「NOISE」ブルーピリオド ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
NOISE
実写化される範囲の原作を読んでから鑑賞。
簡略化こそされていましたが、原作の良さを引き出しつつ実写ならではの体現もしっかりされていて、総じて良い実写化だったなと思いました。
美大に入るまでに振り落とされる残酷な様子はそれはそれは生々しく描かれていて、受験での落第とかに遭わずに過ごしてきた自分でもウッと胸を押さえてしまうくらいには辛い描写が多かった気がします。
どれだけ自分の全てを詰め込んだ絵だとしても、言葉一つであっという間に駄作に思えてしまって全てを投げ出して逃げてしまいそうになるリアルさはジャンルは違えど体験したことがあるので、スポーツなり文学なり熱中して挫折をしたことがある人間なら誰しも刺さるんじゃないかなの連続でやられっぱなしでした。
八虎をメインに描くというところで仕方ないっちゃ仕方ないんですが、どうしても原作では重要な立ち位置なんだろうなというキャラが背景とまではいかないまでも細かく描写されないので、物語上機能している風には見えませんでした。
予備校での出会いとかもっと描かれていたら八虎の成長をグンっと感じられただろうなと思うと勿体ないと思ってしまいますが、それをやってしまうと1本の映画には収まらない気もするので仕方なしかなとは思いました。
おそらくフィクションなんかじゃ刃が立たないレベルの難しさである藝大合格までの流れがサラッといってしまったのだけは勿体ないなと思いました。
時間の制約という厳しい問題はありましたが、八虎に焦点を当てるがためにそこへの努力する人たちがサクッと描かれていたのはこの作品の重みがうまいこと伝わらないんじゃないかなと思いました。
森先輩とのエピソードが端折られているせいか、絵を描く事への熱がどうにも削がれてしまっていたのはかなり気になりましたし、桑名さんとのやりとりも少数だったせいか戦友みたいな感じの雰囲気を出されてもう〜んとなってしまうのが残念でした。
原作者が実写の世界を尊重してくれたおかげで、コスプレ感のない仕上がりになっていたのは唸りました。
郷敦くんの飢えに飢えた感じの無気力さから熱を帯びる姿までどれも見事に演じきっていて凄かったですし、高橋くんなんか本当の女子なんじゃレベルの細さと振る舞いが本当に素晴らしく、ゼロワンの時からのお付き合いですが本当にすごい役者さんだ〜となりました。
江口のりこさんの先生の雰囲気も踏襲されていてお見事〜ってなりました。
ブルーピリオド入門編のような立ち位置で、原作にそこまで触れてない自分でも若干の物足りなさを感じましたし、原作を愛読している人は難色を示す作りなんじゃないかなとは思ってしまいました。
とはいえ、一つの物事に打ち込む熱はしっかりと感じられましたし、原作の世界を壊さないように慎重に作られた丁寧な実写だったと思います。
続編も期待したいところですし、ドラマとかでやってくれたらな〜と思いました。
鑑賞日 8/12
鑑賞時間 16:15〜18:25
座席 F-3