「伝統的な宗教の寺院において、ここまで攻めたら怒られると思う」フンパヨン 呪物に隠れた闇 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
伝統的な宗教の寺院において、ここまで攻めたら怒られると思う
2024.7.8 字幕 アップリンク京都
2023年のタイ映画(107分、G)
行方不明の兄を探す弟が、奇妙な風習に遭遇する様子を描いたホラー映画
監督&脚本はポンタリット・チョーティグリッサダーソーポン
原題の『หุ่นพยนต์』は「魔法によって生き生きとした人形」、英題の『Hoon Payon』は「古代から存在するお守り人形」のことを指し示す言葉
物語の舞台は、タイのドン・シンタム島にあるテパヨン寺院
兄ティー(Pratrawi Seekiaw)と音信不通になり、心配になった弟ターム(プーウィン・タンサックユーン)は、兄が出家した寺院を訪れることになった
そこでは伝統的な呪物フンパヨンを作り、ポープー様という神様を崇めていた
村に着いたタムは、寺院の僧侶で住職のルアンナー(Sivanwong Piyacaysin)から歓迎を受け、彼は案内係としてテ(プーンパット・イアン=サマン)を付かせることになった
寺院の裏手では、ジェット(クナティップ・ピンプラタブ)が村人に渡すフンパヨンを作っていて、この呪物は願いを叶える効用があると同時に、込められた念が邪悪なものだと、呪いが降りかかるものとされていた
村人の中では、それが紛い物であると主張する者もいたが、多くの村人たちは、ポープー様を信じて、足げく寺院にお参りに来ていた
ある日、村のはずれにて、修行僧のクン(Nuttawalt Thanathaveepi)が樹木に首を吊って自殺したことがわかる
その現場は異様な光景で、にわかに自分でやったとは思えなかったが、殺害を思わせるようなものはなかった
クンの遺体は丁重に扱われ、埋葬されることになる
だが、タームは一連の寺院の様子から、何かしらおかしなことが行われているのではないかと、疑い始めるのである
映画は、宗教に懐疑的な主人公、宗教を悪用する犯人という構図になっていて、そのカラクリが最終的に判明する流れになっている
とは言え、イヤミス系の終わり方をするので、消化不良な結末が嫌いな人にはおススメできない
プンパヨンが何かわからなくても問題なく、念の籠った手作りの人形とさえわかれば問題ない
自分の想いが届かないとわかった犯人が逆に呪いをこめていくのだが、その被害者がさらに過酷な目に遭っているのはえげつない
パンフレットがなく、ポープー様が何の宗教なのかよくわからないが、タイ語で色々ググっていると、検閲を通過していない作品のようだった
いくつかの修正が必要になっていて、「僧侶が下品な言葉遣いをする」「テの食事を混ぜていじめる」「女性をハグするシーン」「盗んだ人を殺す際に五戒を唱える」など、色んな場面で引っ掛かっているようだ
公開された映画では、これらのシーンはすべて残っていたので、意外と国内版は修正されているものかもしれません
いずれにせよ、どの視点で観るかによって評価がわかれると思うが、ざっくりと宗教家が教義を無視して、宗教を悪用している映画なので、某団体からクレームが来てしまうのはわからないでもない
死体でフンパヨンを作るのもたぶんアウトな描写で、客観的に考えれば結構攻めている内容に思える
表現の自由もさることながら、村人を宗教の力を悪用して洗脳しているようにも思えるし、その他にも修道士たちの目に余り過ぎる行動が目立っていると思う
呪物の悪用などはどこの宗教映画でも見られると思うが、本作は色々と行き過ぎているところがあるので、エンタメと割り切れない人にとっては厳しい評価になるのかな、と感じた