「スリリングな密室劇」教皇選挙 tottoさんの映画レビュー(感想・評価)
スリリングな密室劇
イタリア美術が好きなので、題材とアカデミー賞脚色賞受賞という触れ込みに惹かれて鑑賞。
教皇の死の当日と、外界と遮断されるコンクラーヴェの数日間、ほぼサン・ピエトロ大聖堂と宿舎の中だけで展開されるドラマですが、単調になるどころか息つく暇もない展開で、衣装も大道具・小道具も絢爛で見どころだらけだし、キャストの息づかいが当初は耳障りに感じるほど聴こえてくる音の緩急にも惹きこまれて2時間があっというま。
カトリック芸術は大好物ですが、その宗教的排他主義による歴史の血生臭さと女性のあつかいがあんまりなところから、宗教としてのカトリックには拒絶感が強いので、シスター・アグニスやベニテス枢機卿の糾弾や、システィナ礼拝堂の壁が崩されるカタルシス、最後の投票の際に崩された壁から風が吹きこみ、選出後には鎧戸が開け放たれて外界の光や音が降り注いでくる描写には正直、胸のすく思いでした。
(ミケランジェロの絵画がそこまで好きじゃなくて、システィナ礼拝堂も圧が強すぎると感じるクチなので…これがサン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会を爆破されてたら悲鳴上げてますけど)
ローレンス枢機卿の表情や声や身振りで心情が如実に伝わってくるところは感服の一言です。パワーゲームのドラマって、役者の圧が強すぎて観ながらさめちゃうことも多いのですけど、自他ともに認める管理者として一歩引いた立ち位置にいた主人公が、主力候補者たちのあまりの堕落ぶりに自ら認めていなかったはずの教皇への思いが芽生えていく故教皇を幻視する場面は静謐でしたし、一度袂を分かったベリーニ枢機卿が改心してやってくるときの回廊での対話は、画面の美しさとローレンス卿の野心の表明が対照的だし、ベニテス枢機卿が教皇に選出されたことに拍手しているときの落胆や怒りや受容の回心が目まぐるしく変わっていく表情の変化の生々しさはおそろしいほどでした。
あと、イタリア語独学者なので、イタリア語まじりの会話がとても聴き取りやすかったのもうれしかったです。テデスコ枢機卿とか、イタリア語ネイティブの役者さんなのに、宗教者という設定だからか早口過ぎなくて。
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