教皇選挙のレビュー・感想・評価
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それは新たなるカトリック教会の聖なる扉を開く鍵となるのか
偶然にも現教皇フランシスコの容体が危ぶまれている時期でもあり、また25年ごとに行われるカトリックの「聖年」にも当たる時期に公開されるというとてもタイムリーな作品。
本作はミステリー作品としてのその娯楽性、そして社会派作品としてのメッセージ性に富んだ内容で最初から最後まで緊張感が途切れない作品に仕上がっている。
教皇の急逝により使徒座空位の状態となったバチカンではコンクラーベ開催のために世界中から枢機卿が集結する。100人余りの枢機卿たちの互選による選挙の運営を任せられた首席枢機卿のローレンスは次期教皇としてリベラル派のベリーニを推すのだが、陰謀渦巻く教皇庁ではコンクラーベの行方は二転三転する。選挙の行方の鍵を握るのはいったい誰か。
死去した教皇が秘密裏に枢機卿に任命していたメキシコ人のベニテスは謎多き人物。それに加えて教皇の後釜を虎視眈々と狙うトランブレ、黒人初の教皇かと目されるアディエミ、過激な排他的思想を持つ保守派のテデスコ、リベラル派の人格者だが消極的なベリーニなどなど、有力候補たちの誰が選ばれるのかその行方がスリリングに描かれる。
当然候補者たちは立候補制ではなく互選で選ばれるため教皇の座を望まないローレンスにも票が入る。その票を入れたのがベニテスであるという。ローレンスは困惑するが、一度目の選挙では得票数が誰も届かないため決着はつかない。
有力候補の一人アディエミが食堂でシスターとトラブルを起こすのを皆が目撃する。彼は過去に戒律を破り彼女と関係を持ち子供まで設けていたのだ。そのうわさが流れると彼は有力候補からたちまち脱落する。それを仕組んだのはトランブレだった。その上トランブレの選挙買収の事実まで明らかとなる。ベリーニに見切りをつけたローレンスたちはテデスコを教皇にするくらいならトランブレで妥協するしかないと考えていただけに彼のスキャンダルによる脱落は大きかった。
しかし、意外なダークホースが現れる。閉ざされた教皇庁の外では過激派の爆弾テロが各地で起きていてこのコンクラーベがなされているシスティーナ礼拝堂にもその余波が生じ、爆発で窓が吹き飛ばされてしまう。
その有様を見たテデスコはこれを機会とばかりに大演説をぶつ。リベラル派の相対主義がこのような事態を招いたと、今こそ異教徒を排斥するために戦うべきだと。
危うく彼の思惑通りにその場が流されようとしたときにベニテスが口を開く。戦うべき敵とは誰なのか、戦うべき敵とは自分自身の中にある他者を憎むという心を言うのではないかと。
戦火にさらされた地で長く布教活動を行ってきた彼の説く言葉に皆が諭されテデスコの思惑は見事に打ち砕かれる。そうして選ばれる新教皇。しかし彼にはやはり秘密があった。
神の代理人とも呼ばれるカトリック教会の最高指導者でもありバチカンという国家の国家元首でもある教皇を選ぶ選挙を描いた本作。そこで描かれる様はけして聖なるものではなく俗世間のものと何ら変わらぬ陰謀や駆け引きに満ち溢れたものだった。
金で票を買おうとする者、スキャンダルで政敵を陥れようとする者、不安を煽り立てて敵を作り自分に支持を集めようとする者。これはまさに現在の世界の縮図でもある。特にアメリカや欧州諸国で近年みられる政治状況がそのままこの教皇選挙に反映されていて実に社会風刺のきいた作品となっている。
ミステリーとしてもよくできていて、特に作品前半から傍観者然としていたローレンスがその意思に反して選ばれるのではないかと観客を誘導する。
教皇の死に涙するローレンスの姿から彼らが特別な関係にあったのではないかと思わせる。そして教皇が秘密裏に枢機卿に任命していたベニテスによる彼への投票。有力候補のアディエミのスキャンダルを仕組んだ黒幕が教皇であったことなどからすべては死んだ教皇によりローレンスの新教皇選出が仕組まれていたのではと観客に思わせてのラストのどんでん返し。
しかしこの結末には納得させられた。前半の司教による説教でシスターたちへの見え透いたフォローに対して皮肉な笑みを浮かべるシスターアグネスの姿。同じく中盤での見えない存在の我々でも神は目と耳を与えてくださったという彼女の言葉。カトリックで長年あからさまになされてきた女性差別が伏線として描かれている。
