教皇選挙のレビュー・感想・評価
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認められる人、認めさせる人
カトリック教会の最高位聖職者であるローマ教皇を決める選挙「コンクラーベ」の裏側に迫るフィクション。
世界中から集められた枢機卿がバチカン宮殿に隔離され、根回し牽制し合いながら、3分の2以上の得票者が現れるまで投票が行われていくドロドロなドラマをみせていく展開で、何かと言えば死人に口なしな教皇は知っていた…。
早々に有力候補は数人に絞られた上で話しは進んでいくけれど、映画的に登場の仕方でピンと来てしまう人がいるし、いよいよ白煙というところから後も、問題が…の時点でなんとなくそんな気が…まあ流石に半陰陽的な感じだったのは意外だったけれど。
信仰心の強い方、特にカトリックの方にはショッキングだしセンセーショナルな作品なのかも知れないけれど。
映画とはいえこういう問題が、教皇にまで及ぶ様子を描いたのはなかなか良かったかな。
取り上げている問題は違えど、ゴッドファーザーPart3が何度も頭をよぎった。
荘厳な作品だが、トロい前半がマイナスに ★3.7 (途中からネタバレ)
荘厳なサスペンスだが、前半が起伏なくトロい印象でマイナスに。
(原作がある本作は脚本賞「Original Screenplay」に属さず脚色賞「Adapted Screenplay」となる)
教皇の死または辞任に伴い、世界から100名以上の枢機卿がバチカンに集まり、社会から閉ざされたエリア内で、次の教皇をその中から選出する。
3分の2以上の得票を得る者が現れるまで、何度でも再投票をするそのシステムがコンクラーヴェ。
本作はその一部始終を描いてる。
が、各枢機卿も人の子。 皆それぞれにその座に就くには難点を持つ。
●不正に他者のスキャンダルを煽ってまでその座を狙う狡猾者
●収賄を甘んじて受け入れてしまう者。
●その座に相応しい品格を持たない者。
●十分な資質を持ちながら、当人がその座を望まない者。
●その混沌とする状況の中、正論を説く者。
キャスティングはまずまずなので
誰がその役を演じているかは、想像してからご覧を♪
まるで政治家の選挙までのロビー活動が、コンクラーヴェでも行われていて、
根回し合戦が横行。 これがもっと面白く描かれてもよかったのではとも感じる
作品的には冒頭からやたら暗い映像が私の感覚では40分以上続く。
枢機卿の衣装や建物は本物?と感じるくらい作り込まれていて、(セットか現地ロケかはチェックしてないが)厳かな映像は流石ハリウッドと感じる。
が、物語も厳かににゆったり進行し、それほど起伏がない前半は暗い映像も相まって睡魔も醸す。 後の事件の伏線も描写しているが、さほどインパクトなく進行し中盤まではまあ我慢タイムか・・。
黒人シスターとある枢機卿のトラブルから、物語がようやく動き出し引き込む展開に。
犯罪サスペンスほどの緊迫感はないが、心理的に働きかける描写は通の映画ファンほど高評価するのではと感じる。
私が一番残念に感じる点は、各人物の行動の思惑は十分表現出来ているが、各自の人格や癖などの魅力が描かれてない点。
レイフ・ファインズは、苦悩する複雑な心境を巧く表す丁寧な演技は流石だが見てる方が気に入る様な描写がほぼない。
様々な謀略が暴かれている中盤以降は重厚な進展で引き込むが、前半のマイナスで私的には★3.7という評価に。
厳かな作品でも微笑ましいシーン等で、もっと寒暖を付けてほしかったと感じた。
ロッテンの評価は高い様だが、IMDbでは★7.4が示すとおり一般者の評価は「重い」印象を与えたのか、まずます止まりでアカデミー効果で上昇するはずが厳しい評価と言わざるを得ない。
ベルガー監督前作「西部戦線異状なし」も私的には違和感ある演出があり、あまり評価していない。
おなじ聖職者のサスペンスでも、ショーン・コネリー主演「薔薇の名前」(1987年)の方が私的にはもっと高評価。
ラストネタバレ↓
終盤の混沌状態でのカブール教区のベニテス枢機卿の、
本当の"聖職者たる言葉" は見事で聖人の様な容姿も相まって、意外だが適格者の登場にこの人こそ・・。と思わせる演出は見入る♪
見事に選出されるシーンにハッピーエンドかと喜ばせてからの、
よもやの LGBT !
またか!
