「知り得なかった世界」ブルーピリオド サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
知り得なかった世界
「線は、僕を描く」が懐かしい、情熱と努力で天才を越えようとする、夏にピッタリな超胸熱な青春ドラマだった。漫画、アニメと二大媒体で展開されている作品にもかかわらず、実写化が発表されるまで全く知らなかった。自分は相変わらずそれらの分野に疎い。どこまで原作の良さを引き出せているのか分からないが、少なくとも映画としてのまとまりが非常によく、漫画もアニメも見てみたい!と思えるものであったため、大成功と言えるんじゃないかな。
登場人物全員が活躍し、現実に沿って物語が完璧に描けている、という訳では無いため、これがブルーピリオドの最高点だとは思わないけど、主人公の葛藤や夢を追いかけることの苦しさ、何より芸術製作の難しさなど、抑えるべきところは抑えていたため、そういう面から見れば見事な取捨選択だと思う。
おかげでこの作品における最大のメッセージはド直球に伝わってくるし、インパクトも大きかった。ひとつの事に自分の全てを注ぎ、〈最高〉を目指して自分と戦い続ける。カッコよすぎるぜ、痺れるぜ。『てことは、まだまだ戦えるんじゃない?』と背中を押してくれる友達がいるって、全然違うよね。
漫画を実写化するとなると、果たしてわざわざ実写化する意味があったのか?となりがちだけど、本作は大いにあったと断言出来る。2000年以降生まれの若手俳優たちのアンサンブル。こうも役者たちが光り輝く映画は滅多にない。原作知らないけど、キャラと演技がマッチしすぎていた。
眞栄田郷敦は心に火がつく瞬間が顔で表現出来る、唯一無二の俳優。『俺の心臓はいま、動き出したみたいだ』が伝わってくる。板垣李光人はあまりに板垣李光人。キャラが定着しつつあるため、圧倒的な安定感がある。桜田ひよりの表現の多彩さにも驚かされる。なんで毎回完全なる別人になれるんだ...。高橋文哉はシャレにならないくらい可愛かった。美が爆発。脇を固める、石田ひかり、江口のりこ、そして薬師丸ひろ子もナイスキャスティング。バランスがいいなぁ。
情熱、という言葉にピッタリなWurtSの「NOISE」も最高だった。エンドロールが音楽に追いついてないのはかなり気になったけど。欲を言えば、もっと絵が見たかった。八虎の成長を見届けることは出来たものの、特にゆかちゃんはどんな絵を描く人なのかさっぱりだったから、彼がどれほど芸術に魂を捧げてきたのか、見てみたかった。まあ、それもこれも原作を読んでからのお楽しみということで。萩原健太郎の目に映る青春は、やっぱり青くて美しい。彼こそ、八虎そのものでしょう。「傲慢と善良」が楽しみすぎる🥳