「闇に輝く青瓦台」対外秘 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
闇に輝く青瓦台
悪人しか出てこない、悪人同士の抗争劇だった。
政治家=汚い悪人 で間違いないのではと思う。
良心、信念など邪魔なだけ、ルール無用の、汚くて強いモノのみが勝ち上がれる。
それが韓国政治(家)の世界らしい
政治の腐敗極まれりで、権力者のやりたい放題
投票用紙まるごと差し替える大掛かりな選挙違反をされたら選挙なんてまるで意味無い。
買収や脅しや鶴の一声が堂々と横行、司法までが簡単に左右されるのが通常運転という、とてもじゃないが「法治国家」と呼べない有り様で、この話がフィクションでも実態に即していると思わせるものが、現在リアルタイムで起きている韓国の非常事態からも透けて見える気がする。
韓国映画に見える、庶民一般の「政治不信」「公権力不信」はもっともなものだと思った。
当初は、良心的な政治家ヘウンが理不尽に党公認を取り消され、糸を引くフィクサーに一泡吹かせながら逆転する話かと思っていたら、リアリティ溢れる金と力と暴力での、気の抜けない血みどろのパワーゲームだった。
「いい人」さや「青臭さ」が残るヘウンが最終的にはフィクサーの手のひらで転がされただけ、という結末を予想したがさにあらず。
陰謀術数実力行使、良心も信念もあっさり捨て去り暴力と金の力でヘウンの方がフィクサーをしのぐ権力者になっており、高級ホテルの窓からライトアップされて輝く青瓦台が見えるラストは、一瞬で映画のテーマを表しており秀逸。
歴代の青瓦台の居住者たちの多くが、在任中や退任後に本人や家族の実刑、逮捕、亡命に自殺と、悲惨な事になっているのは、さもありなん。「普通に」やってきた悪事が公にされて、その時点での力関係と権力におもねった「司法」で裁かれた結果なのだろう。自業自得には違いないが。
選挙管理委員会の彼は、悲惨すぎて気の毒を通り越してトラウマになりそう。
ジャーナリストの女性はどうなったのか
政治の抗争には、一市民のレベルでは決して近づいてはいけないものだと戦慄した。
やくざですら歯が立たず簡単に消されてしまう、最恐の悪党たちが政治家だ。
「ソウルの春」の「ハナ会」もそうだったが、韓国の男たちの「同窓生」的な結束が、大変強いものなのが分かりました。
ソウルの春とは真逆な役どころのイ・ソンミンが不気味で良い味
ピルド役のキム・ムヨル、寡黙で行動で示す、ヤクザな役ぴったりでなんか好き。
韓国政治の闇すぎる実態をこれでもかと見せつけながら、虚々実々の駆け引きとサスペンスを盛り込んで見ごたえある作品にした、イ・ウォンテ監督、(「悪人伝」も抜群に面白かった)この人に、今後も注目したいです。
ソン・ガンホが制作に加わっているんですね。
平時なのに戒厳令という、とんでもないことが行われ、韓国の政治並びに政治家は、民主主義というものをどう考えているのだろうと、そしてこの映画のような行為が(それが過去のものであるにせよ)根底にあるのかな、と暗澹たる気持ちになりました。
この映画そのものは、エンタメでしょうし、面白かったのですが。