「極上密室エンターティメント」教皇選挙 kozukaさんの映画レビュー(感想・評価)
極上密室エンターティメント
「教皇選挙」というタイトルから日本人だとキリスト教の話は身近で無いのでわからないのでは、とか選挙の話で硬いのでは、と思い観るのを躊躇う人がいたら、騙されたと思ってぜひ観てほしい。
実際のところこの映画はとてつもなくエンターティメントなサスペンス映画なのだ。
ローマ教皇が急逝し、首席の枢機卿ローレンス(レイフ・ファインズ)が教皇選挙を取り仕切ることになる。
各国の枢機卿がバチカンに集結する中、前教皇が秘密裏に任命したというメキシコ系の枢機卿ベニテス(カルロス・ディエス)が現れる。本当なのか?目的は?
そうして、外部との接触を禁じられるバチカンで枢機卿たちの全体の3分の2以上の票を得たものが次の教皇となる選挙、いわゆるコンクラーベが始まる。
有力候補はリベラル派のベリーニ(スタンリー・トゥッチ)、伝統派のイタリア人テデスコ(セルジオ・カステリット)、初のアフリカ系教皇を目指すナイジェリア人アデイエミ(ルシアン・ムサマティ)ら。
ストーリーはローレンスが前教皇に近い思想のベリー二に票を集めようとするロビー活動や過去のスキャンダルの暴露や前教皇とのトラブル、陰謀が渦巻き、一向に票がまとまらない様を密室劇で描く。
こうした様はまさに今の時代の政治の状況とリンクする。
監督のエドワード・ベルガーは現代社会の縮図として教皇選挙を引用しているのだ。
実際のコンクラーベはこんなスキャンダラスな内情だとは思えないが、その内幕は密室であり外部には未だ秘密にされている。
誰も知らないということは、どのようなフィクションも可能ということで、そこをサスペンスとして利用した原作が秀逸だ。
現代社会同様、事態は消去法で決着すると思われたところである事件が起こる。
それは密室の外で起きていること。
枢機卿たちの私利私欲に夢中になっている間に起きていたすぐそばの重要な事態を思い知ることになる。それは今の政治と合わせ鏡だ。
そこから選挙の終結までは驚きの展開。
分断や多様性、LGBTQといった今の時代のテーマをこれでもかとぶちこんだ内容は正直やり過ぎ感も否めない。
ただ、エンターティメントとしては一級品の傑作だ。
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