「作品は面白いが色々と思う」ブルーピリオド Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
作品は面白いが色々と思う
最初の主人公が大過なく過ごす生活がホントつまんなそうに描かれるのね。これを「つまらない」とされると困っちゃう人は多そうだね。
そんな主人公が絵に目覚めていくシーンはいいね。桜田ひよりがうまい。
そこからは、とにかく描いて描いて、普通なら心が折れそうなときも描く。
これだけ情熱が続くってことが、もう才能なんだよね。
主人公は「俺には才能はない」って言ってるんだけど、そんなことないの。
油画はコンセプチャルまでいかないけど、イメージの解釈みたいのが重視されんのかな。
主人公は悩んで、深いところでイメージを解釈するから、技量は足りてないけど作品は良いんだってことで、進んでくね。
「俺にしか描けない画がある」ってやってくんだけど、これが創作の肝だよね。これが見つけられたら、作家になれる。
芸術作品の創作って、学問に似たところがあると思うの。先行研究を踏まえて、先人がやっていない何かをそれに付け加える。だから描くのも大事だけど、作品観るのも研究するのも大事だね。
しかしそれは「これを描きたいんだ」という衝動で描くことと矛盾する点もあって、その辺が難しいよね。
あと出てくる絵が「その絵で、そこまで心が動くかな」と思っちゃうのね。
普段、目にする絵は、美術館に収蔵されるレベルの絵だから、それと比べちゃうんだよね。
さすがに「芸大に入れるかどうか」という人の作品が、そのレベルにくることはないの。
「すごい絵だ」というのを、実際に映像として見せなきゃいけない難しさがあるね。
でも、そこは少しは引っかかるんだけど、話の面白さで引っ張ってもらえるから良かったよ。
映画を観ていて思ったのは、作品のレベルが美術館に収蔵されるレベルには及ばず、芸大に入ったからといって、その先はどうするのか。彼らにとって本当に厳しい日々は、芸大入学後に始まるんじゃないかと思ったな。
あとは絵画というジャンルにこの先はあるのかどうかね。どんなに技量が高くても写実では写真に叶わない。コンセプチャルに振っていくなら油画にこだわらずインスタレーション含めた現代美術作品にしたらいい。そのジャンルに進んで、先人がなしえなかった何を付け加えるのかな。
そもそもの現代における絵画というジャンルの難しさは気になったけど、高校生が頑張る話として観ると、面白かったよ。