「平泉成さん主演とは名ばかりで、物語は太一の話がメイン。だが平泉成さん良かったし、ハッピーエンドで終わるのも良い。おかげで「朽ちないサクラ」を見た暗い気分がスッカリ明るくなりました。」明日を綴る写真館 マサヒロさんの映画レビュー(感想・評価)
平泉成さん主演とは名ばかりで、物語は太一の話がメイン。だが平泉成さん良かったし、ハッピーエンドで終わるのも良い。おかげで「朽ちないサクラ」を見た暗い気分がスッカリ明るくなりました。
平泉成さん(80)、草笛光子さん(90)と、年齢が高い人が活躍してるのを見ると、こちらも元気になる。
最後は、特にナルホドなと頷ける理由もないのに、ナゼかバタバタと上手く行って、とにかくハッピーエンドで終わらせた感じがした。だが、明るい気分になったのでOK。
カメラマンの太一は自分が納得する写真が撮れないからご機嫌ナナメだ。大賞を取った作品でさえお気に召さない。クライアントやマスコミ、ファンの前でも仏頂面だ。いい作品が出来ないのにヘラヘラしてられッかという案配だ。芸術家なのでしょうがない。そこをマネージャーの林くん(田中洸希さん)がニコニコとりなす。
ある日、太一は一枚の写真の前で立ち止まり釘付けになる。笑顔の女性がショーケースのケーキを嬉しぞうに眺めている写真だ。彼が求めていたモノがそこに有った (ようだ ^^ )。僕には聞こえないが、素晴らしい写真は音を奏でるるらしい。
「ホントは写真の中の女性に見とれてただけじゃないのぉ?」 などと、高尚な芸術家の対極に位置する僕は思ったりするのだが、こういうのを下衆の勘繰りという。
鮫島(平泉成さん)は弟子入り志願する太一をケンモホロロに門前払い。してたハズなのに、いつの間にか、なし崩し的に弟子入りしてて、気が付けば鮫島家で食卓囲みビールなんか飲んでる。
「ええー、一体どんな魔法を使ったんだ?」とは思ったが、太一が機嫌よくニコニコしてるから詮索はすまい。
太一は念願かなって(と僕が勝手に思ってるだけだが)、写真に写ってたケーキ屋のねーちゃんとも知り合いヘラヘラしてる。彼女を撮ったカメラマンに弟子入りして、被写体の子とお近づきになるとは、「手の込んだ新手のナンパか」などと鑑賞中に突っ込んだりずる。
太一。とりあえず3ヶ月だけどプレッシャーのかかる仕事からは解放され、お目当ての(と僕が勝手に邪推してるだけだが)のケーキ屋の女性とも知り合いになり万々歳である。そりゃ不機嫌なブッチョウズラから、ご機嫌なニコニコ顔にもなるわな。
太一は思春期に母親が仕事で忙しく、さみしい思いをしたことがトラウマになっている。
僕なぞ 「太一、こんなに若くてキレーなおかーさんの、一体どこに不満があるんだ? 罰当たりめ。オレは黒木瞳さんがママなら、ずーっと子供のままでいイイぞ。」などとフラチなファン目線で思ったりする訳だが、そういう話ではない。
このトラウマも、小さい頃に見た思い出の写真が突然、手品のように現れたりして、何となく良かったネ、みたいな感じで終わる。
「黒木瞳ぃ~、その上写真オマエが隠し持ってたんか。ワシと太一は小さい頃からずーっと探してたんやぞ。何で早く出さんかのう。今頃出しおって、遅いわ」などと思ったりする。
とにかくハッピーエンドの親子再生物語(その1)である。
以前、黒木瞳がTVドラマ「透明人間」で慎吾くんの母親役だったときにも驚いたが、今回の太一の母親役にも驚いた。女優は美しいまま年を取らない人種らしい。
今、NHKドラマでは吾郎ちゃんの母親役でもある。あと剛クン、中井クン、キムタクの母親役をやればコンプリート。
佐藤浩市さんの「ぎこちない笑顔」を演技する場面の「ぎこちない笑顔」が、ホントにぎこちない笑顔で面白かった。
出番は少なかったが、物語上1番大変でお疲れだったのは、太一のイケメンマネージャー林クンである。
無愛想で素っけない太一の代わりにクライアントとファンに気を使い、3ヶ月先までのスケジュールのキャンセルなどという太一の暴挙を一手に引き受け(頭の上げ方を忘れるぐらいペコペコし続けたと思う)、いつ戻ってくるかも分からん太一を待ち続ける。ご苦労様 ×100倍。
「太一あり得ぇぇぇん」と、言いたくなる気持ちをグッとこらえて笑顔で対応。
太一君は、何となくまだ以前の仕事には戻ってないような気もした。ガンバレ林くん。
平泉成さん演ずる鮫島の若い頃は、正に家庭をかえりみない昭和の仕事人間。かつてモーレツ社員、企業戦士なんて言われてた世代。今では社畜などといって蔑まれるが、まぎれもなく日本の高度成長時代を支えていた世代だ。
鮫島は組織に属さないフリーのカメラマンのようだったが、パートナーも息子もほったらかしで仕事優先。たまに家に帰ってきたと思ったら、機材を取りに来ただけでスグ出かける有り様だ。
当然息子の直哉とはうまく行ってない。直哉にしたら家庭を犠牲にして自分の仕事だけをしていたクソオヤジである。自分と母さんに寂しい思いをさせた事を今でも許せないでいる。
だが、ナゼだかこちらも和解が成立して、親子の再生(その2)となり、めでたくハッピーエンド。
ラストの結婚披露宴、太一ドラム叩いておおはしゃぎ。 ♪ヽ(´▽`)/
太一、オマエそういうキャラだったか? 明るい気分で劇場をあとにする。
僕はスマホのカメラも含めてほとんど写真を取らないので写真の事は分からない。だがら、プロのカメラマンがモデルを撮影するときに、何であんなにいっぱい写真を撮るんだろう、プロなんだから10枚も撮ればいいのにと思っていた。
だけど、最近本屋で立ち読みした本で、全く逆であるのを知って驚いた。100発100中でイイ写真を撮ることなどプロでも無理で、ましてや数枚でうまく撮れるわけがないらしい。だからバシャバシャ100枚も200枚も同じ被写体撮って、後からじっくりイイ写真を選ぶんだそうだ。僕たちがプロが撮った写真として目にするのは何百枚から厳選された1枚ということだ。
1番ダメなのが、撮るたびに一枚一枚確認しながら撮る方法らしい。確認してる暇があったら、どんどんバシャバシャ沢山撮れって書いてあった。言われてみればナルホドで、目からウロコである。今はフィルムじゃないからバシャバシャ出来そうである。
だけど普段まったく写真を撮らないから自分には役に立たない知識ではある。
僕は本屋や図書館に行くと、自分が興味、関心がない本も見るので、自分にはまったく役に立たない知識のみ増えていく。
2024/6/24(月)鑑賞 イオン日の出。