「【考察】ベニテス=現代版キリスト?」教皇選挙 KsSKYさんの映画レビュー(感想・評価)
【考察】ベニテス=現代版キリスト?
非常に質の高い映画と感じた。
絵も奇麗だし、首席枢機卿の法衣やシスティーナ礼拝堂のセットも重厚感があり威厳と権威を感じさせるに十分だった。
教皇選挙に集められた次期教皇候補の枢機卿たちは、不正を働き私腹を肥やすもの、欲におぼれて女性と不倫関係に陥るもの、あからさまな人種差別的発言をするもの・・・最有力候補になったかと思えばそれらの致命的な失策が露わになり、威厳も権威もあったものではない。
しかし、最終的に教皇に選出されたアフガニスタンのカブール教区のベニテス枢機卿は清廉潔白を絵に描いたような人物。前教皇は彼の人格を見込んで亡くなる前に様々な仕掛けをして最終的に彼が教皇に選ばれるように手を打った。そしてその通りに事が運ぶようにローレンスが表に裏に疾駆するのである。
私はベニテス枢機卿とは、まさに現代に生きるキリストではないかと感じた。
彼の属するカブール教区のあるアフガニスタンは国民の99%がイスラム教という、キリスト教布教には困難極まる地域であり、そこで布教活動に心血を注ぐ彼はまさに困難な中でも最後まで神の御意思に従い伝道を続けたキリストと言えると思う。
また彼の告げた教皇名はインノケンティウスであり、イノセンス=無垢・純真につながる名を選んだのも深い意味を感じる。
そして、これはどなたかの感想にありその慧眼に感服したのだが、ローレンスがひそかに選んだ教皇名はヨハネであり、これはローレンスの役割をキリストに洗礼を施した洗礼者ヨハネになぞらえたのではないかという意見である。私はこれに全面的に賛成だ。
洗礼者ヨハネはキリストが洗礼を受ける前に神託により布教活動を行い、キリストが布教活動を行うための布石を敷いた人物である。ローレンス(ヨハネ)が前教皇(神)の意思に従いベニテス(キリスト)の教皇就任をするという構図が見事に成立しているのではないだろうか。
爆発事件の後、いきり立って好戦的になるテデスコに対し、戦うべきは自分自身であると諭す姿は、ゲッセマネの園でキリストを捕縛するために来た大祭司の奴隷の耳を切り落としたペテロに「戦いでは人々は救えない」と諭すキリストに重なるものを感じた。
となると教皇になったベニテスを待つ未来はどんなものになるのか・・・。その先について考えるのも面白い。
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