劇場公開日 2025年3月20日

「今時の脚本とその矛盾点」教皇選挙 moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5今時の脚本とその矛盾点

2025年5月19日
PCから投稿

現実に教皇が亡くなったことで人々は実際の教皇選挙というイベントそのものにも関心を持つことになったわけだが、恐らく制作側の意図としては教皇選挙の派閥争いを通して、バチカン内部への関心を持たせつつ、そこに現代の欧米の政治や思想の問題をメタファーとして織り込んでいる作品であり、そういった時代の変化がテーマになっている作品であると思う。

コントラストのあるしっかりとした撮影とドラマチックな音楽、確かな演技力のある役者をそろえた見ごたえある作品であるが、何よりも複雑な人間関係を見事に整理した脚本力が大きい作品だと思う。

ただ、そのポリティカルコレクトネスを、ふりかけのようにちりばめた「今時な」脚本の好き嫌いは人によって別れるところがあるのではないだろうか。

自由、平等の精神を伝えたいのはわかるのだが、「あの」人物は果たして本当に無私の野心を持たない聖人だったと言えるのだろうか?彼はずっと嘘をついていたわけだ。そして他のものと違い、なぜ彼のついた嘘は許容されてしまうのだろうか?

つまりこれでは理想主義側の正義は紛うこと無き正義なのだという潔癖で、都合の良い物語にしかなっておらず、とても現代の複雑さを内包出来ている作品とは言えないのである(特にこの作品がアメリカで公開された時と違い、アメリカが変容してしまった2025年現在では)。

そのような先進的で理想主義の側が常に正しく、遅れている相手の話は聞く必要がない、という閉じた態度が現代の社会の分断をもたらしているわけである。だからこそ「あの」人物の矛盾や偽善にまで言及出来ていれば、この作品は更に複雑で深い作品になりえていたのではないだろうか。

moviebuff
ひなさんのコメント
2025年5月19日

moviebuffさま、初めまして。

「あの」人物の矛盾と偽善は、インターセックスの手術を受けないことと、インノケンティウスと名乗ったことだと理解しています。

ひな
ノーキッキングさんのコメント
2025年5月19日

アカデミー賞獲りにいった経緯があると思います。老人の会話だけでエンタメは成立しません。そこに正義など無く、すべては出来レースだったという脚本だからウケた。
もっとも投票母体が俳優であるアカデミー賞は、白人キリスト教福音派が増長している今だと、受賞は無理ですが。

ノーキッキング
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