しかもカトリック教会は女性司祭を認めていないので、それが教皇となるとあり得ないほどの大問題。
本作では、ベニテス枢機卿は完全な女性ではなく、
男性と女性の両方の身体的特徴両性具有者両性具有者かもしれないような曖昧な表現での結末。
それは人により「是」か「非」で評価が分かれるだろう。
さらなるテーマと深い余韻を与えようとの魂胆かもだが、
視聴者まかせのラストは私的に後者の判断。
「大奥」見ている感覚
私はクリスチャンではないので特にキリスト教に思うところがなく、「大奥」における権力争い、のような感覚で見ていた。
高貴で格調高く、上品な言葉遣い物腰振る舞いから本性をチラ見えさせながらのえげつない足の引っ張り合いにはぞくぞくするものがあるし、コンクラーベ会場のシスティーナ礼拝堂の内外、枢機卿たちの装いなど壮大で荘厳かつ色鮮やかで華やか、(おそらく)伝統にのっとった数々の「儀式」は様式美に溢れ、眼福です。それだけでもずっと見ていられる。
話自体はミステリーながら割とシンプルでさほどのひねりもなく(だからラストの衝撃が強調されるよう)、人物も分かりやすく整理されているのでストーリーが楽に追える。
教皇が突然亡くなり、次の教皇を決めるコンクラーベを仕切ることになったローレンス主席枢機卿が探偵役となり、教皇有力候補者の陰謀を次々に暴いて脱落させて、最後に残るのは誰か、なミステリーに並行して、旧弊で世俗に塗れたローマカトリック内部の実態を今更だが暴露していく。中年以上のおじさん、おじいさんだけが集まる異様な世界であることも分かる。尼僧は選挙に加わることは許されず、ただおじさんたちの世話をするのみだ。
ベニテス枢機卿が飛び入りしてくるところで、彼が次の教皇になるのだろうと予想しつつ、爆破で割られた窓ガラスから入ってきた風に内部のみんなが気づくところで、淀んだ世界に風穴を開ける存在の比喩に違いなく、ベニテスだと、確信した。体調が云々、海外の病院で云々、と言われていたので、もしかすると女性になりたかったのを断念した人なのかと思ったらそうくるか。
亡き教皇が次期教皇の有力な候補になりうる枢機卿たちを誰一人信用しておらず、信頼する尼僧アグネスの協力の元彼らの身辺を調べていたことが明らかになり、教皇の深慮遠謀が見えて来る。
コンクラーベをローレンスに仕切らせたのは、彼に野心がないのが分かったからだろう。辞任を願いに来る人は次期教皇になりたいとは思っていないはずだから。その彼ですら、自分にも目があるとわかればその気になって教皇名を考えたりする。それほど魅力的な座なのだ。
教皇はその死後に、満を持してベニテスを送り込んできた。
過激で知られる異教徒の中で自身の信仰を貫き、危険も顧みず戦乱の中、奉仕活動に身をささげてきたこの人には、集まった枢機卿たちが己の薄っぺらさに恥じ入らざるを得ない、本質的で、思索を巡らせ深化を進めてきたであろう宗教観がある。それはトランブレ失脚時の控えめながらも確固たる態度で示した言葉で明白となり、当然の流れでベニテスが次期教皇に選出される。(これが韓国映画だったら、だから何、で一番汚い奴が選ばれそう)ここまではほぼ、予想通り。
そこで終わるのかと思いきや、ここからが驚愕の展開。
教皇はベニテスが両性具有者であるということも知っていたが、女性の証を体から排除すれば参戦可能と考えていた。
しかし、ベニテスは、教皇の想定を超えてくる。
教皇の言葉に反し、「神から与えられた体を変えない」という選択を下したベニテスは、すでに教皇さえも超越した存在になっていないか。
世界最古の家父長社会と言われるバチカンにおいて、決選投票以前にベニテスが両性具有のままであることが知れたら教皇に選ばれることはなかっただろうが、ベニテスは聖職者として最も適任と認められたが故に選ばれた。それは女性でも男性でも両性具有でも、変わるものではない。結果的に最も旧弊と思われるローマカトリックが、多様性を一足飛びに、最も進歩的に認めたということになった。前代未聞の大改革になったのだ。このオチが大変鮮やかで予想がつかず、やられた。
最近の映画は多様性が多用され過ぎではないかと思っていたが、この映画に関しては必然性が桁違いだ。また、今だから作られた映画だと思う。
脚本が素晴らしく、アカデミー賞脚色賞は納得。
この映画はカトリック信者にはどのように映るのだろう、大きく物議を醸すことにならないんだろうか、上映禁止になったり、映画関係者が脅されたり脅迫されたりはないのか。または信者のみなさん、すでに教会内部のありさまなど知っていて、今更問題にするほどでもないんでしょうか。
レイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、とほぼおじいさんのおじさん俳優ががっつりぶつかり合い、その隙間を縫って、カルロス・ディエスがするすると持っていく。
いやもう、おじさん俳優たちの、その年齢でないと出せない加齢臭がむんむん臭ってきそうな(誉めてます)演技も眼福でした。
イザベラ・ロッセリーニは良い役だけどさほどのインパクトはなく、オスカーノミネートはサービスでは、と思ってしまった。
玉座の審判に向かい絡み合う策謀。聖職者たちのエゴはいつしかむき出しに…喝采!これは珠玉のミステリー映画だ!
日本でも最近は「ローマ法王」ではなく「教皇」と呼ぶようですね。
「教皇選挙」=「コンクラーヴェ」。邦題は原題の直訳ですが、シンプルで秀逸。いいじゃないか……。
物語の幕開けは、あまりにも静かで厳か。眠気を誘うほどの静寂が支配する——。
だがしかし、次第に、ゆっくりと動き出す策謀。
赤い礼服が意味するのは「信仰のために命を捧げる覚悟」だと言うが、それは果たして神への忠誠か、それとも権威への執着か……?
物語が進むにつれ、絡み合う思惑はむき出しになり、そこからラストまで一気に集中モードに突入!
