「ミステリーとは?」教皇選挙 るかこさんの映画レビュー(感想・評価)
ミステリーとは?
「次期ローマ教皇をめぐる極上のミステリーが、その禁を解く」というのがこの映画の宣伝文句である。が、最初に言っておくと「ミステリー」でもなければ「禁」も解いてないし、言わずもがな「極上」でもない。
まず、ミステリー要素が薄すぎる。確かに、有力候補が失脚していく流れのなかに、陰謀めいたものはある。しかし、それも「ライバルの性的スキャンダルの相手をコンクラーベに送り込んだ」というセコいもの。しかも、陰謀要素はこれ1回きりである。これでミステリーなどと胸を張れるのだろうか、と首を傾げたくなる。
そして、展開があまりに大雑把だ。有力候補が消えていき、残るは主人公一派と保守派となる。熾烈な争いが描かれると思いきや、教皇に選ばれたのは見せ場のあまりなかった謎の枢機卿!しかもそのきっかけは「争いはよくないものです(要約)」との言葉のみ。これ一発で教皇選挙を制するのである。そしてその後、実は女性だったことが発覚。もう一波乱あるか…と期待させつつそのまま映画はエンドロールへ突入…。
はっきりいって、超展開としか表現できない。しかも前述の陰謀もどきで2人の有力候補が消えるまで、上映時間の半分以上を費やしているにも関わらず、である。あまりにストーリーラインが乱暴だと言わざるを得ない。「教皇選挙の禁を解く!」などど言うからにはコンクラーベの闇や深淵に迫れると思いきや、この体たらくである。
その他、いきなり第一回選挙で黒人枢機卿がトップに何の違和感もなく躍り出たり(現教皇であるフランシスコが初の南米出身!と騒がれたことを鑑みれば、あまりに非現実的なことがわかるだろう)、建物外の自爆テロで教会の壁のおかしなところが壊れるなど、違和感を覚える部分も多々あるが、上述の問題点と比べれば些末なものである。
このように、この映画が「極上のミステリー」などではないことは明白だ。であれば、何をしたかったのだろうか。考えるに、「教皇選挙」は舞台仕掛けに過ぎず、作中で繰り返される「多様性」や「進歩」を訴えたかったのだろう。言い換えれば、制作陣の思想が第一であって、カトリックという宗教はそれをミステリもどきに見せるおもちゃにされたのではないか、と邪推せずにはいられない。
他方、ネット上ではこの映画を評価する声もある。しかし、それは「教皇選挙」というよく知らない宗教の未知の儀式を見たから面白く見えるだけであって、それは某スペイン村に行ってはしゃぐ子どもの反応と大差ない。あるいは、この映画の露骨すぎるメッセージに共感する人は、内容ではなくイデオロギーでもって評価するだろう。いずれにせよ、「物語」として評価の俎上に上がるものではない。なお、登場人物の演技やカット等、単なる映像作品としては光るものがあったことを申し添える。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。