対外秘のレビュー・感想・評価
全30件中、1~20件目を表示
決断するたび変わりゆく姿が楽しくもあり、哀しくもあり
序盤はコメディ風の立ち上がり方。かと思えば、登場人物の誰もが数々の運命の決断に見舞われ、誰を切り捨てて他者を出し抜くかで、口では笑みを浮かべながら腹の底では何を考えているかわからない不気味さと油断ならなさを増していく。脚本にスピード感があり、それは良い反面、立ち上がりの関係性などはやや説明不足に思える箇所もある。肝心の対外秘ファイルもタイトルに掲げるには若干インパクトが足りないように思える。が、そこらへんにさえ目をつぶれば、徐々に本作の楽しみ方がわかってくるはず。純真な自分、何者にも振り回されない自分など存在しない。人生はまさに決断の連続。どちらを選ぶか、どのシナリオにコミットするかによって、己は磨かれ、キャラクターが決定づけられていくと言わんばかりだ。ヘウンの妻や女性記者の変わらない態度が逆に強く印象に残るのは、周囲の男たちがあまりに決断しすぎて振り切れ、変貌してしまうからかも知れない。
「悪人伝」監督、再びの“三つ巴ノワール”
イ・ウォンテ監督は2020年に日本公開された前作「悪人伝」で、悪魔のような連続殺人犯、犯人から重傷を負わされ復讐に燃えるギャングのボス、犯人逮捕のため手段を選ばないダーティーな警官という3人を柱に据え、ボスと警官が裏をかこうと画策したり喧嘩したりしながらも共闘して犯人を追う、バイオレンスと緊迫感に満ちたノワール映画で楽しませてくれた。
そして最新作の「対外秘」では、1992年の釜山での国政選挙を舞台に、ワルたちの三つ巴の争いが再び展開する。今回の主要人物は、党公認候補の約束を反故にされた地元政治家ヘウン、公認候補をすげ替えて投票や公共事業計画まで裏で操る権力者スンテ、劣勢のヘウンのため選挙資金調達に協力して見返りを当てにするギャングのピルド。前半はおおむねヘウンとピルドが手を組みスンテに対抗する構図で進むが、半ばあたりからスンテの策略によりヘウンとピルドのタッグが崩れ始め、誰と誰が裏で組んで残りの一人を出し抜くのかがストーリーの推進力になっていく。
テレビの画面で1992年大韓民国大統領選挙(金大中を含む3候補が立ち、金泳三が勝利)のニュース映像が流れ、時代感を醸しつつ史実とのリンクもほのめかす。1963年の朴正煕から全斗煥、盧泰愚と約30年ににわたり続いた軍人政権が終わり文民政権が発足するなど、「政治的な緊張が凝縮された年」だったとイ・ウォンテ監督も語っている。とはいえ、さほど韓国の政治史に明るくない多くの日本人観客にとってそうした歴史的背景や選挙の実情は伝わりにくいのが難点か。タイミングとしても、10月27日の衆院選、11月5日の米大統領選と続いてメディアで報じる側も見聞きする側も選挙の話題はひと段落のムードになった後で、11月15日の日本公開は少々間が悪かったかもしれない。
不都合な真実だったのかも
1992年の韓国・釜山で、ヘウンは党の公認候補を約束されていて、国会議員選挙への出馬を決めた。しかし、裏の権力者スンテが、自分の言いなりになる男に党の公認候補を変えてしまった。怒ったヘウンは、スンテが富と権力を得るために作成した釜山開発の極秘文書を手に入れて彼に復讐しようとするとともに、ギャングのピルドから選挙資金を借り無所属で選挙に出馬した。地元の人々から人気を集めたヘウンは圧倒的有利に見えたが、スンテが選挙管理の課長を脅し、投票用紙を偽造し、ヘウンは落選してしまった。スンテの悪事を知ったヘウンはピルドと組み、スンテを追い込むが、・・・権力闘争の行方は、という話。
フィクション、とは言っていたが、1992年の総選挙でこんな事が有った、と言うのは事実なのかも知れない。
そんな韓国の裏、が知れる作品なんだろう。
しかし、選挙の投票用紙を偽造するなんて事が可能だった韓国、流石です。日本は平和だなぁ、とつくづく思い知らされる、韓国の権力闘争の凄まじさ、そして、ウィンウィン???なんてラストも不気味。
スカッとはしないが、これが史実(韓国にとっての不都合な真実)だったのだろうと思わせる迫力はあった。
誰もまともな人が出てこない韓国ノワール映画
今年445本目(合計1,536本目/今月(2024年12月度)24本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
キノシネマ心斎橋さんですが、旧シネマートが得意としていた韓国映画も一定程度取り入れられており、韓国映画多めだったから「ほぼ半々から4割くらい」になりました。
まぁ、最初に「本作品はフィクションです。登場人物ほかは実在する人物ではありません」と出るのはまぁこりゃそうですね。
いわゆるノワールもので、誰もまともな人が出てこない一方で、ある程度のアクションシーンはあっても殴りまくったりというようにR15ですかみたいな映画ではないので、そこは安心といったところです。選挙不正やら土地の補償がどうこうといった話題から、韓国にもいるいわゆる「アウトロー」と政治家のつながりまで描かれる、いわゆるノワールものですね(ただし暴力的シーンはほぼ出てこない)。
