教皇選挙のレビュー・感想・評価
全868件中、221~240件目を表示
教皇選挙を当事者目線で体感できる高質で重厚なサスペンス作品
全世界14億人の信徒を持つカトリック教会の頂点を決める教皇選挙の舞台裏を描いた作品。
ロバート・ハリスの小説『CONCLAVE』を原作とし、小説はベネディクト16世の選挙にも参加したラッツィンガー枢機卿の日記をもとにしている。
現実世界ではベールに包まれ、内部の人間しか知りえない教皇選挙の内情がリアルに描かれ、当事者目線で選挙を疑似体験できる作品となっている。
前教皇の死去によりバチカンのシスティーナ礼拝堂には世界各地から枢機卿が集められ、次期教皇を選出する教皇選挙が行われる。
教皇選挙を表す『コンクラーヴェ(Conclave)』はラテン語で『鍵のかかった(部屋)』を意味するが、文字通り選挙人である枢機卿団は次期教皇決定までバチカンのシスティーナ礼拝堂に閉じ込められ、外部との通信も完全に遮断される。
これは1268年に教皇選挙が紛糾し、3年近く空位が続いたことに怒った民衆が、教皇決定まで選挙人を会場に閉じ込めたことに端を発し、以来このシステムが確立され現在に至っている。
この映画には次期教皇を目指す6名の枢機卿が登場する。
ひとりはこの映画の主人公であり、前教皇から主席枢機卿を任され、野心もなく規律に厳格で清廉潔白だが、自信の信仰に疑念を持つローレンス。
前教皇と政治的な方向性が近く、多様性を尊重するリベラル派だが、人望に欠けるベリーニ。
同じく教皇に近い思想を持つリベラル派だが、汚職に手を染めるなど腹黒く野心家のトランブレ。
前教皇の方針を真っ向から否定する強硬保守でタカ派のテデスコ。
唯一の黒人で次期教皇の最有力候補だが、過去の不貞行為という爆弾を抱えており、排外主義的で保守派のアデイエミ。
出自に謎が多いものの、ぶれない信念を持ち、清廉潔白で信仰心が厚く、前教皇の計らいで秘密裡に枢機卿に任命されたベニテス。
選挙は世俗の政治さながら、教会の伝統を守ろうとする保守派と多様性に寛大なリベラル派という対立軸で進行していく。
『聖職者も生身の人間であり、理想の姿を追い求める者であって、理想の姿そのものではない』
聖職者とはいえ、そこはやはり人の子。候補者それぞれの思惑や陰謀が複雑に絡み合い、選挙戦が進むにつれ、候補者の汚職や過去の不貞問題が次々に明るみとなり、そのたびに選挙戦の勢力図は刻一刻と変化していく。
どちらに転ぶか分からない混乱の行方を固唾を飲んで見守るスリリングな展開が続き、選挙は次第に泥沼化していく。
『選挙は戦争じゃない!』『いや、戦争だ!』もはや聖職者の選挙とは思えないこんなやり取りがなされ、混乱は頂点を極める。そうして枢機卿団のイライラが頂点に達した時、ベニテス枢機卿がこう問いかける。
『みなさん何と戦っているのです?』
そこでハッと我に返る枢機卿たち。人は価値観が対立したとき、つい戦闘態勢を取ってしまいがち。我々世俗の世界でも保守と革新、多様性と排他主義などあちこちで世論の分断が見られるようになった。
しかし、対立や分断からはなにも生まれない。『自分は何と戦っているのか?』そう自問し、戦いではなく、相手の主張と向き合うことでしか解決策は生まれない。映画は我々にそんなことを問いかけている気がした。
少し話が脱線したが、最終的に次期教皇に選ばれたのは、権力闘争とは終始距離を置き、信仰に忠実で高潔な魂を持つベニテス枢機卿だった。
彼は『インノケンティウス』という教皇名を名乗るが、この名は歴史上13名の教皇が名乗った教皇名であり、その語源は『純粋、無実、無害』を意味する『innocent』である。