そしてこれはたまたまだろうが昨年現教皇のフランシスコが大学の抗議でジェンダー平等を否定するような発言も物議をかもした。
それらを加味すれば最終的に性別にとらわれない教皇の誕生というのも予測できないことではなかったのかもしれない。
2000年の歴史を持つカトリック教会、幾多の試練や改革を経てもなお古い体質は抜けきれない。本作で描かれた黒人の枢機卿の存在もブラックライブズマターを経て初めて認められた。女性など何年教会に仕えても聖職者にはなれない。女性の地位向上を目指してきたフランシスコ教皇でさえも前述の通り凝り固まった考えがいまだ抜けきれない。
自由と平等がキリスト教の教えであるはずが家父長制的な思想からはいまだ脱却できないでいる。
テロによる爆発で吹き飛ばされた窓からシスティーナ礼拝堂の壁面に光が差すシーンが印象的だった。真の自由と平等の光がこのカトリック教会に差す日が来るのはまだまだ遠い先のように思えた。それがテロのような暴力によらずに。
現実にはベニテスのようなインターセックスの人間が選ばれることはまだまだないだろう。本作では選挙が終了した後に彼の秘密が判明するがそれが選挙が決する前なら当然ローレンスにより候補から脱落させられたであろう。
数人のシスターたちが開かれた扉から駆け出す姿を窓から見下ろすローレンスのシーンで作品は終わる。25年周期で行われる「聖年」の儀式では教皇が普段は閉ざされた聖なる扉を開くのだという。
それにより信者たちは免償を受け、奴隷は解放されるという聖年の儀式。カトリックにおいて女性やマイノリティが真に解放されるのはいつの日か。
ちなみに教皇に選ばれたベニテスが教皇名に選んだインノケンティウスという名前に引っかかった。歴代教皇に多い名ではあるがその大半が悪名高い教皇として知られる。
インノケンティウス4世は十字軍の遠征を繰り返し、果ては当初の聖地奪還という目的を見失い侵略戦争にまで発展してしまった。また周囲の意に介さない者たちを次々と破門し教皇庁の権威を最大にした人間でもある。
またインノケンティウス8世などは異端審問、魔女狩りを大きくすすめた人物でもある。ベニテスがこの名を語った時にローレンスがけげんな表情を一瞬浮かべたのもわかる気がする。
本作はインターセックスの人間が教皇に選出されたという単にポリコレを意識した作品というだけでなく、やはりいまだ世界に大きな影響力を持つ教皇選挙の危うさをも描いているように感じた。
アメリカという世界の超大国においてもキリスト教ロビーの影響力は絶大だ。そんな世界に多大な影響力を持つカトリック教会の教皇が密室で選ばれてることの恐怖を少なからず感じさせもした。
【旧弊的な”コンクラーベ”(教皇選挙)に、急逝した教皇が密かに仕組んでいた事。”今作は、カトリック教会でも多様性を認めるべきであるという強いメッセージがシニカルに描かれた作品なのである。】
<完全にネタバレしているので、鑑賞後にお読みください。>
■ある日、カトリック教会のトップにしてバチカン市国の国家元首であるローマ教皇が、心臓発作のため突如として急死してしまう。
教皇死去の悲しみに暮れる暇もなく、イギリス出身でローマ教皇庁首席枢機卿を務めるトマス・ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は枢機卿団を招集し、次のローマ教皇を選出する教皇選挙(コンクラーヴェ)を執行することとなった。
108人の枢機卿がコンクラーべが行われるシスティーナ礼拝堂に集まる。
1.リベラル派最先鋒のベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ)
2.穏健保守派のトランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)
3.初のアフリカ系教皇の座を狙うアデイエミ枢機卿(ルシアン・ムサマティ)
4.保守派にして伝統主義者のテデスコ枢機卿(カルロス・ディエス)
の4人が有力視される中、メキシコ出身で亡くなった教皇によって新たに任命されたばかりの、命の危険があるアフガニスタン・カブール教区のベニテス枢機卿(カルロス・ディエス)が開始直前に到着するのである。【亡き教皇に、急遽呼ばれた枢機卿として・・。】