波乱あり、問題のクリアランス(解決)があり、ラストの選択も含めて満足度は極めて高い。
まるで海外の秀作ミステリー小説を読み終えたときのような、濃厚な読後感が味わえた。
有力な後継者たち、枢機卿それぞれの思惑が錯綜するが、観客が迷わぬよう巧みに整理されているのも見事だ。
本作の脚本を手がけたピーター・ストローハンに俄然興味が湧いた。機会があれば、『裏切りのサーカス』も観てみたい。
レイフ・ファインズ演じるローレンス枢機卿。その瞳が見据えた先には、「最後の審判」の壁画があったのだろうか。
重厚な演技に圧倒される。
他の役者たちの演技も申し分なく、どっしりと揺るぎない安定したパフォーマンスが物語を支えていた。
キリスト教に詳しくなくても、純粋に映画として面白い。
もし「ミステリー映画史」というものがあるならば、本作はまさにカトリック(=普遍)な立ち位置に据えられ、長く語り継がれていくことだろう。
修道婦は見ていた
現教皇の状態の今、この作品を観るタイムリーに驚愕しました。正に権謀術数の根競べでした。記憶に残ったセリフ、「ここに居る者、潔白は居ない」そうですね、潔白の戦いでは無く、不純の戦いですね。あの人、出てきた時からゲイだと思ってましたが、驚きました。感性では無く身体でしたか。主人公と同じ衝撃を持ちました。最初から最後迄緊迫感ありました。
1番相応しくない、と勝手に思っていた人物
「相応しくない」なんてぬるい表現じゃない、「あり得ない」と表現した方が正しい。
事前に「ラストに驚く」との情報を得ていたので、ある程度「驚く」パターンを予想したりして観に行ったのだが、それすらも手玉に取られたような気分だ。
女性では枢機卿にもなれない「閉じた男社会」の教会という組織で、染色体的に女性と見做される教皇が誕生するなど、あり得ないと「確信」していたから。
しかし確信ほど危ういものはない。確信とは思い込みであり、思い込みは可能性の芽を潰す。認識を曇らせる。本質から遠ざかり、隘路へと追い込まれていく。
常に疑念とともにある教皇を求め、これ以上ない適任者を戴いたラストは天晴としか言いようがない。
オープニング、レイフ・ファインズ演じるローレンス枢機卿が歩いていく姿のバックショットが続くのだが、歩くローレンスの荒い息遣いが推測を掻き立てる。不安か、怒りか、恐れか。
否応なく高まる緊張感が心地良い。この時点でサスペンスとして最高、という予感が湧き上がってくるのがまた良い。
コンクラーベを取り仕切る、という立場である首席枢機卿のローレンスが探偵のような役回りとなっている。もちろん事件が起こるわけではないのだが、協会の頂点である教皇に相応しい人物が選出されるよう、慎重に不穏な要素を調査していくローレンス枢機卿の苦労がしのばれる。
一方で、キリスト教徒裏技「告解」を利用し、情報を集めるしたたかな一面もあり、組織を仕切る手腕に関して言えばローレンスは抜群に秀でているだろうことも伺える。
ローレンスが表の目立ったコンクラーベを取り仕切るのと同様、裏方としてこの一大事を仕切っているのがシスター・アグネス(イザベラ・ロッセリーニ)である。
同じ神に仕える身でありながら、シスターたちは決して表舞台に立つことはない。描かれないが、枢機卿たちが広場に捨てた煙草の吸い殻を片付けたり、ベッドメイキングをしたり、コンクラーベだけではなく日々の教会運営に必要な「再生産労働」を常に引き受けている彼女たちをまとめている。
教会だけじゃなく、日本の一般企業なんかでもよく見る光景だなぁと思ったのは、アデイエミ枢機卿とのトラブルで泣きじゃくるシスターを慰めるアグネスの姿だ。
「女のことは女同士で」みたいな丸投げを、アグネスはずっと引き受けてきたんだろうなと思う。選挙にとって大事なことだから、という理由こそあれ、ローレンスがシスターの話を聞きたい、と申し出たこと自体、結構珍しい出来事なんじゃない?
このコンクラーベは女性を「過去の過ち」という形で排除した者が退場し、女性からの告発という形で排除された者が退場し、最後に「女性の部分を切り離すことを思い留まった」者が教皇に選ばれた。
思えば、すぐ側にいるのにまるで存在していないかのように扱われるシスターたちに、感謝の祈りを捧げたのはベニテス枢機卿だけだった。
ベニテス枢機卿の食前の祈りにハッとさせられたのはきっと私だけでなく、あの場にいた枢機卿の中にも「教皇に相応しいのはベニテス枢機卿だ」と感じた者がいたのだろう。最初の得票はそう感じた何名かの枢機卿によるものなのだと思う。
「神が私をそう創られたのだから、それを受け入れなくては」
ベニテスはそう言って微笑んだが、それは世界も同じた。私は一神教徒ではないが、神がこの世界を創られたのだから、言語の違いも、身体の差異も、ありとあらゆる多様性が神の御心であり、御業であるというベニテスの言葉に雷に打たれたような衝撃と納得を感じた。
私が枢機卿なら間違いなくベニテスに投票する。それはベニテスの言葉の奥深さと、ベニテス自身が困難を乗り越え苦しみの中にある人々に手を差し伸べ続けた純粋さを否が応にも感じさせられたからだ。
ここまでストーリーにばかり触れてきたが、映像表現も見事。特にローレンスが自身の名前を書いて投票した時、天井近くの壁が外のテロによって落ちてくる構図は絵画のような荘厳さを感じた。
同時に神からの「違う、そうじゃなーい!」という叱咤のようでもあり、神ツッコミ激しいな、と感じたものである。
紛糾する枢機卿たちの言い争いに終止符を打った上段の席に座るベニテスと、最下段からベニテスを見上げるローレンスの姿も宗教画として残しておきたい素晴らしいショットだ。題するなら「新教皇誕生を目の当たりにするローレンス」だろうか。
美しい映像と、重厚なサスペンス。そしてレイフ・ファインズの静かな演技。見応えしかない傑作であった。
神の子は、前教皇により、選ばれていた‼️
誰でも良くなったような?!ラストの展開でしたね。
いいえ、違いました。
最後に選ばれた辺境を布教していた枢機卿こそ、
神に選ばれし真の教皇・・・でした。
バチカン市国という世界一小さい国の国王にして、
全世界14億人のカトリック教徒のTOP
ローマ教皇が亡くなった。
そして世界各地から呼ばれた108人の枢機卿の中で、
何回も選挙(コンクラーベ)をして
3分の2以上の票を集めた枢機卿が次期ローマ教皇に選ばれる。
弦楽合奏の荘厳な音楽(ローレンスの内面を活写する)
システィーナ礼拝堂を作ったセットや天井画の素晴らしさ。
暁光でございます。
汚い権力闘争や足の引っ張り合い、裏工作・・・の末に、
正しい選択が成される映画でした。
ラストの30分前くらいで感じたことは、
「そして誰もいなくなった」という失望。
教皇に相応しい枢機卿はもはや誰もいないのではあるまいか?
