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「タイトルに隠された「転」」ブルーピリオド R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0タイトルに隠された「転」

2025年2月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

やはり漫画の実写化でしたか~
基本的には面白かった。
この作品にみる起承転結のなさ、転がないという不思議さを感じた。
確かにそもそも芸大を目指すことに決めたなら、そこが物語のゴールである場合、転など存在しにくいだろう。
この部分の是非はある。
さて、
最も難解なのがタイトルだろうか。
主人公矢口が見た渋谷の朝
彼の高校生活の基準の夜遊びと美術の宿題「私の好きな風景」
絵画と出会い、微妙に気持ちが揺れ始めた矢口
そもそも作品など提出する気もなかったのかもしれなかったのに、あの日渋谷で見た朝の青さが記憶に残っていた。
自分だけが知るあの光景 あの日 あの瞬間
提出した作品は四角い升目を書いて青で塗りつぶしただけのものだったが、何故か見る人に印象を残す作品になる。
勉強しなくても成績優秀 おそらく簡単に国公立に入れる。
でもいつも感じる「手ごたえのなさ」虚無感
「美大に将来性はない」
「誰の意見?」
「周りに合わせるの、よしなよ」
俺にとっての価値 俺にとっての感動 本当の気持ち 本気になれるもの
好きなことを人生の一番のウエイトに置くこと
作家は、誰かの価値観で生きている若者に対し、この作品でそうじゃないよと提言したのだろう。
そして、
矢口が自分のやりたいことを発見したきっかけとなった遊び惚けて見た渋谷の空、夜明けの空、青の世界を従来の自分の価値観として、そんな過去に決別したのだろう。
つまりタイトルが示しているのは、過去との決別なのかもしれない。
そこに「転」があった。
この作品の型は、起 転 承 結
さて、、
身も蓋もないが、お金の問題と国公立
普通の国公立に行って美術部に入れば? とも思ってしまった。
芸術に対する他人の評価はネガティブにしかならないように思う。
肩の力を抜けば、あるいはもっといい作品ができるかも。
ただ、
そこまでの決心があったからこそ物語を紡ぎだすというのはわかる。
あの諦めた仲間たちが芸大に入って夢見たいものとはいったい何だったのだろう?
そうでなくてはならない根拠を知りたいと思った。
コアな世界ではある。
でもそうじゃなきゃいけないことなど何もないのではないかとも思う。
物語の中に、そうじゃなきゃいけない理由と、一般大学の美術部を選択した誰かがいてもよかったように思った。

R41