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤は、厳粛な雰囲気の中投票が行われて行くが、誰も2/3以上の得票数は得られない。何度も繰り返される投票の合間に、有力候補間では様々な根回しが行われる。投票が終わる度に上がり続ける黒い煙・・。
ー 厳粛な雰囲気と、劇伴も無く、やや単調なので前の席のおとっつあんが、鼾をかき始める。軽ーく頭を突いて起こしてから鑑賞続行する。-
・そして、徐々に明らかになるトップの得票だったアデイエミ枢機卿が、昔に教区の若きシスターと子をなしていた事。そして、そのシスターがコンクラーベ会場で食事係として働いていた事から、アデイエミ枢機卿が激昂し”陰謀だ!”と叫び出て行き、彼を糾弾していたそのシスターは泣いているのである。
ー 驚く枢機卿たちだが、トマス・ローレンス枢機卿は険しい顔になる。そして、アデイエミ枢機卿を呼び出し真実を聞くとその通りだという。その後の投票でアデイエミ枢機卿の得票は大幅に下がるのである。-
・それを画策したのが穏健保守派のトランブレ枢機卿である事も、徐々に明らかになって行くのである。米国大統領選も真っ青の、裏駆け引きである。
本命視されていた、ベリーニ枢機卿の票は伸びず、彼は盟友トマス・ローレンス枢機卿にも、苛立ちの言葉を掛けてしまうのである。
・到頭、トマス・ローレンス枢機卿は、蝋で封をされた亡き教皇の部屋に入り、”或る書類”を見つけるのである。
■そこには、トランブレ枢機卿が他の枢機卿に渡した賄賂の額と受け取った枢機卿の名が記されていたのである。そこには、ベリーニ枢機卿の名もあるのである。
そして、次の投票時には、トマス・ローレンス枢機卿は、初めて自分の名を投票用紙に書くのである。その時に、外で爆弾が炸裂する音が響き渡るのである。
保守派にして伝統主義者のテデスコ枢機卿は、過激派を激しく糾弾するが、そこで初めてベニテス枢機卿は、自身が経験して来た戦争の恐ろしさを、述べるのである。更に彼は”私はここに初めて来たが・・。”と言い、自分が見聞きしてきた枢機卿たちの愚かしき行為を糾弾するのである。
<その言葉に反省しつつ、感銘を受けた枢機卿たちは、ベニテス枢機卿を新たなる教皇に選ぶのである。彼はその結果を受け入れ、”インノケンティウスと名乗る”と告げる。それと共に漸く上がる白い煙。
そして、彼はトマス・ローレンス枢機卿だけに、自分が子宮と卵巣を持っており、スイスでその除去手術をしようと思ったが、辞めた事を告げるのである。
今作は、カトリック教会でも多様性を認めるべきであるという強いメッセージがシニカルに描かれた作品なのである。>
鍵は絶対的な家父長制
カトリック信者じゃないし、馴染みもないからこそフラットに観れたかも。コンクラーベの仕組みとか絶対的な男性社会とか、とても勉強になるなーと思ってたらそれが鍵だったかー!!と思わせる展開。
序盤は次期教皇の候補が揃いも揃って小物でこんなのが世界的な宗教指導者になってしまうのか、、、?と絶望的な気持ちに。もうローレンスしかいないじゃんと思わせ、本人も半ば諦めたところでのどんでん返し。納得の結果ではあるけど演説ひとつで風向き変わるのはどうなの?いや、意外とカトリック教会も世俗的なようだし、こんなもんなのか、、、。と、思ってたらそうきたかー!
徹底的な男性社会で女はいるけど見えない、そんな世界をこう逆手に取ってくるとは思わなかった。
全て前教皇の計画通りにコンクラーベが行われていってたんだろうけど唯一で致命的な難点が性別だったんだろう。手術すれば良いとか傲慢じゃないか。性適合手術が神への冒涜とか言うつもりはさらさらないけど、強要するなら別。前教皇もまたカトリック教会という狭い世界で生きた人なんだなと思った。
本当に相応しい人が教皇に選ばれたとは思うけれどもその教皇名は何か意味あるの?と思わず後で調べてビックリ。意外と野心家ということかな?(ローレンスが考えてた教皇名も納得)
色んな社会の矛盾をカトリック教会を舞台に詰め込んであってむしろカトリック信者じゃないからこそ楽しめた。神の懐は広いんだけど狭めてるのは人間なんだという皮肉を感じた。
これぞ映画!最高のつくりあがり!!ラスト最高!!!