厳しい環境のなかで人々を導き、信仰に忠実なベニテスに相応しい教皇名であり、紆余曲折ありながらも、混迷する現代の羊飼いに相応しい教皇が選ばれたといえる。
また、家父長制的な価値観を持つ(枢機卿は男性しかなれない)カトリック教において、ベニテスが男性にも女性にも分類されない身体的特徴を持つインターセックス(性分化疾患)という点も興味深い。
カトリック教会の役割とはイエスキリストの教えを守り、それを後世に受け継ぐことだが、そんな使命を帯びた組織の中にも様々な価値観があり、伝統をどこまで守り、どこまで変化を許すか、その両者のせめぎあいがカトリックの抱える葛藤でもあり、それが垣間見えた興味深い作品だった。
そして、この映画最大のミステリーは、この結末が前教皇に導かれたものではないかという謎である。
前教皇のチェス仲間だったベリーニ枢機卿は、前教皇を『常に8手先を読んでいる』と評し、その先見性や戦略性を評価している。
前教皇は生前から次の教皇選挙を見越し、枢機卿たちをチェスの駒のように動かして、ひとつの結論へと至るようさまざまな仕掛けを行っていたのではないか。
トランブレの汚職の証拠をベッド裏に残し、そのトランブレにはアディエミと不貞関係にあったシスターを召喚させ、ルールに厳格で疑い深いローレンスを主席枢機卿に任じ教皇選挙を仕切らせた。
ローレンスは前教皇の思惑通り、汚職や不貞行為の真相を次々と突き止め、知らず知らずのうちに対立候補を追い落としていく。
そして、前教皇が密かにキングの駒に定めていたのがベニテスであり、ローレンスは『8手先を読む』前教皇に導かれるようにしてベニテス勝利へのレールを敷いていた。
果たしてどこまでが前教皇の計画だったのか?そして、インターセックスであるベニテスは今後も秘密を隠したまま教皇であり続けられるのか?前教皇の亀はなにを暗喩しているのか?など、鑑賞後も残された謎にあれこれ思案を巡らし、余韻に浸れる素晴らしい作品だった。
赤と白と黒が織りなす極上の映像美
教皇選挙(コンクラーベ)というコアな題材を扱いながらも、現代社会が抱える人種や性別、果ては個人的な価値観といった問題を浮き彫りにし、真の多様性とは何かを観る者に問い掛ける大傑作。
最早、全てのシーンが絵画。
丁寧に作り込まれた美しい映像の数々に目を奪われっぱなしでした。
壁を背に映し出される黒い服の聖職者たち、白い傘を差した無数の人が噴水の周りを通る真上からのカット、赤い服に身を包み投票を待つ枢機卿たちなど。
赤と黒と白が織り成す映像の数々は何処を取っても息を呑むほど素晴らしいものばかりです。
当然、衣装や小道具、セットなども文句の付けようがありません。
赤を基調とした質感の良い衣装や豪華な装飾品は勿論、イタリアにあるチネチッタ・スタジオに再現されたバチカン内部のセットが素晴らしい事!
荘厳なシスティーナ礼拝堂や聖マルタの家など本物と見間違えるほど。
それこそ、絵画の中に入り込んでしまったかのような錯覚さえ味わえる作品でした。
そうした美しさの中で繰り広げられる教皇選挙(コンクラーベ)が更に観客の心を掴んできます。
主人公ローレンス枢機卿を演じたレイフ・ファインズの視点で展開される物語なので没入感が物凄いです。
枢機卿が抱える苦悩がいつしかこちらへと伝わり、「なんとしてもコンクラーベを円滑に終わらせたい」という気持ちで一杯になります。
秘密裏で行われる選挙で陰謀や策略が渦巻き、主人公ローレンスを更に追い詰めてくるので緊張感も半端ありませんでした。
ミステリ要素を内包しつつ、静かに展開される物語から目が離せなくなります。
そして待ち受ける衝撃的なラスト!
