劇場公開日 2024年8月9日

「ひとえに眞栄田郷敦は美しい」ブルーピリオド えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ひとえに眞栄田郷敦は美しい

2024年8月10日
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鑑賞方法:映画館

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ソツなく器用に生きてきた高校生・矢口八虎は、美術の授業の課題「私の好きな風景」に困っていた。悩んだ末に、一番好きな「明け方の青い渋谷」を描いてみた。その時に絵を通じて初めて本当の自分をさらけ出せたと感じ、美術に興味を持ちはじめ、のめりこんでいく。そして、ついに国内最難関の美術大学への受験を決意するのだが…。
立ちはだかる才能あふれるライバル達。正解のない「アート」という大きな壁。経験も才能も持ってない自分はどう戦う!? 八虎は【自分だけの色】で描くことができるのか(公式サイトより)

原作でいうと、6巻までの内容がコンパクトにまとまっている。本作でキーとなるシーンは、主人公の矢口八虎が絵画に目覚め、一心不乱に絵を描く場面だが、主人公の「顔」を様々なアングルからの「寄り」で見事に表現しきっている。この演出を支えたのは、ひとえに眞栄田郷敦の美しさある。若かりし頃の小栗旬(例えばクローズ・ゼロ)や岡田将生(例えば重力ピエロ)を彷彿とさせる透明感と危うさがあった。

主演の郷敦をはじめとするキャスティングは原作内での人物像や彼らの背景にある物語を彷彿とさせる演者を揃えており、たくさん登場する絵画作品の見せ方などにも好感が持てた。コイちゃんとのカフェのシーンは秀逸である。

賛否が分かれるとすれば、原作では、表現者本人を時には死に至らしめ得るほどの加虐性を持つ芸術へ向かう覚悟がしばしば残酷に問われるのに対して(それゆえ、原作にはやや難解な表現が多い)、映画では原作未読客にも分かりやすいストーリープロットが優先されており、そこまでの混沌さは描かれていない点だろうか。アートに対するスタンスも、原作では悪魔的な取り憑かれ感、抜け出せない感が要所で登場するが、映画ではどちらかというとポジティブな、自己との邂逅感やカタルシス感が強い。

この「映画.com」内にある、原作者と主演の眞栄田郷敦の対談が結構面白いのでそちらもぜひどうぞ。

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えすけん