は『インノケンティウス』という教皇名を名乗るが、この名は歴史上13名の教皇が名乗った教皇名であり、その語源は『純粋、無実、無害』を意味する『innocent』である。
厳しい環境のなかで人々を導き、信仰に忠実なベニテスに相応しい教皇名であり、紆余曲折ありながらも、混迷する現代の羊飼いに相応しい教皇が選ばれたといえる。
また、家父長制的な価値観を持つ(枢機卿は男性しかなれない)カトリック教において、ベニテスが男性にも女性にも分類されない身体的特徴を持つインターセックス(性分化疾患)という点も興味深い。
カトリック教会の役割とはイエスキリストの教えを守り、それを後世に受け継ぐことだが、そんな使命を帯びた組織の中にも様々な価値観があり、伝統をどこまで守り、どこまで変化を許すか、その両者のせめぎあいがカトリックの抱える葛藤でもあり、それが垣間見えた興味深い作品だった。
そして、この映画最大のミステリーは、この結末が前教皇に導かれたものではないかという謎である。
前教皇のチェス仲間だったベリーニ枢機卿は、前教皇を『常に8手先を読んでいる』と評し、その先見性や戦略性を評価している。
前教皇は生前から次の教皇選挙を見越し、枢機卿たちをチェスの駒のように動かして、ひとつの結論へと至るようさまざまな仕掛けを行っていたのではないか。
トランブレの汚職の証拠をベッド裏に残し、そのトランブレにはアディエミと不貞関係にあったシスターを召喚させ、ルールに厳格で疑い深いローレンスを主席枢機卿に任じ教皇選挙を仕切らせた。
ローレンスは前教皇の思惑通り、汚職や不貞行為の真相を次々と突き止め、知らず知らずのうちに対立候補を追い落としていく。
そして、前教皇が密かにキングの駒に定めていたのがベニテスであり、ローレンスは『8手先を読む』前教皇に導かれるようにしてベニテス勝利へのレールを敷いていた。
果たしてどこまでが前教皇の計画だったのか?そして、インターセックスであるベニテスは今後も秘密を隠したまま教皇であり続けられるのか?前教皇の亀はなにを暗喩しているのか?など、鑑賞後も残された謎にあれこれ思案を巡らし、余韻に浸れる素晴らしい作品だった。
前教皇の思惑…ではないと思います
多くの人が「結局は前教皇の計画通り』という見方が多かったので、ちょっと違うと思うなぁと言う意味でレビュー投稿します。
ほぼ最初から最後まで人間くさい思惑に振り回されたコンクラーベ。キリスト教徒にとって、人間の技か神の技かは、そこに聖霊が臨んでいるかで決まります。キリスト教徒以外の人には非常に難しいこの概念は、いわゆる
三位一体のことで、父と子と聖霊、すなわち神様とイエス様と聖霊は全て同じものであると言う考え方。神様とイエス様はイメージしやすいけど、聖霊はわかりにくい。これは、神様の意思を直接人間に働きかける存在で、よく「神の息吹」と表現されます。風が吹くように私たちに意思が伝わると、そこには神の意思が反映されると言ったら良いでしょうか。
さて、生臭い人間の思惑が錯綜し、気の毒なローレンスは疲弊、リベラルすぎるベリーニは這い上がれず(リベラルというのは信仰とはかなり相性が悪いのです)、ほかの枢機卿も自滅していき、いったい聖霊の働きはいずこ?というカオスの中、皆考えあぐね、ついにペンが止まってしまうラストシーン。
半壊の礼拝堂から微かな風が吹き、皆の投票用紙を揺らす。見上げた先に筋のように入る光。そして突然皆が決意したように候補者を書き始める。