これほどまでに「多様性」という問題を扱った映画で溜飲の下がる作品はなかった気がします。
間違いなく見逃し厳禁の作品。
見終わった後に「確かな事など何一つない」事を痛感させられる傑作なので、映画館に足を運ぶ事をお勧めします。
理想と現実を生きる僕達と
基本的に娯楽にフルスロットルの映画を好む為、真面目系映画はあまり嗜まないのですが、そっち方面としては近年有数レベルで面白いです。
舞台は新しいカトリックのトップを選ぶ教皇選挙、教皇を選ぶ候補者兼選挙権を持つ枢機卿が集められます。
集められた枢機卿は、カトリックのトップクラスの人間だけあり、基本的に全員が善性で有能な人達で同じ信仰を持つ人達ですが、そんな人達でもスキャンダルや権力闘争の中で選挙を行っていくお話です
個人的には、前時代的なカトリックは好きでは無く、選挙モノということもあり、もっとギスギスした話を期待していたため、そういった意味では肩透かしとも言える内容でしたし、リアルのカトリックのスキャンダルや姿勢等を考えると、理想的過ぎるオチは反発したくなる人も多いとは思いますが、劇中のいくつかのスピーチはそれでも私の心には確かに響きました。
予想もつかない権力闘争劇
前教皇の思惑…ではないと思います
多くの人が「結局は前教皇の計画通り』という見方が多かったので、ちょっと違うと思うなぁと言う意味でレビュー投稿します。
ほぼ最初から最後まで人間くさい思惑に振り回されたコンクラーベ。キリスト教徒にとって、人間の技か神の技かは、そこに聖霊が臨んでいるかで決まります。キリスト教徒以外の人には非常に難しいこの概念は、いわゆる
三位一体のことで、父と子と聖霊、すなわち神様とイエス様と聖霊は全て同じものであると言う考え方。神様とイエス様はイメージしやすいけど、聖霊はわかりにくい。これは、神様の意思を直接人間に働きかける存在で、よく「神の息吹」と表現されます。風が吹くように私たちに意思が伝わると、そこには神の意思が反映されると言ったら良いでしょうか。
さて、生臭い人間の思惑が錯綜し、気の毒なローレンスは疲弊、リベラルすぎるベリーニは這い上がれず(リベラルというのは信仰とはかなり相性が悪いのです)、ほかの枢機卿も自滅していき、いったい聖霊の働きはいずこ?というカオスの中、皆考えあぐね、ついにペンが止まってしまうラストシーン。
半壊の礼拝堂から微かな風が吹き、皆の投票用紙を揺らす。見上げた先に筋のように入る光。そして突然皆が決意したように候補者を書き始める。
あれこそが聖霊が臨んだ瞬間であり、そこから先は神の意思が加わったのです。ちなみに雲間から現れるスジ状の光は「ヤコブの梯子」と呼ばれ、これも天と地をつなぐもの。つまり、もう前教皇の思惑など関係なく正しく完成されたコンクラーベになったのです。
たぶんローレンスは真実を知っても、選挙の結果を受け入れたでしょう。聖霊を直に感じたのだから。そして迷いのない静かな心で亀を池に戻す。
実際のカトリックがこの結果を是とするのかはわかりませんが(私はプロテスタントなので)少なくとも映画的に大団円だったと言えるでしょう。
息づかいで臨場感が‥
閉鎖的な空間でサスペンスフルな展開が続いて それなのに重苦しく暗く感じずに見つめ続けることができたのは舞台が静粛で美しいと感じたからでしょう
静かな気持ちで見守れたのは 主人公の首席枢機卿のことを 敬虔で純粋な聖職者と思うことができ、彼が亡くなった前ローマ法王を心から慕い、遺志に応えようとしていたからと思います そして、立場的に1番上の人間が「良い人」だったから安心感があったと思う
ずっと聞こえている息づかいから、緊張とか失望とか苦悶とか 心情が伝わってくる感じで臨場感がありました
聖域であっても所詮人間は人間、聖職者であるからには利己的な自分に一般人より葛藤はあるでしょうか
美術的にも堪能できたのと、主人公の枢機卿が綺麗な老人で面相が好きだったのも私には大きかったかな^^
新教皇に選出された人物が、不思議な風貌で 最後の表情には畏敬を覚えました
なにしろ、タイムリーな映画でした!
色々な見方ができる映画
同じ神を信仰していても、それぞれに思想が異なるから教皇選挙がこれだけ注目されるのだと改めて感じた。
途中から終盤にかけては疑惑が渦巻き、選挙管理者の心労が感じられる。
タイトルなし(ネタバレ)
ずっとうっすら感じていた違和感を2段階で浴びた感覚。それも1段階目はただの思い過ごしで本当の意味での真実は2段階目にちょっと油断した時にクリティカルに浴びせられた。「なんだ結局→いやでもなんか変→いやいやそんなことないはず→そんなはずない→嘘だやっぱり→驚愕」これだけ見ると2段階でない気がするけど、2段階ということにしておく。宗教に関してズブな素人でもなんとなく知っている観点でもとんでもない結末だったが、物語という点とこれが現実世界であっても私達が蚊帳の外でヤイヤイ問いただすべき問題ではない、そんな技量の問題ではないということだけはわかった。
おじさま達の権力争い?嫉妬心?欲望?何か出し抜こうとしている、探り合いの日々の中に突如なんの予兆もなく爆ぜる爆弾がローレンスだけでなくあの限られた世界の空気感そのものなのでは?