ストーリーが多々飛ぶのがやや理解として難しいかなと思いましたが、画面自体が明るいので(ここでいう「明るい」というのは映画館の放映という設備上の問題)、誰が誰かわからないということはなく(ムファサは逆にどこで見ても誰が誰がわかりにくいか)、そこは安心といったところです。
採点に関しては特に気になる点まではないのでフルスコアにしています。
--------------------------------------
(減点なし/参考/(投票において)○番に投票してください、などというシーン)
韓国にも日本でいう公職選挙法等は存在しますが投票用紙が違います。届け出順なのか番号が振られており、投票したいと思う人の欄に○をつけたりチェックをつけたりというようなものであるようです。日韓の違いといえばそれまでですが、韓国では同姓同名の人がどうしても出やすいので(同姓、だけで言えばほぼ確実に生じるといってもいい)、日本のような方式にすると疑義票や無効票が続出して選挙訴訟が続出することの抑止だと思います。
(減点なし/参考/「とあるお店」で違法競馬をするシーンについて)
韓国の競馬は日本のJRAの援助があって作られましたが、韓国の土地(概して日本の北側にあるので「寒い」)がら、ダート競走が普通です(2026年に芝競走ができるとのこと)。この点、なぜか芝競走の放映が出てくることからも「インチキ競馬」(他国のすでに終わった競争をあたかも韓国国内で放映されているように錯覚させる)であることはわかります。
※ 競馬のほかは、競艇も日本の同競技の援助で韓国にほぼ同ルールで実施されています。ただし、韓国では日本以上に「ギャンブルで儲けるなんていうのは良くない」というところがあるため、射幸心を抑えたり賭け式を抑えたり(例えば、3連単等は買えない、競馬なら出走数を少なくして高配当が出にくくする等)、購入時に身分証明書を確認させて一定金額以上を買えないようにしている国策があります。
※ こういった事情があるため、日本では中央競馬(JRA)は芝競走メイン、ダート競走がサブという事情のもとで馬の脚質等でダートに転向するのは数レースたってからということも多いです(そもそもダート競走が1レースしかない日すらある)。あるいは、地方競馬への移転もあります(←日本の地方競馬はごく一部を除きダート競走のみ。そのため、コロナ事情が緩やかになった2023年以降ではダート競走について韓国との交流競走も存在する))。
Confidential
上映館が少なすぎる!とヤキモキしていましたが、たまたま遠出する場所で上映してる映画館があったのでラッキー!となって観に行ってきました。
その映画館に行く事自体3年半ぶりとかなので本当懐かしかったです。
割と地に足ついた韓国ノワールで、期待していたものとは遠く、演技合戦自体は魅力があったのですが、物語としてのパンチは弱いかなぁと思いました。
序盤はポップな音楽と同時に軽快に演説をする主人公ヘウンの姿が映されて、この映画ってこういうテイストなのかな?と思ったところに不穏な流れがやってきてタイトルがバーンと出たところでそうそうこういうのを待ってたんだよというのがお出しされて、お出しされたところがピークだったかもです。
対外秘が明かされてからは騙し騙され、裏で根回し、どれだけ怪しく見られないかの探り合いなので、基本的に悪人ばっか、ヘウンも悪人に昇華する形でバチバチにやり合って行く姿が展開されるんですが、んーイマイチ盛り上がりに欠ける展開続きなのが惜しかったです。
暗躍に次ぐ暗躍のせいもあって、正面でぶつかり合う描写があんまり無いのも物足りなさに繋がっていましたし、こういう静かな探り合いよりかはどこかのガチムチマッチョさんがグーでぶっ飛ばすのが好きな自分とは相性の問題が少なからず出てしまいました。
終盤の展開は結構丸く収まってしまったなという印象です。
意外なところからの話の膨らみはあったにしろ、含みを持たせたままフェードアウトしていくのでもう一声!という間もなくエンドロールでした。
「悪人伝」が好きなのであの感じを期待してたんですが好みの問題かちょいハマらずじまいでした。
しっかし似たような事案が現実にあったとなると政治の世界はどこもドス黒いんだなと他人事にしておきたくなりました。
鑑賞日 11/28
鑑賞時間 20:40〜22:40
座席 F-7
欲望を叶える為に
📚あらすじ
釜山の選挙で出馬したヘブンは先生のスンテ権力により無所属とされた。
当選の為にヤクザのピルド、不動産業をしている詐欺師社長ハンモと手を組みます。地域の支持を見事に手に入れたヘブンであったが、スンテは細工をしていきます。スンテの細工により裏切り合いの政治活動が始まります。
📚よかったところ
・1990年代らしい世界のセットや道具でした。