あれこそが聖霊が臨んだ瞬間であり、そこから先は神の意思が加わったのです。ちなみに雲間から現れるスジ状の光は「ヤコブの梯子」と呼ばれ、これも天と地をつなぐもの。つまり、もう前教皇の思惑など関係なく正しく完成されたコンクラーベになったのです。
たぶんローレンスは真実を知っても、選挙の結果を受け入れたでしょう。聖霊を直に感じたのだから。そして迷いのない静かな心で亀を池に戻す。
実際のカトリックがこの結果を是とするのかはわかりませんが(私はプロテスタントなので)少なくとも映画的に大団円だったと言えるでしょう。
色々な見方ができる映画
同じ神を信仰していても、それぞれに思想が異なるから教皇選挙がこれだけ注目されるのだと改めて感じた。
途中から終盤にかけては疑惑が渦巻き、選挙管理者の心労が感じられる。
タイトルなし(ネタバレ)
ずっとうっすら感じていた違和感を2段階で浴びた感覚。それも1段階目はただの思い過ごしで本当の意味での真実は2段階目にちょっと油断した時にクリティカルに浴びせられた。「なんだ結局→いやでもなんか変→いやいやそんなことないはず→そんなはずない→嘘だやっぱり→驚愕」これだけ見ると2段階でない気がするけど、2段階ということにしておく。宗教に関してズブな素人でもなんとなく知っている観点でもとんでもない結末だったが、物語という点とこれが現実世界であっても私達が蚊帳の外でヤイヤイ問いただすべき問題ではない、そんな技量の問題ではないということだけはわかった。
おじさま達の権力争い?嫉妬心?欲望?何か出し抜こうとしている、探り合いの日々の中に突如なんの予兆もなく爆ぜる爆弾がローレンスだけでなくあの限られた世界の空気感そのものなのでは?
備忘録だけど、なんか途中まじで泣きそうになった(?)
人間の欲と良心を描いた作品
そもそも秘密に包まれたバチカンの世界。描写の細部がいちいち新鮮でした。
すごい古風な宮殿なのに最新のセキュリティーだったり、みんなスマホやタブレットは持ってたり。
冒頭の伝統的な死の儀式?から普通にカートに遺体を載せて拘束ベルトでガシガシに止めて運んだりして、「神の代理人」も容赦なく「死体」として扱われてるのが印象的でした。
そして何より、人間の欲望がじわじわあぶり出されていく感じがリアルに描かれてると思いました。
主役の枢機卿はおそらく能力も立場も教皇にふさわしい実力があるのに、最初は自分でなく仲間を一生懸命推します。そして邪魔になる候補者を使命感から次々排除することに成功。
そうしていくうちに、周りも自分もだんだん一番ふさわしいのは自分ではないか、、と野心が芽生えていくのです。その辺の描写がすごくリアルだなあと思いました。
けれどそんな彼が自分の虚栄心に負けたとき、天啓のようなテロ事件が起こります。
この事件をきっかけに、みんなもう一度心を改めてふさわしい人を選び出すのです。
(最初、枢機卿たちは黒い傘を持ってましたが、この事件のあと白い傘になりました。これは心がまっさらになった暗喩のような気がします。)
選ばれた教皇はこれまた意外な展開でしたが、その存在が奇跡的な人なので、私は納得しました。
人間だから、欲はある。でもそれを人間は克服できる。また、人智を越えた現象というのは、いつの時代でもあるのです。そこに神をみるかどうかなんでしょうね。面白かったです!