しかしダークホースがいたのでした。
紆余曲折・・・
教皇の早晩の死を予測したひとりの有力な候補の筆頭の
トランブレ枢機卿は、
早々と手を打っておく。
それが最初に失格したアフリカ系のアデイエミ枢機卿。
彼の30年前のセックススキャンダルを、知った保守派の
トランブレ(ジョン・リスゴー)は、先を見越して手を打つ。
それはアデイエミ枢機卿が30歳の時に19歳のシスターを
おそらく不同意のセックスで妊娠させて、その子供は、
母親シスタターから引き離されてどこかで成人している。
そのシスターをコンクラーベの夕食の場に給仕人の一人として
呼び寄せていたのがトランブレ。
今回亡くなった教皇のダイイングメッセージとも取れる
一つの事実。
教皇がトランブレ枢機卿を嫌った理由が明らかになる。
それはトランブレが票のの買収を裏付ける銀行の出入金の
資料だったのだ。
セックススキャンダルの暴露で足を引っ張り、
買収で票の山積みを図る。
コンクラーベの管理人責任者のローレンス筆頭枢機卿
(レイフ・ファインズ)は、教皇不適任者をバッタバッタと
排除していく。
108人の枢機卿の宿泊所の責任者はシスターのアグネス
(イザベラ・ロッセリーニ)
アグネスはパソコンにも長けて有能です。
イザベラ・ロッセリーニと言えばイングリット・バーグマンの3女
(実の娘です)
久しぶりに拝見しました。
私が思い出すローマ法王と言えば、
ヨハネ・パウロ2世(在位1978年~2005年)です。
世界中を股にかけて祝福に訪れ、日本にいらした時(1981年)の優しい
温かいカリスマ性が思い出されます。
現在のフランシスコ教皇は危篤状態ですので、実際のコンクラーベも、
間近に見られそうなんですって。
候補者を次々と蹴落としたのも虚しいことでしたね。
ローレンスの胸の内も満足感とは、ほど遠かったのでは。
ただ現実では、現教皇フランシスコ教皇は、リベラルな改革派で、
①同性婚に賛成、
②ガザ攻撃にNO‼️(イスラエルを非難)
③女性を重用
④環境破壊に反対
⑤移民や難民問題に理解
とても素晴らしいかたです。
敵も多いそうですので、
次のローマ教皇により、相当に変わりそうです。
(現在は何の発信も出来ずですし、)
バチカンは神父の性加害の賠償で危機的財政だとか。
ローレンスならずとも、頭が痛いですね。
新しい教皇には、バチカンの立て直しと復権を望みたいものです、
(関係はないですけど・・・)
(その存在で世界を導く教皇であれ‼️)
前情報全くなしで観た方がいい。
主要キャストと「どうやら教皇選挙が行われるらしい」、くらいの前情報で観た。その程度の知識で観た方が、面白いんじゃないかと思う。
以下、そういう意味ではかなりのネタバレ。
最近まれにみる、ラストの大どんでん返しだった。
正確には、大どんでん返しがいくつか続いた後、まさかの超絶大どんでん返し!!
全然予測も期待もしていなかったので、最後のデカいのに度肝を抜かれた。
これ、10年前だったら作られていないかもなぁ。
「多様性」という言葉が浸透して、まだ10年くらいのものでしょう。
ちらちら「多様性」ってワードは出てくるんだけど、ここにこうやって繋がるか!!っていう、想定外の驚き。
教皇選挙で隔離中だから、探ってる情報が、小出し小出しにしか分からないもどかしさも上手い!!
カブールから来た新司祭が、なかなかいいスパイスで、ハッとさせられるようなことを訥々と話してきて、またこれがボディブローのようにじわじわ効いてきて、存在感を増して来る。
この辺の演出もとても面白い。
で、教皇の選挙なのに、本当にみんな自分のことしか考えてなくて、俗っぽいことこの上ない。
「戦争だ!」とか「戦う!!」とか言い出す奴もいるし、本末転倒。
この滑稽さの描写も風刺が効いてて、力加減が素晴らしい。
陰謀渦巻く教皇選挙。
権力欲って、逃れられないもんなんかな。
全て、前教皇はお見通しだったのだ。
まるで、ローレンス(レイフ・ファインズ)に課された、最後の謎解き、みたいだった。
今年のアカデミー賞を賑わせた作品の中でも、かなりのクオリティ。
「ANORA」も大好きな作品だけど、映画としての質はこちらの方が高いかなぁ。
娯楽性に富んでいるのに格式高く、親しみのない世界なのに、情緒面では人間臭くて、親しみ深い。
サスペンス性たっぷりで、ハッとさせられる教訓に富んでいて、本当に濃密な時間を過ごさせてもらった。
聖職者の人間臭さ
聖職者の人間臭さがあぶり出される。「はい、やり直し!」の繰り返しでスラップスティック的グルーヴがアンプリファイされていくのがよい。オチも面白かったし、その直前の「行っちゃうかも??」なレイフ・ファインズの表情もさすがだった。/システィーナ礼拝堂、そんなふうにしていいんだ!
