「世界一古くてスリリングな選挙」教皇選挙 イザベルさんの映画レビュー(感想・評価)
世界一古くてスリリングな選挙
原題はCONCLAVE(枢機卿たちの互選による教皇選挙会議)。
ストーリー自体はフィクションだが、その昔、世界史の語呂合わせで覚えた「コンクラーヴェ(=根比べ)」が現代も伝統にのっとって行われているのがまず驚きで、あまり知られていない選挙の手順や様子をつぶさに見られる構成になっている。
教皇が急逝し、次の教皇を決めるために世界中から集まった100名を超す枢機卿たちが、バチカンのシスティーナ礼拝堂を閉鎖し、外部との連絡を断ち(選挙期間中はスマホ、タブレット、PCは取り上げられ、電波も遮断される)、投票総数の2/3を占める得票者が出てくるまで連日選挙を繰り返す(立候補制ではなく、それぞれの枢機卿が新しい教皇にふさわしいと思う枢機卿の名前を書いて投票する「互選」システムなので、状況次第で新たな候補者が出てくる可能性がある)。
神に仕える者たちとはいえ、選挙なので派閥はできる、票の買収は行われる、スキャンダルで自滅する者も出てくる、守旧派と改革派の対立もある、と実に生臭い。最後にあっと驚く大どんでん返しもあって、映画館内では珍しくどよめきが起こった。
ネタバレするわけにはいかないが、スリルありサスペンスありミステリーあり。閉鎖的空間でいい歳をしたじいさんたちが繰り広げるドラマとは思えないほど。120分の上映時間がワクワクしながら過ぎていった。
また、シスター役でじいさんたちに厳しめの言葉を投げかけるイザベラ・ロッセリーニも年齢を重ね(撮影当時70~71歳)、山椒のように小粒でもピリリと辛い存在に。デヴィッド・リンチ監督『ブルーベルベット(原題 Blue Velvet)』(1986)の頃とは別人のような名脇役になっていて、わずかな出演シーンなのに強烈な印象を残す。アカデミー助演女優賞にノミネートされたのもうなずける。
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