恐慌/浅挟
現実のコンクラーベも終わり時期を逃した感はあるが、新作に隙間ができたので鑑賞。
題材や雰囲気の割に薄い、というのが正直な印象。
まず、使用言語が口をあまり動かさないものなのに加えて、画面が暗く誰が喋ってるか分かりづらい。
服装もみんな同じなので、キャラの把握に苦労した。
開票結果のシーンでようやく整理がついたが、ああいう演出は早めに入れてほしい。
主題がどこにあるのかも判然としなかった。
様々な思惑が入り乱れる人間ドラマとしては、キャラの思想や背景などが表面的すぎる。
教皇になりたい者となりたくない者がいるが、まず教皇の実態を描いてくれないと。
現行制度に疑問を呈するほどの内容にも見えず、少なくとも粗筋にある“ミステリ”ではないし…
票の少ない者を弾いたりスピーチを挟んだりもなく、ただ投票を繰り返すやり方は単純に疑問。
こんなん裏で色々やりあって下さいと言ってるようなもんだ。
保守だのリベラルだのの前に、もっと見直すべきことがあるのではなかろうか。
スキャンダルの内容は、教義的にはアレなのかもだが一般的に見ればしょうもない。
人間やっぱりそんなもんよね、というありきたりな話に「聖職者でも」が加わっただけに見えた。
オチも両性具有というのは逆に半端に感じる。
前教皇は「8手先」を読んでたってことでしょうか。
確実に言えるのは、教皇への道が閉ざされてメソメソ泣くヤツは器じゃない、ってことかな。笑
あとタイトルの出し方はセンス無さすぎ。
コンクラーベは根比べ。
ローマ教皇が亡くなり新教皇を決める話。
新教皇を決める教皇選挙(コンクラーベ)に世界中から集まる候補者達、…選挙水面下で起こってる陰謀、スキャンダルを察し候補者でもあるが教皇にはなりたくないローレンスが不正を暴きながらも着々と候補に残っていくが…。
本作の感想から書くと私には全く合いませんでした。直感で私向きではないと思いスルーしてましたが、高評価、公開から約2ヶ月経っても上映本数多い、鑑賞客多いで気になり観に行ったけれど。
候補者も数名に絞られ残ったのは自分本位な奴が多いなと思うなか、まともなのはローレンスと彼、いやっ彼女くらいで…、ラストは納得、まぁこうなるとは思ってはいたものの、それ以前に候補者達の顔と名前が一致しなくて誰が誰だっけ?って感じでした。
本作の様なお堅い作品よりも学生のラブストーリー作品観てる方が性に合ってる。
全体評価高いなか低評価さ~せん(笑)
なるほどね
コンクラーベの内幕を描いた作品。シチュエーションドラマであり、ミステリーでもある。これは、舞台劇になり得ると思った。
コンクラーベのマネージメントに徹しようとしていたローレンス枢機卿が、段々その気になって来て、ついに投票用紙に自分の名前を書いてしまう。
そして、投票しようとした瞬間、神の怒りに触れたが如き轟音が響き渡り・・・(以下略)
最後に皮肉なドンデン返しがあり、ウンザリするようなトラブルを予感させて、映画は終わるのである。
高評価につられて。ミステリーとは感じなかった。
時事的にタイムリーだと複数の知人に勧められて視聴。
ミステリー・最後のどんでん返し、と謳われているが、あまりにも陳腐だなと感じてしまった。
時事的に注目されたなら分かるが、評価も高いので驚き。展開が読めてしまいすぎる。
末期がんで数日後すぐにまた教皇選挙、か
性転換手術の2択だなと最初から思っていた。
他の方も書いていたが、あの役どころに黒人を配置するセンスの無さに驚いた。
それでいてオチは時代の最先端ともいえる、むやみやたらなら女性活躍のゴリ押し。。
同じ女性として、「今まで見えないものとしてきた女性をトップに立たせてあげましたよ」と言わんばかりの展開には胸糞悪さすら感じた。
最後のナースの高笑いが嫌に耳に残っている。
映像美は圧巻。
まぁ「禁断の根比べ」ダネ
本日、那覇から葛飾区へ帰る。ハノイから始まった。僕のグレートジャーニーは那覇で終わる。
歴史博物館に来たのだが、場所が分からないまま、映画館を見つけてしまった。しかも、この映画は見たかったので、雨もふってる事だし。
12時15分より開演。さて。
ネタバレは絶対に出来ない。でも、鳥肌がたつくらい感動した。
タブーをここまで払拭すべきだ。
と僕は思う。
この旅行中にフランシスコ教皇が亡くなり、267代レオ何世?がコンクラーベされた。なんか、因果を感じる。
最後の名前「インノケンティウス」愛の無いAIに聞くまでもないが「イノセント」ですよ。
傑作だ。
タブーの本丸に切り込む
奇しくもリアルにコンクラーベが行われている今、ロングランの様相を見せている「教皇選挙」。やっと見ることができた。
昨今の多様性を声高に叫ぶ映画とは一線を画した重厚さで、人間の本質に切り込む内容。