キリスト教的ポリコレ世界を知るには良い標本
今年に入ってアニメ映画しか見てないなと思って重厚な人間ドラマを見てみようかと予備知識無しで見た。
アカデミー賞ということで平日だったが人が多かった。老若男女大勢いてほぼ満席だったのでは。
役者の演技は良かったし、あまり見ることも無いローマ法王の選挙コンクラーベを映像で描いて見せているし、で、映像資料的な価値はあったように思う。
まあ、逆に言うと、それくらいしかなかったともいえるが。ストーリー展開が殆ど予想通りに進んでいって、なんの感動もなかったが、唯一驚いたのが最後の投票まえの爆発。まさか、武装したテロリストが乗り込んでくるようなバイオレンス映画だったのか? と思ったがそんなことは無かった。
教皇の有力者としてあげられる人物が、ポリコレ的順位付けになっているようだ、というと言い過ぎだろうか。
最後も別に驚きもしなかった。そうきましたか、という感じ。今現在のアカデミー賞でどんな作品だと評価されるのかが良く分かる映画だった。
それにしても、聖書に黄色人種の東洋人など登場しないから、欧米では黄色人種は差別以前に存在しない扱いという言い方をするものを見たりしたこともあるが、この映画はまさにそうだった。東洋人の枢機卿って存在しないのか、とネットで検索してしまった。そんなことはないようだが、この映画でそれらしい人が映ったのはほんの数秒じゃないだろうか。
もしかすると、本音を先に言ってしまえば、後に出してきたものが本音扱いになって逆に隠せるなんてことを考えて作られているのかもしれない、という、うがった見方もしたみたくなったが、それだとしても物語としては面白くは無かった。
ここ何回か見た映画で何度も言っているが、映像と雰囲気は良かった。それだけでも見て損はしなかったと思いたい。
アンマッチの美しさ
面白かった。「コンクラーベ」のことをリアルではじめて知った時、日本語の「根くらべ」に似てるし、やってることも根くらべっぽいな~、おもしろ! って思ったので、その詳細がわかるというのにテンションあがった。
ストーリーも面白いのだが、映像が本当に美麗で、すべてのシーンが、まるでセンスの良い絵ハガキを見てるようだった。整理されてシンプルな赤、白、緑、黄色のコントラスト、幾何学的な構図、静謐な空気感…。良かった! 大きな画面で鑑賞するのが良いと思う。
聖域におけるドロドロした権力闘争なんだけど、聖職者どうしの権力闘争というところで、彼らが人間的な悩みや信仰心に悩んでいるところが面白い。醜さと神聖さのアンマッチ具合が、バチカンの古めかしい儀式や建物の中に、スマホやパソコンや焼却用の機械パネルみたいなものがあるアンマッチと重なってみえる。
また、「伝統・保守・男尊女卑・排他性」VS「革新・自由・多様性・寛容」の対立でストーリーが進行することからも、あらゆるところにアンマッチが顔を出す。
最後は意外な結末になり、驚いた。
個人の勝手な解釈かもしれないがローレンスとベニテスの関係に対して、洗礼者ヨハネとイエスキリストの関係を連想した。
洗礼者ヨハネは、新約聖書においてイエス・キリストの到来を予言し、彼に道を譲る存在として描かれる。ローレンスは、コンクラーベを取り仕切る立場でありながら、最終的に彼のために道を開く役割を果たす。ローレンス自身が「ヨハネ」という教皇名を選ぼうとしていたことは、この解釈を裏付ける。
イエスは、ユダヤ教の伝統的な価値観を超え、罪人や社会の周縁にいる人々を受け入れる新しい宗教的ビジョンを提示した。ベニテスは インターセックスというアイデンティティを持ちながらも、教皇という伝統的な地位に就くことで、カトリック教会の未来に新たな可能性をもたらした。彼の存在自体が、従来の教会の枠組みを超えた革新を象徴している。
また、イエスが「神の子」でありながらも人間としての苦しみを経験したように、ベニテスも自身の性自認に関する苦悩を抱えながら、それを乗り越えて選ばれる存在となっている。
新約聖書では、洗礼者ヨハネがイエスに洗礼を授ける場面があり、それがイエスの公的な使命の始まりを象徴する。映画では、ローレンスがベニテスを最終的に受け入れ、彼が教皇になることを承認する場面がある。このとき、旧教皇がベニテスのインターセックスのことを知ったうえで枢機卿に任命していることをローレンスは確認している。この構図は、ヨハネがイエスを認め、「彼こそが選ばれた者である」と宣言する流れと似ている。ローレンスー洗礼者ヨハネ、ベニテスーイエス、旧教皇ー父なる神、という構図になっているように見える。
この映画は観る者によっていろいろな感じ方を許容する。そこが面白い。
枢機卿の息づかいを感じる。そして、最後に知る本当の真実。
雰囲気、静けさや空気感を非常に大事にした演出でした。
役者の息づかいをフルに使って、感情表現をするのは、なかなか珍しい気がします。
最初、途中、最後の息づかいの違いとか、本当によく作ってます。
そして脚本。
色々なところに、伏線がありましたが、これは、予想できなかった・・・。
途中のアクシデントと同様、斜め45度の高いところから突然、ふってくるような感覚。
この脚本が賞賛される理由も、昨今の事情から、なんとなく分かる気がします。
後から、思い返すと、
前の方が運ばれるシーンが長かった。
途中、眼をひらいた幻影が一瞬出たり、我々に存在を意識させていた。
なぜ、彼は辞めることを許されず、残されたのか、
なぜ、彼はローマに呼び出す相談をされたのか、
なぜ、あの方は、ずっと秘密裏にされたのか、
こんなところを考えると、語られずとも、事実が見えてくる気がします。
私がコンクラーベに参加したら、きっと、同じように票を入れます。
これが、計算されたチェス盤の上だと、気がついてもね。
全てはポープの掌の上
見事なまでに渋いキャストしか出てこないのに
セットと衣装と小道具の豪華さに加えて
色彩設計と構図が美し過ぎてため息しか出ない。
オレって枯れ専だっけ?って思うくらい出てくるジジイが全部オシャレでカッコ良くて釘付けだし、単調になりがちな室内劇のストーリーもBGMやイベントで飽きさせないような工夫はされているんだけど…寝ちゃう人は寝ちゃうかも。でも寝息かと思ったら劇中の息遣いだったりするし。
トランプ大統領のポリコレ全廃宣言前の映画界の政治的文化的トレンドをこれでもかってくらい詰め込んであるストーリーは、この地位まで上り詰める聖職者が清廉潔白であるわけがないという観客の期待通り、有力候補が失脚していく様子をイヒヒと楽しむ映画なのかと思ったり。
ストーリーを回していくローレンス枢機卿は「教皇は私にこの選挙を仕切らせたかった」と薄々気づいてはいたけど、このコンクラーベを陰で操っていたのは間違いなく亡くなったローマ教皇。全ての伏線を貼り巡らせて、じゃあローレンス頼んだよって。お前のことだ、規則を破って寝室だって漁るだろ?あとお前は教皇になろうなんて野心は無いだろ?ってポープの千里眼が過ぎるけど、一瞬ジョン(まあイギリス人だしね)って教皇名考えてたりして危ういバランスは最後まで続くわね。
................こっからネタバレ?.................
