「必見!!!!!」アプレンティス ドナルド・トランプの創り方 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
必見!!!!!
民主主義を破壊しそうな男、それが現在の米国大統領トランプ氏と、俺には見える。危険過ぎる。しかし、だからこそ、彼と彼を賞賛する人々を理解しなければ前には進めない。と考えているのでこの映画、絶対に観ない訳にはいかないのです。
観た直後の感想。俺にとっては、ホラー映画。それもかなり怖いホラー映画。
ロイ氏といいトランプ氏といい、「勝つことが正しく手段さえ問われない」と心の底から考え、というか信念として持ち、そのためにはルールすら無意味と考える人間が実在する、ということは俺にとってはホラー以上に怖い内容だった。
一方、映画としては、ちゃんと映画だと思う。すごい映画だと思う。ネガティブキャンペーンムービーには決してなっていないと、俺も思う。ただ、トランプ氏自身は、成功し取引に勝っている自分の姿を見たいだろうし見せたいだろうし、彼がどんなふうにいまの姿になっていったのかなどということは、ちっとも見せたくないと考えていることはよくわかる。トランプ氏は、「過去を語るなら俺の大胆な企画を語れ、俺を映すならニューヨーク市長にすら勝った俺のディールの強さを映せ」と言いたいだろう。俺は「でも、そんな映画じゃ、誰も観たくない」と言うだろうが、トランプファンは喜んで観るのだろう。観て「U.S.A.!」と連呼するのだろう。いやはや。
この映画を観てから、あらためてトランプ氏を見ると、その行動の原点というか原動力がよくわかる。ロイ氏の言葉では、
1. 攻撃、攻撃、攻撃
2. 非を認めず全否定しろ
3. どれだけ劣勢でも勝利を主張しろ
トランプ氏にとってはロイ氏に教えられた、ではなく自分が生まれた時から信念としている3つのルールという域まで達しているのだとわかる、終盤でトランプ氏がこの3つを語るシーンは俺の中では圧巻だった。
彼は、自分でこの道を選んだんだな。それは彼の自由だ。その彼を政治のリーダーとして選ぶ人が半分いることが、俺にとっては最も怖いことなのかも知れない。
「俺は天性の才能を信じている」本作の中でのトランプ氏のセリフだが、そう信じている彼の中では、世界は神である自分と同じ考えの者とそうでない者にニ別されており、後者は悪魔かもしくは限りなく愚か者なのだろう。信念で大成功した者は、信じるものは自分の信念で、それは絶対。したがって意見の異なる相手と話し合うことも相手を理解することも、彼にとっては露の先ほどの価値もないのだろう。意見の異なる相手をディールで叩きのめすことにこそ、価値があるのだから。
さらに、映画とは離れるが、言動が非常に似るイーロンマスク氏とトランプ氏。大成功する者に必要な強い意志と折れない心が、間違った方向に迸る(ほとばしる)二人。政治の世界でも、勝つためにだけを追求する二人。
今のこの状況を少しでも理解したかったら、必見の映画です! アリ・アッバシ監督、ありがとう! そしてロイ氏、トランプ氏を演じた二人、本当に見事でした。
あと配給したキノフィルムズも偉い! ありがとう!
映画に対して星4つ。トランプ氏に対しては個人的に星マイナス5つです。
おまけ1
とにかく目の前のひとつひとつを解決していった先に未来はある、ひとつひとつは折れなければ負けなければ必ず成功する、という生き方もいいと思うのですが、その人に政治を任せたいか、といったら俺は任せたくないかなあ。(その生き方だから、環境問題のように科学による未来シミュレーション的なことは性に合わないのかなあ、と腑に落ちたのはよかったけれど、それって結局は自分の経験の範囲の中でのみ暮らす、つまり "無知" のままで暮らし続けるリスクなんじゃないかなあ)
また、彼のいう「愛国」の中での "アメリカ" は、単に彼が生きてきた経験を愛しているだけなんだなあ、と思いました。いわゆる「昔はよかった」というヤツですね。この点も俺は、政治家には特にそう考えてほしくないなあと思っている点でした。
そんなわけで、なぜ俺はトランプ氏を嫌いなんだろうということを理解させてくれた映画でした。
コメント&共感ありがとうございました。
私もまったく同感です。日本の価値観には馴染まないでしょうね。法治国家のトップが順法精神の欠片もないわけですから、さすがにな…と。映画のトランプを見ていると、フジテレビなんて可愛いものだと思ってしまいました(笑)
共感&コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、トランプ氏には共感はできませんし、身近にいても関わりたくないタイプです。
でも、距離をおいて見ているだけなら興味深いので、作品としてはとてもおもしろかったです。
共感、コメントありがとうございます。
ロイとトランプ、全く共感出来ない人物でしたね。よくこんな奴をアメリカ人は大統領に選んだものだと呆れ果てました。
でもそれが今日現在のアメリカの現実なんですよね。これから4年間、アメリカのリーダーなんですね。
知る、という意味では必見の作品でしょうね。
CBさん
コメントを頂き有難うございます。
僅差ながらもハリスさん優勢との誌面情報に反し、まさかのトランプ再選という結果に非常に驚いた1人です 🇺🇸
主演、助演お二人の熱演も含め、本作見応えがありましたよね。
私としては、ごく普通の青年だったトランプの青年期の姿が印象的で、強気な発言を多発するトランプも、内面的には普通の人間なんだ、と感じました。
20日に起きた旅客機と米軍ヘリの空中衝突事故の解明が待たれますが、ロシアのウクライナ侵攻、不安定な中東とアジア、何度も起こる自然災害、世界的な物価高、念願の再選を果たしたトランプは、最も影響力のある大国アメリカのトップとしての重責を改めて感じられているでしょうね。