また哲学的でもあり、教皇庁に仕えるのではなく神に仕えているというセリフや、疑い考え続けることこそ信仰というセリフなど、隅々までじっくり考えさせられた。
新教皇の告白には、胸を打たれましたね。
ローレンスの封蝋破りから始まり、衝撃のラストまで、数千年のカトリックの伝統を破る(ことになる)というタブーに切り込んでるし、最高に面白かった。
ローレンスが投票したときの爆破シーンは、彼の心象風景で心臓発作でも起こしたのかと一瞬ドキッとしましたよ。
チェスの駒のように亡き教皇が先を読んだとおり、彼が正しき導き手だったことにも、唸らされました。
それにしてもマリア信仰はカトリックでも大人気であるにも関わらず、ペテロが建てたバチカンは頑なに女性を排除している。
見えない存在であるシスターたちが笑いあいながら外に出てくる場面は、女性は決して見えない存在ではないという意味がこめられているのでしょう。
もしくはやっと、ローレンスも、今まで空気のような存在だった彼女たちが目に入るようになったということかもしれませんね。
政治的なスキャンダルにまみれた内部事情は知りたくもないが、教会の秘儀そのものは興味深く拝見しました。教皇の私物は、実際には死後どのように扱われるのでしょうね。
戦って良いのは○○だけ
観てるうちに自分が悩んでるかのような閉塞感に囚われる。仲間が悪いことしてる予感がして、それを教会員(14億人も)の公正のために暴かねばならない…使命感にひっ迫されて。この使命(選挙管理)を終えたら枢機卿辞めるーって思うのわかる。
しかし、枢機卿仲間を信用できず、こんなのの誰かがリーダーになるなら自分がやるのがマシじゃない?と自分に投票しちゃうのもまたわかる。腐敗した教会を立て直す覚悟決めてたんだよね。
最後、ローレンスが新教皇かなって思ったら、拍手して誰かに言う「教皇を受けますか?」。
誰よー?有力候補は皆、自分が敗れたことにそれぞれの表情で残念がってるのを映されたあとで。。
まさかの!でもそうだ、彼の健康面を知ってから、なおさら彼は相応しいとおもった。彼は多様性そのもの。神が作ったままの体で良いんだよ。だって神が作ったんだよ。
戦って良い相手は、自分だけ←克己心の意味
確信は多様性を阻む←自分の信じるものだけ見て、柔軟性がなくなる
新教皇のスピーチの響いた箇所。思い返すとこうしか書き出せない。もっと良いこと言ってたんだけど。
他の枢機卿も、彼のスピーチに心掴まれたから、彼に託そうと決心したんでしょうね。
宗教を知らない私にはサスペンス的な意味での面白さかも
ネタバレが怖いので詳しくは書けないけれど、ラストに驚いた人がほとんどだろう。
もともと,宗教がわからない人間にこの映画の本当の深さはわからないと思う。ただ、組織のトップを投票で選ぶとなれば、聖職者といえど人間だし,いろんな陰謀や策略がある。そこは面白いし、どうなるかと引き込まれた。
教皇になると教皇名というのを名乗るらしいが、名乗ったその名前は何を象徴してるのだろう。選ばれた教皇にあと少しで世界で1番有名な人間になると語りかけるけれど,多分日本人は知らない。だからやっぱり本当の重みはわからないなぁ。
ほとんど話には出てこないけれど、急死した元教皇がものすごいできる人物だったのだろうなぁと思った。
選挙を通じて「教え」を観る映画
この映画は、枢機卿の人間らしさを楽しみつつ、鑑賞者に宗教の教えを説いたものだと感じました。
カトリック教会という宗教の中でも最大級の組織における枢機卿というと、なんと高貴な人間であろうと小市民である私は思っていました。
しかしながら、枢機卿らはタバコを吸い、吸い殻が地面に捨てられたシーンすら描かれています。
物語の起伏を生み出す権威や性といった欲に塗れた者たちのギャップは、我々とそう遠くない人たちのように見えます。
特に好きなシーンは、最終投票の前、爆破された窓から光が射すシーンです。
息が詰まる部屋の中で様々な思惑が渦巻いて続いた選挙でしたが、淡い光に照らされて一斉にペンが走り出す枢機卿たち。
きっと新たな教皇と、それを選んだ枢機卿たちによってつくられる教会の明るい未来を描いているようでした。
人間らしさをもつ枢機卿たちと重ねて、きっと我々にも明るい未来が待っていることを感じさせます。
暗い映画館から外へ出て太陽の光を浴びたとき、自分のなかにある確信に固執せずに寛容をもたらしていけばいい。最後のどんでん返しで主人公がそうしたように。
そんなことをこの映画から教えてもらったと思います。
旧教皇は八手先を読む
おいめっちゃ面白いぞ
こんな皮肉きかせた映画作っちゃって実際の教会に怒られないのかな
私は宗教に無知で何も背景も設定も良く知らないまま見た。
公式サイトがネタバレページを用意してくれて、用語解説をしているのありがたすぎる!