教皇名といえばイノケンティウスだけど11世以外はそこらの王様より権力持ってて好戦的でゴミみたいな教皇が多いもんなあ。なんでこの名前を選んだか?まあ調べてみてよ面白いから。
あとやっぱ神様はいるんだよ的な描写は、唯一神よりも明らかに自然神っぽかったわね。
それではハバナイスムービー!
ちょい眠い
ネタバレはないと思うけど
考え方次第。
システィーナ礼拝堂は
好みではないけど
壁画の青を間近に見れてよかった
特に追い払われもしなかったところも、
ありがたかったな。
ラピスラズリの絵の具で書かれたとか?
ゴツゴツしてるような青だったかな
とにかく青を見つめてると
昔の人の気持ちが、見えそうな気がした。
昔からの儀式を見れたし
人の営みなんだなと思う。
神なんてわからないけど
ナンパされたいと思ってたら
イタリアのぽっちゃりした
少年が、ベーネと言ってくれたから
ナンパしてくれるんだと思って
僕の勘違いだと思うけど
絆ができたんだと思う。
少年が大きくなって、良い人を結婚してくれたら良いな。
そんなんで良いなと思った。
彼との純粋な気持ちは、女性とは難しい
この気持ちを、簡単には共有できない。
君の笑顔は変わらないのに。
多分、僕が弱いからだと思う。
体を傷つけないところは共感できた。
僕も
おじちゃん、おばあちゃんから
もらった体をあたるなと言われて育ったから
仕事に支障がでた、多汗症も
手術は勧められても、拒否したし。
ただ、
中絶は女性に委ねてと、個人的には思ってる派
イタリアの装飾は
日本にない感性なので、毎回すごいなと思う。
そんな指輪あるんだとか。
見てて楽しい。
穢れたバチカンを‼️❓無難に‼️❓処理した最低のアカデミー賞の脚本賞の記念碑‼️
あゝ、バチカンの秘部は、少年を性加害したことにあるのに、現実を避けて、こんな茶番劇、これがアカデミー賞の脚本なら蝕まれている、ウィンウィンなんでしょうねハリウッドらしい見届けましたよ、両生具有の教皇なんてなんの衝撃なんでしょう、最低の映画を観て、最高の評価をしました、たまたま地下鉄サリンの報道ビデオの再現を見て二千年くらいの宗教は危険である事くらい承知してますよ、ありがとうございます😊😭ー
これは選挙という名の戦争‼️
それがカトリック教会のトップであるローマ教皇を選出する選挙であっても、何らフツーの選挙戦と変わりません‼️裏では恐ろしい人間たちの金と欲、陰謀、差別、スキャンダル、妬みや嫉妬といった人間の感情、闇が蔓延しています‼️映画は有力候補者たちの人間ドラマを挟みながらの数回の投票によって構成され、それまで有力とされていた者が、スキャンダルなどでアッという間に転落していく様が、実力派俳優陣の素晴らしい演技によって展開‼️ほんとにゾクゾクさせられるし、身の毛がよだちます‼️やっぱりレイフ・ファインズ、ジョン・リスゴー、スタンリー・トゥッチ、イザベラ・ロッセリーニは上手いですね‼️そして衝撃のラスト‼️ここでも多様性‼️レイフ・ファインズへの感情移入、凄まじいです‼️
それは新たなるカトリック教会の聖なる扉を開く鍵となるのか
偶然にも現教皇フランシスコの容体が危ぶまれている時期でもあり、また25年ごとに行われるカトリックの「聖年」にも当たる時期に公開されるというとてもタイムリーな作品。
本作はミステリー作品としてのその娯楽性、そして社会派作品としてのメッセージ性に富んだ内容で最初から最後まで緊張感が途切れない作品に仕上がっている。
教皇の急逝により使徒座空位の状態となったバチカンではコンクラーベ開催のために世界中から枢機卿が集結する。100人余りの枢機卿たちの互選による選挙の運営を任せられた首席枢機卿のローレンスは次期教皇としてリベラル派のベリーニを推すのだが、陰謀渦巻く教皇庁ではコンクラーベの行方は二転三転する。選挙の行方の鍵を握るのはいったい誰か。
死去した教皇が秘密裏に枢機卿に任命していたメキシコ人のベニテスは謎多き人物。それに加えて教皇の後釜を虎視眈々と狙うトランブレ、黒人初の教皇かと目されるアディエミ、過激な排他的思想を持つ保守派のテデスコ、リベラル派の人格者だが消極的なベリーニなどなど、有力候補たちの誰が選ばれるのかその行方がスリリングに描かれる。
当然候補者たちは立候補制ではなく互選で選ばれるため教皇の座を望まないローレンスにも票が入る。その票を入れたのがベニテスであるという。ローレンスは困惑するが、一度目の選挙では得票数が誰も届かないため決着はつかない。
有力候補の一人アディエミが食堂でシスターとトラブルを起こすのを皆が目撃する。彼は過去に戒律を破り彼女と関係を持ち子供まで設けていたのだ。そのうわさが流れると彼は有力候補からたちまち脱落する。それを仕組んだのはトランブレだった。その上トランブレの選挙買収の事実まで明らかとなる。ベリーニに見切りをつけたローレンスたちはテデスコを教皇にするくらいならトランブレで妥協するしかないと考えていただけに彼のスキャンダルによる脱落は大きかった。
しかし、意外なダークホースが現れる。閉ざされた教皇庁の外では過激派の爆弾テロが各地で起きていてこのコンクラーベがなされているシスティーナ礼拝堂にもその余波が生じ、爆発で窓が吹き飛ばされてしまう。
その有様を見たテデスコはこれを機会とばかりに大演説をぶつ。リベラル派の相対主義がこのような事態を招いたと、今こそ異教徒を排斥するために戦うべきだと。
危うく彼の思惑通りにその場が流されようとしたときにベニテスが口を開く。戦うべき敵とは誰なのか、戦うべき敵とは自分自身の中にある他者を憎むという心を言うのではないかと。
戦火にさらされた地で長く布教活動を行ってきた彼の説く言葉に皆が諭されテデスコの思惑は見事に打ち砕かれる。そうして選ばれる新教皇。しかし彼にはやはり秘密があった。
神の代理人とも呼ばれるカトリック教会の最高指導者でもありバチカンという国家の国家元首でもある教皇を選ぶ選挙を描いた本作。そこで描かれる様はけして聖なるものではなく俗世間のものと何ら変わらぬ陰謀や駆け引きに満ち溢れたものだった。