・政権の裏、どの国の権力者の欲望も変わらない、誰が庶民は毎日を生きることは変わらないことを伝えている映画でした。
・当選のために何でもやるヘブンの演技がよかった。
📚考察
・ヘブンが当選にこだわっている理由は何か。
・権力を持っている者が下りることはない。
・政権の世界で先生と教え子が逆転することはない。
・ピルドはお金で動いているのか。人情で動いてたと思う。ヤクザをやめたい気持ちもあったのではないか。
対外秘(映画の記憶2024/11/26)
党から見放された男が徐々にのしあがって行く感じの韓国映画。 本年度ベスト級。
出だしで「本作はフィクションです」みたいな字幕が出るんだけど逆にそれがリアル感を出していた感じ。
韓国の政治の裏側を垣間見れた感じで腐りきった韓国の政治を表していた印象。
党から見放されたヘウン。
無所属で立候補するものの露骨な票よ操作で落選。
あんな事出来るの?(笑)
政界の影のボス。スンテが静かながら恐ろしい。
ギャングで金貸し業のピルドも登場。
都市開発計画の浄法寺を事前に入手して安く土地を購入し土地が爆上がりして大金を得ようとする展開。
騙し騙され感もあって誰が勝ち上がって行くのか全く読めない感じ。
ヘウンが絶体絶命のシーンからの展開に引き込まれる。
ラストは思った感じだったけど韓国の政治がメッチャ恐ろしかったです( ´∀`)
70点ぐらい。政治家と裏社会
だれが敵やら味方やら
世の中こんなもの
1.最近はハッピーエンドを求める傾向がある
2.しかし現実は🇺🇸トランプしかり自分が一番
3.混乱の韓国ではそれが顕著
4.ヒトは動物だ
5.それを確認できる映画だった
6.ヤクザか一番純粋だった
7.先生と名のつくものが一番汚い
8.動物は強いものを本能で嗅ぎ分ける?
9.生きるか死ぬか?嗅ぎ分ける
10.まさに弱肉強食
11.平和ボケには良い映画だった
12.世の中、やるかやられるか
13.あの若い女記者、大丈夫だったのか?
14.卑怯な奴には、こいつ危ないと思わせるしかない?
15.私はアンパッピーエンド嫌いではない
16.悪者の定番、主人公の家族襲わなかったなぁ
17.あの悪者、誰かに似ていると思ったらサマーズだった
18.人をドラム缶です沈めるのリアルだった
19.あの真面目な人が一番悲惨だった
金と権力と闘い
まだまだ選挙で不正が残っていそうな絶妙な時代設定
チョ・ジヌンは不思議な俳優だ。カッコいいわけではないし、愛嬌もあまりない。それほど笑えるわけでもない。でも主演を務める韓国映画が続いている。そのほとんどが暴力と金と謀略が絡む話なのも面白い。
本作で彼が演じるのは国会議員を目指す政治家のヘウン。1992年から始まるこの話は、民主化したと言われていても選挙に不正が残っていそうな絶妙な時代設定。大統領選も絡んでいて、当時のリアルな映像が使われたりするのもリアル感が増した要因。ヘウンと組むことになるヤクザを演じたキム・ムヨルも相変らずの迫力でよい。ただし本作でのアクションは控えめ。
話の方は、与党からの公認を外されたヘウンが地元ヤクザと組んでのし上がろうとする政治ドラマ。政治家、ヤクザ、フィクサーが絡んだ韓国映画でそう簡単にハズレはないと信じている。野心ではなく復讐なんだと話すヘウンがとても印象的だ。裏で仕掛けたり、切り札を握ったりと、最後まで楽しめた。あの人はどうなったのだろうと心配したりして。フィクションなのに映画内での出来事がいろいろとリアルに思えてしまう。
この前、今の釜山の写真を観たときに、こんなに発展してるのか!と驚いたことを思い出す。地域格差の問題もあり、韓国の中で発展が遅れているイメージがあったから。こんな事件や不正によって釜山が開発されて大きな建物があれだけ造られたってことか。いや、フィクションとはわかっている。でも、その思いを拭えないでいる。
やっぱり韓国映画は面白い
先日、「破墓 パミョ」について「久々の韓国映画のはずれ」とレビューで書いた。
こちらの映画は、そこそこの当たりであった。面白かった。
今から30年前、1990年代の韓国第二の都市・釜山を舞台にした、政治家をめぐる
暗部を描いているのだが、悪辣な政治家、その周辺の人物をある種類型的、そして話の運び方もちょっとご都合主義的に感じないでもないが、全体にスリリングな政治サスペンスになっていて、最後まで飽きさせないのだ。
こんなに悪い政治家がいるのか―、昔の韓国ならいっぱいいたのか…などと思ってしまうけれど、政治家の本質なんて、古今東西「こんなもの」でしかないんじゃないか。
政治と政治家への期待や信頼を打ち砕くような実相を、世界の一等国になるまえの韓国の地方を舞台にして描いたのも、なかなかの野心作という気もする。
今の日本では、ちょっと作れない映画なんじゃないだろうか。
韓国映画を頻繁に上映する新宿シネマートで鑑賞。日曜の昼間、席数が50ちょっとだったがほぼ満席。年齢は比較的高かったが、日本ですっかり韓国映画が根付いていることを改めて感じられた。
全30件中、1~20件目を表示