「世界の縮図としての教会」教皇選挙 リコピン大王さんの映画レビュー(感想・評価)
世界の縮図としての教会
エンタメとしてのミステリーの面白さと、現実世界への批判や問いかけが見事に融合していて、マジで面白すぎる!
カトリックの枢機卿なんて日本だと身近ではないけど、
ちゃんと1人の人間として描かれていたから主人公を応援しながら最後まで楽しく鑑賞できた。
コンクラーベ中に発覚していく枢機卿たちの汚点は現実より軽く感じたけど、汚点そのものより、主人公ローレンスがそれに対してどう行動するかが面白かった。
最初は、仲間である枢機卿への疑いについてどこまで踏み込むべきか…という葛藤に始まり、徐々に管理者として正しいと思う事と教会の規則を天秤にかけるなど、どんどん葛藤が大きくなる。そして悩みながらも規則を破っていくさま(前教皇の部屋への侵入とか)はとても痛快。
そしてラストにはバチカン史上1番の規則違反かもしれない事に直面したけど、自分の正義を信じて沈黙することを選ぶ。
シーンとしては静かだけど、やってる事は超破天荒な感じがとても魅力的な場面だった。
私は幼稚園から高校まで一貫のキリスト教系の学校出身。キリスト教が身近な環境で育ったけど信者ではない。幼稚園の時とかは言われるがままに色々信じてたけど、小学校くらいから次第にキリスト教の教えと現実の矛盾、みたいな事に疑問を持ち始めたのを覚えている。
映画でも描かれていたけど、教えでは人間はみんな平等と言いながら、神父だけが豪華な服を着て、シスターは質素な服で下働きみたいな扱いな事とか。
苦しんでる人は助けなきゃいけないと言いながら、同性婚は認めず、それで苦しんでる人には神に祈って許しを求めろとか言う事とか。
でもこういう長い伝統の中で出来た規則が、世の中の変化に対応出来なくなる事って教会だけじゃ無く、組織や会社や家族とかだってある事だと思う。
今まさにバチカンでも、様々な矛盾に対して伝統を守るのか革新するのか揺れている真っ最中らしい。
この映画ではこういう葛藤に対してどうするか主人公の行動によって示しながら、鑑賞者に問いかけてくる。教会という特殊な場所を舞台にしながら普遍的なメッセージがある。
女性や様々なマイノリティの立場についての映画は色々あるけど、舞台を世界で最も歴史が長く保守的な組織のひとつであるバチカンにした所に、原作のコンセプトの強さがあると感じるし、挑戦的でとても好き。
ストーリーやテーマ以外の、音楽や美術や衣装もとても見応えがある。枢機卿の衣装が豪華で権威的な感じはムカつく!でも素敵!コンクラーベの時だけにしか使われないだろう道具も見ていて楽しい。
ずっと同じ所にいるのに飽きないのは、演出的にも色々工夫がされてそうだけど、初見ではそこまで追う余裕は無かった。
それくらい細かい所まで色々作り込まれている。
他にも確信を疑う事が大事(意訳)とか、ありのままの自分で勝負する!(超意訳)などのセリフや
さりげなくもしっかりシスターの存在感があった事など
響く所の多い好きな映画だった!
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