金で票を買おうとする者、スキャンダルで政敵を陥れようとする者、不安を煽り立てて敵を作り自分に支持を集めようとする者。これはまさに現在の世界の縮図でもある。特にアメリカや欧州諸国で近年みられる政治状況がそのままこの教皇選挙に反映されていて実に社会風刺のきいた作品となっている。
ミステリーとしてもよくできていて、特に作品前半から傍観者然としていたローレンスがその意思に反して選ばれるのではないかと観客を誘導する。
教皇の死に涙するローレンスの姿から彼らが特別な関係にあったのではないかと思わせる。そして教皇が秘密裏に枢機卿に任命していたベニテスによる彼への投票。有力候補のアディエミのスキャンダルを仕組んだ黒幕が教皇であったことなどからすべては死んだ教皇によりローレンスの新教皇選出が仕組まれていたのではと観客に思わせてのラストのどんでん返し。
しかしこの結末には納得させられた。前半の司教による説教でシスターたちへの見え透いたフォローに対して皮肉な笑みを浮かべるシスターアグネスの姿。同じく中盤での見えない存在の我々でも神は目と耳を与えてくださったという彼女の言葉。カトリックで長年あからさまになされてきた女性差別が伏線として描かれている。
そしてこれはたまたまだろうが昨年現教皇のフランシスコが大学の抗議でジェンダー平等を否定するような発言も物議をかもした。
それらを加味すれば最終的に性別にとらわれない教皇の誕生というのも予測できないことではなかったのかもしれない。
2000年の歴史を持つカトリック教会、幾多の試練や改革を経てもなお古い体質は抜けきれない。本作で描かれた黒人の枢機卿の存在もブラックライブズマターを経て初めて認められた。女性など何年教会に仕えても聖職者にはなれない。女性の地位向上を目指してきたフランシスコ教皇でさえも前述の通り凝り固まった考えがいまだ抜けきれない。
自由と平等がキリスト教の教えであるはずが家父長制的な思想からはいまだ脱却できないでいる。
テロによる爆発で吹き飛ばされた窓からシスティーナ礼拝堂の壁面に光が差すシーンが印象的だった。真の自由と平等の光がこのカトリック教会に差す日が来るのはまだまだ遠い先のように思えた。それがテロのような暴力によらずに。
現実にはベニテスのようなインターセックスの人間が選ばれることはまだまだないだろう。本作では選挙が終了した後に彼の秘密が判明するがそれが選挙が決する前なら当然ローレンスにより候補から脱落させられたであろう。
数人のシスターたちが開かれた扉から駆け出す姿を窓から見下ろすローレンスのシーンで作品は終わる。25年周期で行われる「聖年」の儀式では教皇が普段は閉ざされた聖なる扉を開くのだという。
それにより信者たちは免償を受け、奴隷は解放されるという聖年の儀式。カトリックにおいて女性やマイノリティが真に解放されるのはいつの日か。
ちなみに教皇に選ばれたベニテスが教皇名に選んだインノケンティウスという名前に引っかかった。歴代教皇に多い名ではあるがその大半が悪名高い教皇として知られる。
インノケンティウス4世は十字軍の遠征を繰り返し、果ては当初の聖地奪還という目的を見失い侵略戦争にまで発展してしまった。また周囲の意に介さない者たちを次々と破門し教皇庁の権威を最大にした人間でもある。
またインノケンティウス8世などは異端審問、魔女狩りを大きくすすめた人物でもある。ベニテスがこの名を語った時にローレンスがけげんな表情を一瞬浮かべたのもわかる気がする。
本作はインターセックスの人間が教皇に選出されたという単にポリコレを意識した作品というだけでなく、やはりいまだ世界に大きな影響力を持つ教皇選挙の危うさをも描いているように感じた。
アメリカという世界の超大国においてもキリスト教ロビーの影響力は絶大だ。そんな世界に多大な影響力を持つカトリック教会の教皇が密室で選ばれてることの恐怖を少なからず感じさせもした。
【旧弊的な”コンクラーベ”(教皇選挙)に、急逝した教皇が密かに仕組んでいた事。”今作は、カトリック教会でも多様性を認めるべきであるという強いメッセージがシニカルに描かれた作品なのである。】
<完全にネタバレしているので、鑑賞後にお読みください。>
■ある日、カトリック教会のトップにしてバチカン市国の国家元首であるローマ教皇が、心臓発作のため突如として急死してしまう。
教皇死去の悲しみに暮れる暇もなく、イギリス出身でローマ教皇庁首席枢機卿を務めるトマス・ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は枢機卿団を招集し、次のローマ教皇を選出する教皇選挙(コンクラーヴェ)を執行することとなった。
108人の枢機卿がコンクラーべが行われるシスティーナ礼拝堂に集まる。
1.リベラル派最先鋒のベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ)
2.穏健保守派のトランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)
3.初のアフリカ系教皇の座を狙うアデイエミ枢機卿(ルシアン・ムサマティ)
4.保守派にして伝統主義者のテデスコ枢機卿(カルロス・ディエス)
の4人が有力視される中、メキシコ出身で亡くなった教皇によって新たに任命されたばかりの、命の危険があるアフガニスタン・カブール教区のベニテス枢機卿(カルロス・ディエス)が開始直前に到着するのである。【亡き教皇に、急遽呼ばれた枢機卿として・・。】
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤は、厳粛な雰囲気の中投票が行われて行くが、誰も2/3以上の得票数は得られない。何度も繰り返される投票の合間に、有力候補間では様々な根回しが行われる。投票が終わる度に上がり続ける黒い煙・・。
