「描くと言う事」ブルーピリオド かぼさんの映画レビュー(感想・評価)
描くと言う事
原作はずっと気になって、買うか迷ってたヤツ。本作を観るにあたって2冊だけ試し読みした。
本作は勉学も人間関係もノルマをこなすのは得意ではあるが、ふとしたきっかけで美術の世界にふれ、芯の無い自分に気付いて絵にのめり込む主人公と周りの人々の話で、原作は群像劇的部分もあり既刊15巻でまだ続いている。
映画は東京藝大受験をメインとしている。
映画鑑賞中ずっと思っていた事は、芸術大学を目指した人以外はどう感じ、面白いのだろうか?って気になってました。
主人公が絵を描いてみて、初めて他者に理解される所が原作より割とアッサリ描写されてて、もっとエモーショナルな演出を予想してたので、透明じゃ無い自分の発露から描きまくるには弱いと思いました。
藝大の存在を知り予備校に通いだす中で、主人公以外の人の絵をちゃんと見せないので(石膏像デッサンは比較描写があるけど)、他者の技量や才能の差が分からない。
予備校内での順位に説得力が無いので、高橋クン(原作ではデッサンは抜群だが色を塗るとそれほどでは無い)が予備校を辞めるのも唐突に感じました。
新しい世界を知った主人公が、その熱量で才能を超えた努力(それも才能だけど)で成長する様で見る者を引っ張り結果感動する話なのですが、映画においては結局、勉学や人間関係のノルマを起用にこなす様に受験をこなしたとも感じました。
高橋クンの言う『美術じゃ無くても良かったクセに』は正にその部分で、その熱量が自己表現から受験にすり替わってる指摘と私は思ったのですが、映画の主人公は怒るだけでした。
原作は15巻も続いているので、触れていると思いますが、受験に於ける自己表現や対策等と自分の作品と言える自己表現は根本が違う事が映画では誤魔化されていると感じました。
主題や課題を他者に与えられて描く事と、自分の内や外の問いや答えを魂から引き出し描く事は全く違ってて、それこそ芸術に正解は無いところです。
映画で表現されてた事は、自己表現の喜び苦しみから、いつの間にか受験合格がゴールの様になってました。
そこに感動を持ってくるとお受験映画になってしまいます。
これから始まる自己との戦いを匂わして終わって欲しかったです。