動物界のレビュー・感想・評価
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パンデミックを経験した私たちにならわかる、『もののけ姫』など(宮崎駿)ジブリ映画のように人間と他の動物を含む自然の共生共存・調和を、美しく壮大に描いたSFドラマ
予告でも使われている冒頭シーンから引き込まれ、題材(アイデア・プロット)などギミック頼みになることなく、ゴリゴリのCG・VFX祭になることもなく、根幹にある家族ドラマ(思春期の戸惑いから親子の絆へと)が胸を打つ。そして、最後の切なくもなんとも言えぬ解放感(カタルシス)たるや…!
主演はフランス映画界を語るうえで欠かせない人気俳優ロマン・デュリスだけど、物語的な主人公・視点人物となる息子エミール(髪型もあって少しミック・ジャガーに見えたり)の身に降りかかる葛藤もまた、成長という普遍的なもの。彼の演技に特殊メイクも良かった。
ポスト(/with)・コロナという時代、環境も生態も破壊されていく今日おける予測不可能性。人種や移民だけでなく原因不明・治療法のない病気などで、ある日突然いつ誰が迫害されてもおかしくない世の中で、そうしたあらゆるメタファーのように動物になっていく人々。そう、これは決して単なるフィクションではない(映画とはそういうものだが)。
猫を炎に投げ入れてはそれを見て楽しむとかいうイカれた過去の風習に象徴される人間の不寛容・狭量さ。高く燃え上がる火柱というビジュアルも、視覚的にKKKの十字架を燃やすという行為を想起させた。
最悪だな。世も末だな。
ラナ!ママ!
75点ぐらい。動物へ変異する奇病
人類に対する他動物からの復讐か?
良質な童話
エミール
アニマライズのリアリティラインが絶妙。コスプレでもなく猫化人間でもなく恐怖を感じさせるデザインが良い。
音"声"の演出も素晴らしい。
南フランスの湿地帯の映像も綺麗。後半のエミールがたどり着いた先のワンショット映像もさりげなくすごいことをやっている。
ラストは細田守監督作「おおかみこどもの雨と雪」を思い出した。
コロナパンデミック化に考えられた作品ということで、人と人との分断、都心から離れ自然へ回帰するような展開に納得した。
冒頭のフィクスへ抱いた恐怖が分断そのもので、後半自然とそれが紐解かれていく展開も良い。
ルソーの著書「エミール」にちなんだ子供の自由を願う思想が詰まっている。(カエルと言われた子供が実は〇〇〇〇〇でやはり生き残る。)
ただ全体的に少し単調だったのと、本作は特別に何か回答を提示しているわけではないのでここはもう少し具体的に踏み込んで欲しかったところ。ただし!ラストのポテチを頬張り息子を送り出すロマン・デュリスは最高。(ここ最近の脱加工食品キャンペーンをひっくり返してくれるチャームポイントも好きだ。)
ただのパニック映画ではない
人間がいきなり動物になる奇病が流行っている世界の話。新種の生き物が現れたことによるパニックスリラーかと思いきや、家族愛の話やった。エミール役とお父さんが熱演。
徐々に自分を抑えられなくなるエミールに対し父がした行動が…あのお父さんはとても人格者やと思う。
元が人間だとしても、危害を加える可能性があるとわかった瞬間排除する対象になってしまうのがやりきれない。
コロナの時も思ったが、こういった予期せぬ事態が起きた時に人間の根っこの部分が現れるなと。疑心暗鬼になる人、不安を煽る人、客観的な人、他人に救いの手を差し伸べる人、色々な人がいるけれど自分は冷静でありたいなと鑑賞しながら考えていた(実際難しいけど😅)
お父さんと息子が泣きあうシーンが切なくて…最後の余韻も含めて好きな映画でした!上映館が少ないのが残念。
わんちゃんも名演技でした🐶
半信半疑、からの?