ずっと、女性に生まれただけで同じ信仰をもっとシスターが無視されている、裏方の存在なことにモヤモヤしながら見続けていた。
男性中心・白人中心の世界に疑問を投げまくった末の、痺れる結末。
予想していなかった。
そうか、旧教皇は八手先を読むお方なんだもんな。
それにしてもインノケンティウスと名乗った意味を知りたい。。。ググってもよくわからなかった...
→公式サイトに解説があった!
「ベルガー監督はこの名を「先入観のない純粋さを表す名」と語っている。」(公式サイトより引用)
ビジュアルもこだわられていて、終始絵が綺麗だったのも惹き込まれる理由の一つだった。
個人的に、ベリーニ役の俳優さんは「プラダを着た悪魔」で知っているので、ずっとその役のゲイに見えてしまった
歴史と伝統は無意味なのか
教皇とは、266代・故フランシスコ教皇に至るまで約2,000年続いてきた、世界でも稀なThe宗教指導者です。
歴史が長いと往々にして色々な問題や腐敗に見舞われるのが、『組織』というものです。
ご多分にもれず、特に中世においてはローマ・カトリックも様々な闇がありました。
ガリレオ裁判や十字軍や贖宥状など、無知のゆえか特権階級の私欲の故か、様々な闇に飲み込まれそうになってきました。
しかし、2,000年の長きに渡って消滅せずに連綿と歴史を刻んで来たということは、やはり何らかの霊的な役割が、人知を超えた偉大な存在から与えられている明かしではないかと、認めざるをえません。
皮肉屋からすれば、それは裏で国家権力と手を結んでお互いの利益を融通し合ってきたからでしょ?と、言うかもしれませんが、組織の上層部はそうかもしれませんが、末端では信仰と赤貧と無私に、朴訥に生きた聖職者がいたからこそ、でありましょう。
この映画は、恐らくそういったカトリックの良心のような市井の聖職者をよく知らない人達が作っているのではないかなあと、思いました。
教皇に推されるような枢機卿という人々の中には、もしかしたら映画で描かれている様な権力欲旺盛な方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的に聖職者である時点で既に無私の祈りの人なのであります。
聖職者は、自分の人間的な成功や私欲を捨て神さまや信徒の為に働く、基本的にはそう言う人でなければ、早々にボロがでてドロップアウトするしかないのであります。
確かにドロドロした権力闘争のようなものは、ある程度あるでしょうが、あんまりそこを面白おかしくスポットライトを当てるのは、真面目で朴訥な聖職者の方々に失礼かなと思います。
また映画では、新教皇にある秘密を持った枢機卿が選ばれます。確かに新しく教皇になったら、改革してくれそうな予感を感じさせます。
しかし。ん~どうなんでしょうか。
その秘密を明かして堂々と選挙で選ばれたら良かったと思いますが、秘密のままで選ばれ・受託してしまいます。
本人としては何も悪いことではなく、やましい所は無い、ということなのでしょうが、周りの人はそれを知っていたなら選ばなかったでしょう。
新しい事を始めるとか、改革するというのはとても大事な事ですが、そう言う時こそ関わる人達のコンセンサスを得る事が重要になるのです。
もしかしたら、20から50年後あるいはもっと先に、秘密にしなくても問題にならない時が来るかもしれませんが、今回選ばれたあの時は秘密を明らかにして、それでも良いですか?と聞くべきであったろうと思う。
