「西のアウトレレイジ、人間を描いたものは芸術である」教皇選挙 加藤プリンさんの映画レビュー(感想・評価)
西のアウトレレイジ、人間を描いたものは芸術である
人は幾つになっても悩み、涙し、愚かな行いをし、悔やみ、悔い改め、そして微笑むのである
とても良質な映画で、画も音楽もテーマ性もとても良い
アウトレイジは闇社会を描いた物語で、その中で人間性が輝く瞬間がグッとくる作品に対し
今回はキリスト教の総本山の物語、光の世界での闇を見せる人間たちの中で、
やはりグッとくる展開があります
本当に観て良かったと思いますし、とても面白い反面、これは観客を選ぶ映画で
もう少し、宗教や宗教界絵画に知識があるともっと楽しめる作品なのだろうと感じました
先教皇の封印を破り、禁断の私室へ踏み込む件と
主人公ローレンスが自分の名前を記入し、投票した瞬間に爆撃される展開が秀逸で
これにより、主人公は天命を受け、おそらく踏み越えてては行けない領域を超えてしまった
罪の意識、そしてこれ以降は聖職者全員が灰を被り、小傷を負い、誰もが聖性を担保できない状況で
あの演説、まるでトランプを連想させる彼に対したあの異種族枢機卿の糾弾に
思わず涙しました
その後はありきたりな展開で終幕なのですが、あの暴力による灰により炙り出された、赤い衣を身に纏った聖職者たちが白い傘を差し
選挙の場に戻る姿はとても美しく、秀逸で、物語のメソッドとしても、雨にて洗い流された精神性
誰もが戸惑い、エゴのため見失っていた価値観を取り戻す瞬間は鳥肌ものです
テロリストの爆撃により空いた窓、密室を破る外的要因により、風が吹くのも、作劇のメソッドとして正しいもので
それにより、初めての人選が行われます
彼が実は…という件は、実は予測できてしまっておりましたが
結局は先教皇の思し召しに従い、彼は亀を救うところで赤い煙を目にし(作劇されません)
翌朝、若いシスターたちの平和な日常のワンカットにてこの物語は襲撃します
本来教皇のあるべき理由、根拠、本質としては平和な特筆すべきことのない日常を保証することなのですね
とても美しいテーマであり、光に近いところに人間は影が色濃く出、
逆にダースベイダーではないですが、闇に近いところに人間の光が浮かびあがるという意味では
この映画は、とても普遍的な人間を描いたテーマに終始し、集約されます
亀は聖性をもった生き物であり、それを救う事で、彼は神の御心に触れることが、ようやくできたのですね
両性を具有した教皇が誕生することで、それを民衆は拒絶するのでしょうか、いや、神の御心と世界の在り方は
本来そういう世界のはずなのですね
彼が手術による身繕いを拒否したことにより証明された
本来、神はそれを許すはずであり、人はそれぞれ、その人のままで良く、過ちを犯してもまた
悔い、反省することで許されるべきという、本来のキリスト教が目指したものが浮かび上がってくるのだと思いました
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