「興味深い聖職者たちの裏の素顔」教皇選挙 お喋りな啄木鳥さんの映画レビュー(感想・評価)
興味深い聖職者たちの裏の素顔
信者にこそならなかったけれども、幼稚園から大学までカトリックの学校に通ったのでタイトルを見た時から興味津々だった。聖職者の最高位の人たちの素顔や彼らが過ごしている区域も見られる(フィクションではあるが)点でも惹かれた映画である。だから、まずは彼らがいる建物、滞在している部屋、外からは見えない中庭や回廊、廊下や階段も分かる限り忠実に再現されていると思うととても興味深かった。
物語はまずは枢機卿がたくさん出てくるので、顔と名前を覚えるのが大変。みんな高齢の男性なのでちょっと油断すると誰が誰だかわからなくなる。途中まで主人公がローレンスという名前であることに気づかず、選挙で得票しているローレンスって誰だっけ?などと余計なことにエネルギーを使ってしまった。そんな調子でまだ見落とした重要要素もあるかもしれないけれど、隔離された状態で選挙戦に突入して食事も一堂に介して取り、その間も選挙戦の売り込みのようなことが行われながらだんだん有力候補やそのそれぞれが割と例外なく生身の人間でキリスト者としての目的もあれば脛に傷もあるということがわかってくる。
選挙戦が進むにつれ明らかになる不祥事もあって最初は新教皇が選出されたら首席枢機卿を辞任しようと思っていた主人公までが密かに自分が選出された場合の教皇名まで考え始めてしまう。
ところが、昨今珍しくない同時多発テロみたいな事件が起きて、一旦選挙は延期になり、やり直しの結果、教皇の座は最後の最後にダークホースだった伝統的な教区ではない教区出身の無名の枢機卿のものとなる。この新教皇が自ら決めた教皇名がインノケンティウス。言葉に詳しいわけではないけれど、想像するに英語にするとinnocent、無邪気なという単語が語源かなと思う。
そのような意味を持つ単語に新教皇がふさわしいかどうか、最後の最後にも衝撃的な新事実が明らかになるんだけれど、首席枢機卿のローレンスは迷った挙句この問題教皇を受け入れ、支えていく決心をしたようだ。彼の横をのそのそ歩いていた亀を手に抱えて中庭の水場に返すという象徴的な行動はそういうことだろうと思う。
司祭の最高位たる枢機卿もスマホを使い、タバコを吸い、シスターに給仕してもらって食事をとり、時には大声で言い争いをする。普段垣間見ることのできない秘密をのぞいている面白さもあったし、二転三転する選挙の行く末も見応えあってあっという間の2時間だった。
今のローマ教皇は高齢で健康状態もあまりよくない。先日退院したという報道があったが、一時は危ないと言われていた。この映画の中で繰り広げられていたコンクラーベがもうじきバチカンで実際に行われる。今度は何日目に白い煙が見られるのだろうか。
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