ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー

劇場公開日:

ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー

解説

世界的ファッションデザイナー、ジョン・ガリアーノの栄光と転落に迫ったドキュメンタリー。

ジバンシィやクリスチャン・ディオールといった世界的ブランドのデザイナーに次々と抜てきされ、「ファッション界の革命児」と呼ばれたジョン・ガリアーノ。しかし絶頂期の2011年2月、反ユダヤ主義的暴言を吐く動画が拡散、その後有罪となってブランドから解雇され、すべてを失った。事件から13年を経て製作された本作では、ガリアーノ本人へのインタビューを通して暴言の背後に何があったのかを明かすとともに、彼の人間性にも鋭く踏み込んでいく。さらに、デビューから各ブランド時代のコレクションを収めた貴重なアーカイブ映像でガリアーノの栄光の軌跡を振り返りながら、彼を診断した精神科医や、現在も心の傷が癒えないという事件の被害者にもカメラを向ける。

監督は「ブラック・セプテンバー 五輪テロの真実」で第72回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したケビン・マクドナルド。

2023年製作/116分/G/イギリス
原題または英題:High & Low - John Galliano
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2024年9月20日

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映画レビュー

3.5ガリアーノの人物像にじっくりとにじり寄る

2024年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

恥ずかしながら私はファッションに詳しくないし、ガリアーノについて深い知識を持ち合わせているわけでもない。それゆえ13年前に世界を駆け巡った彼に関するニュースについて詳しく認識しているわけではなかった。が、劇映画のみならず優れたドキュメンタリーを放つマクドナルド監督が入念に手がけた作品だけあって、かのファッション界の革命児と呼ばれた人物について、実にわかりやすく提示してくれる。その点、ファッションの専門性に特化しすぎることなく、ニュートラルな視点で開かれた良作と言えよう。肝心の事件だけを見つめるのではなく、そこへ至る過程や彼が辿った半生と、業界の絶頂に君臨して徐々に身を崩壊させた日々、さらには事件後の日々についても本人や関係者のインタビューを交え詳述することで我々の視座は点ではなく一本の線となる。決して解釈や人物像を押し付けることなく、彼をいかに判断するかを観客に託するような筆致が印象深い。

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牛津厚信

4.0ガリアーノだけに、無類におもしろいドキュメンタリーに仕上がっている一作

2024年12月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ディオールなどの有名ブランドのデザイナーとしてファッション界に君臨していながら、2011年の舌禍事件で表舞台から姿を消したジョン・ガリアーノ。破天荒な人生と現実感を失うほど煌びやかなモード界など、取り揃えられた材料を見ると無類に面白い作品になることは鑑賞前から想像がおそらくその期待通りの作品です。 ガリアーノ自身の回想という形で展開する映像は、彼が心酔しているというアベル・ガンスの『ナポレオン』(1927)の映像を差し挟みつつ(彼の人生が驚くほどナポレオンと重なり合っていることがわかる)、非常に無駄なくキレが良い編集を施しており、結果として最初から最後まで目の離せないドキュメンタリー作品となっています。 多大な業績を成した人物のドキュメンタリーは、往々にしてストーリーを見失いがちになったり、抽象的で退屈な賛辞のつるべ打ち、になりがちなんですが、本作はガリアーノのデザイナーとしての才能と業績をきっちり見せつつも、彼の到底許容できない人間性の欠落をも容赦なく暴き立てています(しかも本人は全くその自覚がない)。 舌禍事件前後の彼の言動がいかに不適切なのか、インタビューを受けるガリアーノ自身の言葉で明らかになる過程が非常にスリリングで、突っ込みどころも満載。まず謝るべきはその人じゃないだろ……、とか。 彼のキャリアを網羅した映像、写真のパッチワーク的編集は、目まぐるしいけどまさに眼福。ショーの場面を見るだけでも十分にチケット代に見合った満足感が得られます!

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yui

4.0ガリアーノとマックイーンとマルジェラと

2024年12月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

稀有な才能と莫大な資本と果てしない仕事量をこなせる体力が見事にかみあって、すばらしいコレクションとものすごいエネルギーをうみだしたけど、そんなものすごくあやういバランスのうえになりたつものが長続きするわけもなくて、なんかもう何もかも終わらせたくなっちゃったのかもしれないなあなどとおもった。 (だからといって誰かを傷つけていいわけでは決してないけれど) マックイーンの終わらせかた、マルジェラの見事なひきぎわ、そのどちらでもなく、ガリアーノは続けることを選んだ。 続けることが、たぶんいちばんしんどい。

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kikisava

5.0悪ノリと 閃き気質のデザイナーの顛末

2024年11月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

彼のデザインの系譜を楽しめて良かったです。 Diorのヴィンテージをネットショッピングすると、「エティ期」「ガリアーノ期」とタグが付いていますよね。 ガリアーノは古着のTシャツを持っていますし、“騒動”のニュースも聞いていました。 メゾン・ディオールが、ユダヤ人をヘイトした彼を追放したのは当然でしょう。 あれは世論や情勢に配慮してブランドの自己防衛=トカゲの尻尾切り=をしたのではありません。 ディオールは、実は筋金入りです。 ムッシュ・ディオールの妹は、大戦中にあのヒトラーに抵抗するパルチザンとしてナチスドイツに捕らえられている。そして、収容所から生還してきた。その人なのです。 妹を記念してあのピンクの香水は「ミスディオール」と名付けられました。 ガリアーノの場合、歴史、ことにヨーロッパの近代史をお勉強して来なかった=どこにでも居る現代っ子が、自分の不勉強のしっぺ返しを受けたのです。 しかし、 我が国 日本ではどうか。 「Yahooニュースサイト」のコメントを見ると、中国や韓国への、驚きの罵詈雑言。そして脅迫と排斥の「ヘイト発言」がまかり通っていて、 ホロコーストや南京はデマだと論じる彼らからすればジョン・ガリアーノは英雄の扱いになるんでしょうね。 彼らの生き方には世界共通。同じパターンがあるようです。 卑屈なんです。 父親や祖父たちの、ふとこぼす差別発言=家庭内迷信は信じているけれど、そこから脱するための自分自身での勉強をしていない。 そして踏みつけにする対象を持たないと自分を保てない。 これでは本当の意味で人を幸せにする服は作れないでしょう。 ・・・・・・・・・・・・・ ファッションスペシャリストと音楽家の《恋》と《失言》と《回復》のドラマとしては、他作、マッツ・ミケルセンの「シャネル&ストラヴィンスキー」が面白いです。オススメです。

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きりん

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