「人間っておもしろい!!」教皇選挙 ねむみさんの映画レビュー(感想・評価)
人間っておもしろい!!
閉鎖された厳かな空間に、100人を超えるおじさん。同じ衣装、同じような年ごろ。その条件下でどんどん展開される会話劇。「これついてける?大丈夫そう?予習してくればよかった…」って思ったのも束の間、アフリカ系枢機卿とメイドのいざこざが明るみに出たぐらいから一気におもしろく。
「しっかりやらないと」と思えば思うほど候補者たちの思惑に翻弄され、密告が集まり、前教皇の部屋に忍び込んだりして自身が暗躍者のようになっていくローレンス。
足の引っ張り合いによって有力者の悪事が次々暴かれ、失脚に次ぐ失脚で候補が絞られ二転三転。ただの機能に徹しようとしていたローレンス自身も次第に野心を持っていく。日本の国会を見てるみたい。いい歳した権力のあるおじさんたちが、怒って泣いて懇願して逆ギレして秘密を暴露して罵り合いながら全力でお互いの足を引っ張る。陰謀、過ち、スキャンダルが次々と暴かれる。聖職者を決める崇高な選挙は野心と思惑が渦巻く泥試合に様相を変えていく。清廉潔白な人などいないのか?でも、だから人間っておもしろい!!
ローレンスが秘密を知るたびに、その内容が明かされずに進むのが印象的。観客は他のおじさんたちと同じように、最大の驚きを持ってバッと事実を開示される。余計なことを考える間もなくグルッと世界が反転する。
これ終わるんか…?と絶望しかけたとき、「戦うとおっしゃるが、何と戦うのです?」の言葉にハッとさせられる。そこから続く、他人と戦うのではなく、怒りに負けそうな自分と戦うのです。仲間だけでなく全てを愛してこそ善き人間だ(ここまで言ってないかもだけどそう聞こえた)。みたいな言葉に本当にそうありたいと思った。やっと私たちは正しいものを選べる。そう思ったのも束の間、選び取った純白は、ここにあってはならない真っ赤な一滴だった。
ここで「言語道断!すぐやり直し!」とならないのが、現代を舞台にこのテーマをやる意味だろう。
コンクラーベのこともっと知りたい。
「スカッと」と「えらいことになった」がもう止めらてないスピードで未来を突き破って行きそうなラストの先。とてもいい意味でフィクションならでは。完璧。
キノシネマのまっ赤な座席が映画の中からそのまま伸びてきてるみたいでさらに最高でした!
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