今年いちばん面白かったと言って過言ではない作品。現在No.1。
日本では(少なくとも私は)ピンとこないテーマだが、
教皇が亡くなったため、新教皇を選ぶための選挙「Conclave」に
世界中から候補の枢機卿が集い、選挙戦が展開される。
この選挙戦、アメリカ大統領選さながらの足の引っ張り合いで、
スキャンダルを暴き晒しまくるという、
人間の汚ったないところも見せまくる、まさに戦争状態。
その中でもConclaveを仕切る主人公ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)が
あまりにもカッコよく人間的にも魅力的なため応援してしまうのだが、、、
本人はあまり教皇になりたいという感じではない。
それも本当かどうかはわからない。なぜなら教皇名を考えていたりするから。
ライバルがどんどん落選していく中、
ローレンス枢機卿が選ばれるかと思いきや、、、
テデスコ枢機卿vsベニデス枢機卿の場面でのベニデスの言い放つセリフは
胸にグサグサ刺さるし、であるがゆえに形成逆転することは胸熱だった。
そこからさらに意外性のあるオチが待っているとは思ってもおらず、
実に驚かされたと同時に、最後の最後まで楽しむことができた。
まさに映画というフォーマットをつかったエンターテインメントとして
飽きることが一切なく、しかも最後の最後まで楽しめる仕上がりなのは
今年は本作がダントツだと思う。
俳優陣が素晴らしいが、レイフ・ファインズは群を抜いていた。
映像の色彩も目を見張る出来で、特に赤🟥が印象的につかわれいて、カッコよかった。
劇伴も演技&映像にマッチしていて、物語を盛り上げていたと思う。
レイフ・ファインズの息づかいが音響として効果的。
第97回アカデミー賞において脚色賞しか受賞できていないのが信じられないくらい
素晴らしい作品。
パンフレットも実におしゃれな出来でオススメ!!
まず渋さと画面の鮮やかな赤のコントラストでやられる映画。
イメージは本格ミステリー会話劇、
かと言って音楽の盛り上がりや各シーンのアングルが美しいやら格好いいやらでニヤニヤしてました。
会話シーンが面白いと、時間を忘れて楽しめる、ストーリーと美術が両方素晴らしいのは貴重。
主役のローレンスの管理者として立ち回るも、その裏の人間的な葛藤、感情や一箇所出てしまった野心の部分もひっくるめて魅力的。最終的には管理者として葛藤する中、比較的一番安寧な立ち位置でした。それも彼の定められた道であった気がしますね。その他役者陣のお芝居も魅力的。キャラクター造形もテンポいい会話劇から魅力、憎らしさ含めわかるようになっており秀逸でした。
この作品は『政治闘争をかきたかった』と監督がおっしゃっていたように、今の日本、世界の政治など当てはまる部分は多いと思います。
かと言って決して分かりにくい難しい映画ではないです。この映画を見てファンダメンタルや政治、お金の流れなど、混乱に流されずある種自身が管理者のように周囲にアンテナをはることが、自分の人生を豊かにするのだと感じます。
主役のローレンスはある意味私達自身で、
この先、誰が統治する座につき、どのような社会的混乱が起ころうとも、ある種いつもの日常がこれからも続くのだと。あのラストで思い知らされました。ある意味深掘りすると怖い映画ですね。
この会話劇が素晴らしいし、やりとりの裏側を想像するのが面白味です。
ド派手などんでん返しだけが面白さじゃありませんよ。この渋さや裏にある残酷な現実を想像させる秀逸な脚本が良いのです。たまらないのです。
昨今『衝撃』ばかり求めてしまうと頭が思考停止してしまうのでこういう映画が薬になります。
音がよかった
人種、女性スキャンダル、リベラルVS保守、ジェンダー。浮上するテーマが今日的すぎてありふれてるというか、娯楽作品としてはもっと意外な展開が欲しかった。人間くささが。あるいは、このシチュエーションの作品なら今は外せないテーマなのだろうか。
音楽がすごかった。チェロ?を一回弾くだけで醸し出す不穏。あれが楽しみでもう一回みたい。
セットと衣装も荘厳ですごく良かった。
期せずして、実在の教皇の健康問題と重なってしまったが、バチカンはこのくらいの表現には寛容なのだろうか(教義に反したものではないから目くじら立てることはないかな)。
ぷはーっ!!やっぱシャバの空気はうめぇ~なぁ!