備忘録だけど、なんか途中まじで泣きそうになった(?)
人間の欲と良心を描いた作品
そもそも秘密に包まれたバチカンの世界。描写の細部がいちいち新鮮でした。
すごい古風な宮殿なのに最新のセキュリティーだったり、みんなスマホやタブレットは持ってたり。
冒頭の伝統的な死の儀式?から普通にカートに遺体を載せて拘束ベルトでガシガシに止めて運んだりして、「神の代理人」も容赦なく「死体」として扱われてるのが印象的でした。
そして何より、人間の欲望がじわじわあぶり出されていく感じがリアルに描かれてると思いました。
主役の枢機卿はおそらく能力も立場も教皇にふさわしい実力があるのに、最初は自分でなく仲間を一生懸命推します。そして邪魔になる候補者を使命感から次々排除することに成功。
そうしていくうちに、周りも自分もだんだん一番ふさわしいのは自分ではないか、、と野心が芽生えていくのです。その辺の描写がすごくリアルだなあと思いました。
けれどそんな彼が自分の虚栄心に負けたとき、天啓のようなテロ事件が起こります。
この事件をきっかけに、みんなもう一度心を改めてふさわしい人を選び出すのです。
(最初、枢機卿たちは黒い傘を持ってましたが、この事件のあと白い傘になりました。これは心がまっさらになった暗喩のような気がします。)
選ばれた教皇はこれまた意外な展開でしたが、その存在が奇跡的な人なので、私は納得しました。
人間だから、欲はある。でもそれを人間は克服できる。また、人智を越えた現象というのは、いつの時代でもあるのです。そこに神をみるかどうかなんでしょうね。面白かったです!
恐慌/浅挟
現実のコンクラーベも終わり時期を逃した感はあるが、新作に隙間ができたので鑑賞。
題材や雰囲気の割に薄い、というのが正直な印象。
まず、使用言語が口をあまり動かさないものなのに加えて、画面が暗く誰が喋ってるか分かりづらい。
服装もみんな同じなので、キャラの把握に苦労した。
開票結果のシーンでようやく整理がついたが、ああいう演出は早めに入れてほしい。
主題がどこにあるのかも判然としなかった。
様々な思惑が入り乱れる人間ドラマとしては、キャラの思想や背景などが表面的すぎる。
教皇になりたい者となりたくない者がいるが、まず教皇の実態を描いてくれないと。
現行制度に疑問を呈するほどの内容にも見えず、少なくとも粗筋にある“ミステリ”ではないし…
票の少ない者を弾いたりスピーチを挟んだりもなく、ただ投票を繰り返すやり方は単純に疑問。
こんなん裏で色々やりあって下さいと言ってるようなもんだ。
保守だのリベラルだのの前に、もっと見直すべきことがあるのではなかろうか。
スキャンダルの内容は、教義的にはアレなのかもだが一般的に見ればしょうもない。
人間やっぱりそんなもんよね、というありきたりな話に「聖職者でも」が加わっただけに見えた。
オチも両性具有というのは逆に半端に感じる。
前教皇は「8手先」を読んでたってことでしょうか。
確実に言えるのは、教皇への道が閉ざされてメソメソ泣くヤツは器じゃない、ってことかな。笑
あとタイトルの出し方はセンス無さすぎ。
コンクラーベは根比べ。
ローマ教皇が亡くなり新教皇を決める話。
新教皇を決める教皇選挙(コンクラーベ)に世界中から集まる候補者達、…選挙水面下で起こってる陰謀、スキャンダルを察し候補者でもあるが教皇にはなりたくないローレンスが不正を暴きながらも着々と候補に残っていくが…。
本作の感想から書くと私には全く合いませんでした。直感で私向きではないと思いスルーしてましたが、高評価、公開から約2ヶ月経っても上映本数多い、鑑賞客多いで気になり観に行ったけれど。
候補者も数名に絞られ残ったのは自分本位な奴が多いなと思うなか、まともなのはローレンスと彼、いやっ彼女くらいで…、ラストは納得、まぁこうなるとは思ってはいたものの、それ以前に候補者達の顔と名前が一致しなくて誰が誰だっけ?って感じでした。
