「マキャベリズムに透徹して韓国地方政治を描く。 新しいタイプの韓国ノワール」対外秘 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
マキャベリズムに透徹して韓国地方政治を描く。 新しいタイプの韓国ノワール
韓国映画で地方政治の暗黒部分を描いた映画といえば「アシュラ」を思い出す。あれは何時終わるともしれない暴力表現が続く韓国映画の傾向値の到達点にあたる作品だった。
「対外秘」は韓国ノワールとしては圧倒的にアクションシーンは少ない。そうこれは、チョ・ジヌン演ずる地方政治家ヘウンが口一つでのし上がろうとする姿を描いた映画である。最初の方、無所属で立候補した国政選挙で落選するまでは、コメディ的なニュアンスもありどこか頼りないイメージもあるが、後半、イ・ソンミン演じるところのフィクサー、スンテと五分に渡り合いだんだん貫禄が出てくる。弟分でヤクザのビルドに何度も「お前は体を使え、頭は俺が使う」といっている割にはあまり頭は良くは見えないが度胸だけはある。まさに死線を越えた政治家なのである。
そういう意味では、スンテが最初に彼の公認を外させたのが判断ミスであって、最後には地方政治のあるべき姿、バランスに戻っていく過程を描いた映画であるともいえる。そこでは市政、企業家、ヤクザ、警察、検察などの上に君臨するいわばヒエラルキーの最上位者が政治家であること、またスンテのようなフィクサーを通して中央が地方をコントロールしていることも描かれ、韓国政治の姿をリアルに表現しているということになるのかもしれない。マキャベリズムというべきなのだろう、気持ちの良いほど正論にとらわれていない映画である。
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