もうね。観ているこっちが胃がキリキリしてくるわ。
いくらフィクションとはいえドアの向こうは知り得ない世界。
だけど生々しい欲望と執念が渦巻いてドロドロな世界。
ある意味見えないものは見えないのが幸せな事もあるもんさ。人の心も物事も。
専門的な用語も出てきますがスクリーンの前であなたも根競べをしてみませんか?
なかなかでした。(少なくとも主要な候補者の顔と名前は確認してから見た方がいいですよ)
最後の予想はついたつもりで見ていたら、ビックリ!
途中まで、顔と名前が一致せず、退屈でした。
日本人なら「根比べ」と聞こえてしまいますよね。でも、全然「根比べ」な話ではありませんでした。強いて言えば「眠気との根比べ」。
追記(ある記事を読んで)
「私に息を飲むような驚きを感じさせた結末は、もしかするとある人々を傷つけているのかもしれない」ということに全く気づいていなかった。ある記事によってその視点を得ることができ、自分の思慮のなさを痛感した。
凄い権力なんでしょうね〜
どんな恥ずべき手段を取っても、男でも女でも手に入れたい・・知らんけど。
映画としては、序盤から思わせぶりな音楽を使い過ぎで最後の衝撃が薄れてしまった。あと選挙のシステムをアニメか図解で説明してほしかった。
教皇に相応しくない候補ばかりで笑
教皇選挙の仰々しい儀式が見れたのはとても面白かったです。教皇の有力候補、ヤバイ人しかいなくて大変(極右の差別主義者とか、性犯罪歴ある奴とか)でしたね...。主人公ローレンスが推そうとしていたベリーニは、特に後ろ暗い過去とかはなさそうですが、最初の投票後から「なんでお前が三票も取るんだよ?お前も教皇になりたいんだな??正直に言え!」とか、めっちゃ器の小さいオッサンで全然教皇に相応しくなくて苦笑。結末のどんでん返しがすごく今っぽい感じでしたが、それまで極右の差別主義者に投票してた人たちが、あのくらいの演説で一気に流れたりするものですかね?????(いいかげん決めたいってことでしょうか)これで脚本賞なのはよくわかりませんでした。 あと、教皇って自分の名前自分で決められるんですか!? インノケンティウスかあ...
別の映画になりますが、2月21日に公開された『ノー・アザー・ランド』、パレスチナでずっと起こっている「占領」「入植」のとんでもない実態がよくわかる、凄いドキュメンタリーなので、ジャンル違いですがこちらを推したいです。観る前に背景知識をという場合は「オリーブジャーナル」というサイトを見ると色々簡潔にまとまっています。
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試写会にて鑑賞。
今年はありがたいくらい試写会が当たって先行して観れていて幸せもんです。
どうやって相手を蹴落としていくのかという選挙ものかと思いきや、コンクラーベで教皇に相応しいもの、相応しくないものを選別していくというストーリーにジワジワと惹きつけられていきました。
選挙で7割近い票を集めないといけない中でめっちゃ票が割れまくっていて全く進まないな…これどうなるんだろうとなったところで、他の枢機卿の過去が明かされていくといったところから名前と顔が一致し出したり、その行動の卑劣さだったりがテンポ良く描かれていき、その上で仕切りを担当していく事になったローレンスが探偵ばりの推理力と悪事を暴いていくミステリーとしての展開もしっかり機能していくので面白さが持続して行っていました。
女性関係から芋づる式にバレていく様が男性社会で閉鎖的な枢機卿を徐々にぶっ壊していき、最終的な枢機卿から教皇への選出で更に風穴を開けていくというのもとても印象的でした。
サラッと合流した人物がキーマンになり、現代にも通じるテーマに繋がっていくというのも上手いなと思いました。
説教と聞くと堅苦しい部分があると思うんですが、今作ではしっかりと教えを説くという感じで要点を事細かく、それでいて納得できるものになっていたのでその点も映画としての良さが光っていたなと感じました。