それならダメです。と、いう事であれば、それこそ秘密は秘密にしておいて、教皇の側近になって働いてもらう、と言うことでも十分力と存在意義を発揮できることでしょう。どうしても教皇でなければ改革出来ない訳では無いでしょう。
最後に枢機卿長が、礼拝堂で亀に遭遇します。亀は恐らく男性の隠喩なのでしょうが、亀をそっと池に戻します。
歴史と伝統は、破壊しなければ改革できないかもしれません。しかし、簡単・安易に破壊してはいけない物もあるのです。一旦破壊したら簡単に元には戻せず、多くの場合二度と元には戻りません。
遅遅として進まないように見える改革も、性急過ぎては事を仕損じるのではないでしょうか。
亀は優雅に池を泳ぐでしょう。それが吉と出るか凶と出るか、それはこれからの歴史が証明する事になるのでは無いでしょうか。
映画ではなく現実世界のコンクラーベは、つつがなくしっかりとした地に足の着いた結果になる事を願って止みません。
Thank's, all Cast and Staff ! :‑D
聖教者も人の子ということか。
法王が亡くなって、次の法王を決めるため、世界各国から、枢機卿が集まってくる。この人々の世界観から圧倒される。前の法王の周りでお世話をしていた人たちでは制御できないドロドロした人間ドラマがはじまる。映像は赤を中心に描かれてとても静謐なかんじがする。老年の野心が渦巻く。コンクラーベの下調べをきっちりしたのだろう。ドキュメンタリーを見ているよう。少し、HPを見て前知識があった方が言いかも。人の本質を見せてくれる作品だ。あなたは法王になれないなんて言われたら本気で泣くよね。しかも、すれすれ落選。タイミングが悪い。人間関係が複雑すぎて一回では完全に理解できない。足の引っ張りあいは分かるが誰の視点で物語が進んでいるかが分かりにくい。テロのシーンが圧巻。何が起こったのと思った。枢機卿誰もが、実力者という設定だとおもわれるのでリアルな投票風景はおもしろかった。もう一度見たい。
理想的な人物選びではなく陰謀劇
冒頭は、登場人物の整理がつかず、やや混乱します。事前確認した方がいいかもしれません。
大筋は新教皇を誰にするか?となっています。有力候補が次々と失脚されます。
新教皇にふさわしい理想的な人物選びという展開となります。そしてベニデス枢機卿が選ばれます。しかし彼にも問題がありました。
主人公であるコンクラーベの首席、ローレンス枢機卿の苦悩と葛藤という展開です。
しかし、そうではなく、前教皇の陰謀ではないかとも思えます。
次期教皇に推したいベニテス枢機卿をギリギリのタイミングで会議に参加させます。
その後有力候補の、アデイエミ枢機卿トランブレ枢機卿は次々失脚の証拠を白日にさらします。
この計画を実行するために自分に忠実なローレンス枢機卿を首席枢機卿として、ある意味道化役を演じさせる。
「8手先を読む」前教皇の手の内ですべてが進んでしまったと思えます。
ラストはバットエンドです。新教皇の「ある秘密」をローレンスが一生秘密にしたままであることもありますが、カトリック教会はあらゆる人種、国家、大陸をまたいだ大きな組織であるからこそ、選挙自体の公正性に疑いがあってはならない。しかしこの陰謀が暗躍するのであればこの後、カトリック教会は分裂するんじゃなかろうか。タイムリーにもコンクラーベが始まろうとしているこのタイミングで鑑賞したことは意味深いです。
全221件中、61~80件目を表示