ー 厳粛な雰囲気と、劇伴も無く、やや単調なので前の席のおとっつあんが、鼾をかき始める。軽ーく頭を突いて起こしてから鑑賞続行する。-
・そして、徐々に明らかになるトップの得票だったアデイエミ枢機卿が、昔に教区の若きシスターと子をなしていた事。そして、そのシスターがコンクラーベ会場で食事係として働いていた事から、アデイエミ枢機卿が激昂し”陰謀だ!”と叫び出て行き、彼を糾弾していたそのシスターは泣いているのである。
ー 驚く枢機卿たちだが、トマス・ローレンス枢機卿は険しい顔になる。そして、アデイエミ枢機卿を呼び出し真実を聞くとその通りだという。その後の投票でアデイエミ枢機卿の得票は大幅に下がるのである。-
・それを画策したのが穏健保守派のトランブレ枢機卿である事も、徐々に明らかになって行くのである。米国大統領選も真っ青の、裏駆け引きである。
本命視されていた、ベリーニ枢機卿の票は伸びず、彼は盟友トマス・ローレンス枢機卿にも、苛立ちの言葉を掛けてしまうのである。
・到頭、トマス・ローレンス枢機卿は、蝋で封をされた亡き教皇の部屋に入り、”或る書類”を見つけるのである。
■そこには、トランブレ枢機卿が他の枢機卿に渡した賄賂の額と受け取った枢機卿の名が記されていたのである。そこには、ベリーニ枢機卿の名もあるのである。
そして、次の投票時には、トマス・ローレンス枢機卿は、初めて自分の名を投票用紙に書くのである。その時に、外で爆弾が炸裂する音が響き渡るのである。
保守派にして伝統主義者のテデスコ枢機卿は、過激派を激しく糾弾するが、そこで初めてベニテス枢機卿は、自身が経験して来た戦争の恐ろしさを、述べるのである。更に彼は”私はここに初めて来たが・・。”と言い、自分が見聞きしてきた枢機卿たちの愚かしき行為を糾弾するのである。
<その言葉に反省しつつ、感銘を受けた枢機卿たちは、ベニテス枢機卿を新たなる教皇に選ぶのである。彼はその結果を受け入れ、”インノケンティウスと名乗る”と告げる。それと共に漸く上がる白い煙。
そして、彼はトマス・ローレンス枢機卿だけに、自分が子宮と卵巣を持っており、スイスでその除去手術をしようと思ったが、辞めた事を告げるのである。
今作は、カトリック教会でも多様性を認めるべきであるという強いメッセージがシニカルに描かれた作品なのである。>
鍵は絶対的な家父長制
カトリック信者じゃないし、馴染みもないからこそフラットに観れたかも。コンクラーベの仕組みとか絶対的な男性社会とか、とても勉強になるなーと思ってたらそれが鍵だったかー!!と思わせる展開。
序盤は次期教皇の候補が揃いも揃って小物でこんなのが世界的な宗教指導者になってしまうのか、、、?と絶望的な気持ちに。もうローレンスしかいないじゃんと思わせ、本人も半ば諦めたところでのどんでん返し。納得の結果ではあるけど演説ひとつで風向き変わるのはどうなの?いや、意外とカトリック教会も世俗的なようだし、こんなもんなのか、、、。と、思ってたらそうきたかー!
徹底的な男性社会で女はいるけど見えない、そんな世界をこう逆手に取ってくるとは思わなかった。
全て前教皇の計画通りにコンクラーベが行われていってたんだろうけど唯一で致命的な難点が性別だったんだろう。手術すれば良いとか傲慢じゃないか。性適合手術が神への冒涜とか言うつもりはさらさらないけど、強要するなら別。前教皇もまたカトリック教会という狭い世界で生きた人なんだなと思った。
本当に相応しい人が教皇に選ばれたとは思うけれどもその教皇名は何か意味あるの?と思わず後で調べてビックリ。意外と野心家ということかな?(ローレンスが考えてた教皇名も納得)
色んな社会の矛盾をカトリック教会を舞台に詰め込んであってむしろカトリック信者じゃないからこそ楽しめた。神の懐は広いんだけど狭めてるのは人間なんだという皮肉を感じた。
これぞ映画!最高のつくりあがり!!ラスト最高!!!
今年いちばん面白かったと言って過言ではない作品。現在No.1。
日本では(少なくとも私は)ピンとこないテーマだが、
教皇が亡くなったため、新教皇を選ぶための選挙「Conclave」に
世界中から候補の枢機卿が集い、選挙戦が展開される。
この選挙戦、アメリカ大統領選さながらの足の引っ張り合いで、
スキャンダルを暴き晒しまくるという、
人間の汚ったないところも見せまくる、まさに戦争状態。
その中でもConclaveを仕切る主人公ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)が
あまりにもカッコよく人間的にも魅力的なため応援してしまうのだが、、、
本人はあまり教皇になりたいという感じではない。
それも本当かどうかはわからない。なぜなら教皇名を考えていたりするから。
ライバルがどんどん落選していく中、
ローレンス枢機卿が選ばれるかと思いきや、、、
テデスコ枢機卿vsベニデス枢機卿の場面でのベニデスの言い放つセリフは
胸にグサグサ刺さるし、であるがゆえに形成逆転することは胸熱だった。
そこからさらに意外性のあるオチが待っているとは思ってもおらず、
実に驚かされたと同時に、最後の最後まで楽しむことができた。
まさに映画というフォーマットをつかったエンターテインメントとして
飽きることが一切なく、しかも最後の最後まで楽しめる仕上がりなのは
今年は本作がダントツだと思う。
俳優陣が素晴らしいが、レイフ・ファインズは群を抜いていた。
映像の色彩も目を見張る出来で、特に赤🟥が印象的につかわれいて、カッコよかった。
劇伴も演技&映像にマッチしていて、物語を盛り上げていたと思う。
レイフ・ファインズの息づかいが音響として効果的。
第97回アカデミー賞において脚色賞しか受賞できていないのが信じられないくらい
素晴らしい作品。
パンフレットも実におしゃれな出来でオススメ!!
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