劇場で数回トレーラーを(何気なく)観ていて気になっていた本作。ただ、正直なところ「半信半疑」ではあったものの、第49回セザール賞最多12部門ノミネートおよび第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門オープニング作品選出、という実績を信じて劇場鑑賞を決めました。公開初日11時25分からの回、ヒューマントラストシネマ有楽町はそれなりの客入りです。
と言うことで、観終わっての感想は「思いのほか良かった」ですし、終わりはちょっと泣きそうになりました。
この手のギミックとテーマは決して新しいわけではありません。ストーリーも実にシンプルで解りやすく、共感を煽るような押しつけがましさもないため、素直に受け入れられます。また、物語中「新生物」と呼ばれる変異体についても、序盤こそ恐怖を感じさせる演出が数シーンありますが、それも一辺倒ではなく、エミール(ポール・キルシェ)の変化と成長に伴って、「出会い、コミュニケーション、信頼関係、友情・愛情」という展開に、自ずと「共生」を願う自然な流れで共感できます。ポール・キルシェ、素晴らしい演技です。『Winter Boy』、私、これ配信待ちにしてしまってまだ未見なんだよな。。今後が楽しみな俳優ですね。
そして、何といってもエミールの父・フランソワ(ロマン・デュリス)の絶対的な家族愛の強さですね。家族の不幸に落胆するどころか、諦めずに家族の幸せを強く願う姿が観ていて実に尊い。全力で妻の名前を呼び、息子が笑っている姿を見ながらこれ以上なく幸せそうなフランソワに涙が誘われます。ロマン・デュリス、今作も最高のアクトです。
その他にも、ジュリア役のアデル・エグザルコプロスを始め、ビリー・ブランやトム・メルシエら、助演も皆さん印象に残る演技で鉄壁の布陣。
いやはや、鑑賞前の不安はどこ吹く風。爽やかな秋の午後を歩きつつ、エミールの未来に希望を抱きながら余韻に浸りました。良作です。
棘抜くシーンは苦手だけど、最後に感動
設定で終わることない深い内容
観た人はきっと、自分ならどんな動物になりたいかと考える
予告編に魅了され、公開初日に映画館にて鑑賞。
冒頭わずか数分で、人間が動物化した「新生物」の姿と、人間とは比較にならない力の強さを有していることが示され、主人公の少年の母、父親にとっての妻が動物化しつつあり、入院中の病院から新生物収容施設にほどなく移されることが明かされる。
ストーリーはシンプルで、父子のやりとりや、関わり合う人々の言葉・態度から、新生物を恐れ、穢れたもので既に人間ではない存在とみなしている人が多いことが伝わってくる。このような奇病の原因やどんな人が罹患するかなどの説明は、映画内ではほとんど無い。人々はすでに事態を受け入れざるを得ないとわかっているのだ。そして、この現象が世界的に広がりつつあることや国により対応が異なることなども明かされるが、主人公たちの周囲では新生物は獣同様と疎まれ、捕獲対象であり時には狩られる。家族内に罹患者がいることは必死に隠さなくてはならないのだ。家族、あるいは親しい人、好きな人が新生物になったら自分はどうするのか。あるいは自分が動物に変化しようとしていると気づいたら。
…改めて言葉にしてみると、この「新生物」化現象を、今の社会で差別され虐げられがちな存在のメタファーとして受け取るのは容易い。例えば罹患すれば外観を著しく損なう病や、ある種の感染症の患者。例えば少数民族や様々なマイノリティ属性の人々。そのような深読みをしてももちろん面白く観ることのできる映画だと思う。
動物化といっても、完全に動物になるわけではないようで、人であるとわかる変貌の度合い、つまりは混じり方のビジュアルが人々に恐れられていた模様。が、一見醜怪に思える異形の姿はそれこそが新しい生き物であり、現代社会の中で脆弱化した人類にとって代われる可能性があるのかもしれない。その可能性が脅威だから、必死に彼らを囲い込み、排除しようとしたのかもなあ。
などと観終わればあれこれ思いつつも、観ている間は動物化した人間の美しさや力強さが描かれた映像が実に魅力的で、観飽きなかった。特に、鳥の人の飛翔場面と、終盤、逃げ出した新生物たちが森の奥にひっそり身を潜め生きようとしている場面は、再びじっくりと味わいたい。動画配信されたらまた観よう。
人間界も動物界も天国であり地獄
《試写会にて鑑賞》
素晴らしい作品を観ました。
まさかこんなに泣くとは…。
新生物との友情と父の愛に感動。
原因不明の突然変異で人類が動物化。
変容する過程、親子の苦悩と葛藤が
丁寧に描かれていました。
多ジャンルの融合とリアルな社会問題にも触れています。
共存か排除か。隔離か自由か。
それぞれが窮地に立たされた時、
何を優先し、選択して生きるのか。
現代のリアルな目線でストーリーを追うことができました。
また、美しいVFXや緻密な特殊メイク、息づかいが表現されている劇伴も素晴らしかったです。
終盤、新たな生存と受容に直面する家族に大号泣。
生きることについてとても考えさせられるストーリーでした。
因みに犬は無事です。
アルベール賢すぎます!芸達者!
《上映後のトークにて》
元は脚本コンテストに参加し、優勝した学生の原案だと聞いて驚きました。
最初は朝と夜で変化がはっきりとわかる狼男の設定だったらしいのですが、審査員だった監督が作品を制作するにあたり徐々に獣化する設定に変えたそうです。
また、様々な作品に影響を受けながら動物界を制作したとのこと。いくつか上げられていましたが、もののけ姫の名が読み上げられた時は深く納得しました。
まさに”生きろ”です。
進化なのか退化なのか、それとも…
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