「普遍的プロット」教皇選挙 ざむざむさんの映画レビュー(感想・評価)
普遍的プロット
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「教皇選挙」は言葉としてぎこちない。素直にコンクラーベの方がかっこよかったのでは?ちょうど、本当のコンクラーベが公開直後に開催されているし…。まあ、あざとい売り方はこの作品にふさわしくない。
あざとさとは無縁の、本当に端正で、完璧な構成。
教皇が亡くなってから、コンクラーベが開かれるまでの混乱がスリリングに描かれる。登場人物が次々と現れ、目まぐるしく出来事が起こるのだが、短いエピソード一つ一つが完全に配置されており、混乱が収まった時点で、コンクラーベとは何か?葛藤がどこにあるのか、誰がどんな人物なのかが全部分かる。そこから先は前教皇の生前に残した言葉の謎を解くことでストーリーが進み、最後にどんでん返しがある。
長尺なのにあっという間に終わったのは、テーマに向かう物語の推進力がすごいからだ。アカデミー脚色賞は当然だと思う。提示されるテーマも反発する人も多少いるかもしれないけれど、今の世の中にふさわしい。
エンタメにも流用できる普遍的な面白さがあるプロットだ。
設定を考えて、アイディアとギミックを追加すれば、マーベルやスターウォーズに属するスマッシュヒットが出来上がるのではないか、と思う。ある意味贅沢なアート映画だ。
ならば、どうしてアート分野を選んだのだろうか。
面白さと共感を要求するファンを背負わない分野で作品を作るのだから、受け入れられにくい深い部分に触れても良かったのではないか。保守派にも正義があり、聖者めいた主人公にも心の闇も垣間見られる。
見る人に誠実すぎるという印象がぬぐえない部分もある。
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