本作の様なお堅い作品よりも学生のラブストーリー作品観てる方が性に合ってる。
全体評価高いなか低評価さ~せん(笑)
なるほどね
コンクラーベの内幕を描いた作品。シチュエーションドラマであり、ミステリーでもある。これは、舞台劇になり得ると思った。
コンクラーベのマネージメントに徹しようとしていたローレンス枢機卿が、段々その気になって来て、ついに投票用紙に自分の名前を書いてしまう。
そして、投票しようとした瞬間、神の怒りに触れたが如き轟音が響き渡り・・・(以下略)
最後に皮肉なドンデン返しがあり、ウンザリするようなトラブルを予感させて、映画は終わるのである。
高評価につられて。ミステリーとは感じなかった。
時事的にタイムリーだと複数の知人に勧められて視聴。
ミステリー・最後のどんでん返し、と謳われているが、あまりにも陳腐だなと感じてしまった。
時事的に注目されたなら分かるが、評価も高いので驚き。展開が読めてしまいすぎる。
末期がんで数日後すぐにまた教皇選挙、か
性転換手術の2択だなと最初から思っていた。
他の方も書いていたが、あの役どころに黒人を配置するセンスの無さに驚いた。
それでいてオチは時代の最先端ともいえる、むやみやたらなら女性活躍のゴリ押し。。
同じ女性として、「今まで見えないものとしてきた女性をトップに立たせてあげましたよ」と言わんばかりの展開には胸糞悪さすら感じた。
最後のナースの高笑いが嫌に耳に残っている。
映像美は圧巻。
静謐で極上なエンターテイメント
ネタバレしないように書きますが、宗教をモチーフにした映画らしく、静謐な空気感の中で、主役のフローレンス枢機卿のため息にも似た呼吸音が響きつつ物語は進行します。
法皇になりたい枢機卿たちのドロドロした争いもありながら、ストーリーはそれに汚されることなく力強く進みます。
ローレンスの、迷いを帯びた表情と、法皇への野望が漏れ、でも結局最後の結末へと繋がる流れ。権力を志向して友人へ疑念を抱きながらも最後には聖職者らしい反省を見せるベリーニと、教会の清らかさが保たれるのも見どころです。
いろんなシーンで、コンクラーベにおける奇跡が現れたような出来事が象徴的に描かれます。
映像、音楽、そして俳優の演技、さらには脚本と、極めて高いレベルの芸術性が表現された良作です。
ドキッとするラストに勇気づけられた。
久しぶりに自分の中の凝り固まった考え方をぶっ壊してくれたような映画。
それも長年の歴史あるカトリックという巨大宗教組織に対して、本来の人としての純粋な問題提起を表に出してくれたような。
人間の根源的な問いまで考えさせてくれたこの作品。重厚なのにミステリー的なエンタメの魅力もある。音楽も重厚でこの作品世界に合っていて素晴らしい。
個人的にショーン・コネリー主演の「薔薇の名前」を思い出した。あれも宗教の中で起こるミステリーで素晴らしい作品だった。
教皇選出を取り仕切る主人公。自分の中で正しく疑問に持つ事を解決しようと奮闘するにもかかわらず、二の矢、三の矢と問題が生じてうまく行かない教皇選び。自分の弱い心をついてくる逃げの考え。それを啓示するように起こるある出来事。
でも、その問題を真摯に取り組み、悩み、もがく先に思いがけない奇跡のような展開になり、最終的な答えにたどりつく。
その流れ方がむりやりではなく、ちゃんと納得するストーリーの流れだったのがとても真に迫りました。又、自然で、素直で、素朴な考え方に好感と共感が持てました。
そして女性の立場を象徴するカメラワークも。
あのラストの問題提起も思いがけない、現代社会において大きな意義があると思う。
まさに革新的。
2000円払って惜しくない作品だった。
神はやはりいると思う。
全868件中、221~240件目を表示