途中でテロが起こって会場の屋根も爆破されたり、街中で死人が出たりと、かなり映画的にはなりましたが、結構なスリルを提供してくれて、室内だけの空間だったのが少し広がっただけで入ってくる情報量が多くなっていきました。
ラストカットまで無駄のないシーンばかりで見事にやられました。
もっと理解度を深めてもう一度観たい…!と思えるような作品でした。
この手のタイプの作品、それも試写会なんで完全に油断していたんですが、横の席はスマホいじりまくり、前の席はヒソヒソ喋っていたりして気を散らさまいとするのに必死だったのが悔しいところです。
法律を緩くしてスマホいじりとヒソヒソは手刀で意識を飛ばすくらいやってもいい法を作って欲しいです。
鑑賞日 3/11
鑑賞時間 18:30〜20:30
座席 L-1
システィーナ礼拝堂の重厚かつ静謐な空気感が伝わってくる名作
日本公開が3月20日の本作「教皇選挙」ですが、ANAの国際線に乗ったら機内放送でやっていたので、ラッキーにも一足先に観ることが出来ました。
まず第一印象ですが、とにかく映像から漂って来る質感が最高でした。教皇が亡くなり、新しい教皇を選出するための”Conclave(コンクラーベ)”は、実際にコンクラーベが行われた時に日本でも報道されていたので存在は知っていました。でもその内部でどのようなことを行われていたかは知らない訳で、秘密のベールの中を覗き見ることが出来たという意味でも、非常に興味深い作品でした。
映画の舞台はコンクラーベが行われるシスティーナ礼拝堂。言わずと知れたカトリック教会の総本山にして、バチカンの中心にある礼拝堂ですが、平素でも荘厳な雰囲気を漂わせる建物の内部が、コンクラーベの開催により緊張感が漲っており、この辺りの空気感の演出は、近年稀にみるものだったと感じられました。また、コンクラーベを取り仕切る役目を担うことになった主人公・ローレンス枢機卿を演じるレイフ・ファインズは、個人的に「ザ・メニュー」における狂気のシェフ役の印象が強く、ローレンス枢機卿が最後にシスティーナ礼拝堂を燃やすのかと思いつつ観ていましたが、実際は極めて真っ当で穏当で冷静な調整役として終始活躍していました。
本作の見所としては、前述の通りシスティーナ礼拝堂そのものであり、普段は重厚で静謐な礼拝堂の中で行われるコンクラーベ=戦争という”動乱”のコントラストにゾクゾクさせられました。予告編でも紹介されていましたが、周辺で勃発したテロの影響でシスティーナ礼拝堂の天井の一部が落ちて来るシーンは、緊張感が最高潮に高まるシーンでした。
また、実際のカトリック教会の中で論点となっている”リベラルな教皇”という問題についても切り込んでいる点も忘れてはならないように思いました。少し前に体調不良が報じられた現教皇のフランシスコですが、一般に”リベラル”な教皇と言われており、同性愛や離婚、中絶に対する態度が、”保守派”から懸念されているということが度々報じられてきました。本作では、前教皇が亡くなってコンクラーベが開催されることになる訳ですが、この前教皇はフランシスコ教皇同様にリベラルの立場にあったようです。そのため、今回のコンクラーベでは保守派の巻き返しが行われることになりました。そういう意味では近未来にあるだろうコンクラーベを描く作品であるとも捉えることが出来るのではと感じたところです。
果たして次期教皇は誰になるのか?その結末が実に意外な方向に行った点も唸りました。現実の次回コンクラーベがどういう考えを持つ人になるのかは分かりませんが、本作を観たことで非常に興味深いものになることは間違いないでしょう。
そしてラストシーンも印象的でした。無事にコンクラーベが終わりほっとするローレンス枢機卿が部屋の窓を開けると、外からは日常の生活音が聞こえて来る。これで彼個人にとっても、カトリック教会全体にとっても、平和な日常が戻って来ることを印象付けるところが心地よく、最後まで楽しめる締めくくりでした。
そんな訳で、本作の評価は★4.8とします。
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