「神託」教皇選挙 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
神託
迷える子羊共が右往左往する。
ヴァチカンの教皇が逝去し、次なる教皇を決める為の選挙が行われる。主人公はその選挙を執り仕切る人物だ。かなり独特な選出方法で、候補者を決めず一斉に投票する。自らが相応しいと思える人物の名を書く。その票数が一定数を越えれば教皇として選出される。つまりは、一定数を超えなければ延々と投票が続くのだ。
神の存在を信じる者達としては、至極真っ当な方法のようにも思う。何の小細工もしなければ、決まりようがないようなシステムだ。
神のご意志が作用しそうな選挙方法に、人間が介入してくるからややこしくなるのは当たり前だ。
選挙を通して、欲深き人の業とヴァチカンの腐敗が描かれていく。
ある枢機卿が「我々は理想に仕える者で理想ではない。ただの人間だ。」とか何とか宣う。
何の言い訳なんだろうと思う。
そんな事も含め、聖職者と言えど、欲に塗れて当たり前で強欲だし、権力は欲しいし、女だって抱きたいしと…何なら聖職者って仮面を被ってる分、タチが悪い。神の御許の営業マン達はかなり優秀だけど、大多数が悪徳営業マンなのではなかろうか。
なので、有力候補者の醜聞が次から次へと出てくる。この辺の件は、罪のない人間などいないって断言してるようだ。
スキャンダルもそうだし、陰謀だって画策する。買収して票を集めるなんて普通だし、なんなら政府と繋がってる輩もいるっぽい。
欲望が蔓延してるとんだブラック企業なのだ!
でも、それでも神は見捨てない。
選挙期間中、教会は外界から遮断されるらしい。窓の振動から会話を読み取られる事もあると、異次元の用心深さを発揮する。
自分達しかいない閉ざされ独立した空間の中で、事は進むのだけど、物語が進むにつれこのありえないくらいの厳重さは、自分達の穢れを外に漏らさない為なんじゃないだろうかと思えてくる。
そんな閉塞的な空間がある事件によって壊される。無差別テロなのかな。外からの力で障壁は破壊される。偶然に奇跡を感じる人もいると思う。
全ては必然だも言う人も。
そんなタイミングで穴が空く。
コレを機に、外部の圧力に抵抗し宗教戦争の起こる寸前だと喚き散らす最有力な候補者。
…もはやキリストの教義からかけ離れてんじゃないかと思うんだけど、地位と金を得た人間は須く悪魔と同調してくんしゃないかと思う程だ。
そんな中、声が響く。
「戦争を知ってますか?誰と戦うつもりですか?」
とても澄んだ声だった。
「戦うべきは、我が身の内にあるものではないですか?」コレが言いたかったのかと術中に嵌められた。
この人はまた謎多き人物で…生前の教皇だけが知っている枢機卿である。
登場からずっと怪しい。
が、思わせぶりな発言も多く、ここまでリアリズムに徹してる作品で、まさかの神の化身なんて事はないだろうと、そんな疑惑をもつ眼差しをしてる。
そして投票が再開されるんだけど、その時、外から風が戦ぐ。閉鎖された空間に空いた風穴から穏やかな光た共に風が入ってきてるのだ。
見上げる一同が感じた事は同じだったのだろう。
腐敗し澱んだヴァチカンには新しい風が必要だ。
次の教皇に決まったのは、謎多き枢機卿その人だった。
教皇は名を改める習慣があるようで、その名は発音しにくい名前だったのだけど「ケツアルクァトル」に似た名前だった。なんか意味があんだろなあー。
主人公が教皇になった時は「ヨハネ」と名乗るつもりだったらしい。たぶん真逆の意味を持つのだろう。
漸く落ち着いた選挙だったが、また一悶着起きる。
主人公の補佐官がやたらに有能で、この彼のポジションも何か含むものがありそうで興味深い。
次の教皇にも問題視される要素がある、との事だった。
もうここに至ってちょっと笑えてくる。
「またか…w」と。
聖人君子なんて人は存在せんのだ。
彼の秘密は両性具有って代物だった。
そうきたか、と、寧ろ感心した。
コレ以上、神に仕える身の長として相応しい物などないんじゃないかと思われる。
彼は自身の体を神からの授かりものだと言い、外的手術によって作り替えて良いようなものではないとの結論に至ったようだ。
とてもとても説得力があった。
ラストカットは窓から外を見下ろす主人公だ。
その目には扉から出てくる3人少女が見える。
混乱に混乱を極めた選挙であり、世界の趨勢をも左右するような時間であったが、変わらず日常は和やかに育まれているって事なのだろうか。
その対比で、視野が狭くなっている自分達の滑稽さが際立つって感じなのかなぁ。
全然間接的なんだけど、神の存在の表現としてはドンピシャで、なんか教典のようにも思えた作品だった。
終始流れている重いBGMも良かったなぁ。
キリスト様って寛大だなぁー
U-3153さま
投票が終わると投票用紙を燃やして、密室の礼拝堂の煙突から出る煙が選挙速報になります😃
2/3以上の有効得票数があれば、白い煙が出て選出決定、黒い煙が出たら未決で次の投票…というアナログな選挙システムです。
リアルなバチカンでは、プロテスタントの団体が、女性教皇を認めるようピンクの煙を焚いて抗議してました😓
U-3153さま
コメントありがとうございます😊
新教皇の名前「インノケンティウス」の謎を調べていたら、1時過ぎに白い煙が上がりました。
プレボスト枢機卿「レオ14世」、米国出身の新教皇の誕生は初めてとのことで、トランプ大統領は早速お祝いしていましたが、片想いみたいです😅
U-3153さま
共感ありがとうございます😃
新教皇の名前「インノケンティウス」、調べていくと「えっ!?」と固まりました。
全てはシナリオ通りなのか、あるいは最も選んではいけない人物だったのか…
私が思った以上に、奥行きの深い作品でした😓
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