劇場公開日 2024年9月27日

「ユーリズミックスのムダ遣い」憐れみの3章 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ユーリズミックスのムダ遣い

2024年9月28日
iPhoneアプリから投稿

「メタファーだよ、象徴的だろ」は、
「聖なる鹿殺し」か、
「ロブスター」か忘れたが、
バリー・コーガンのセリフだっただろうか。

ヨルゴス主導のシナリオは、
テーマもストーリーもまとまらないどころか、
それを言っちゃおしまいのセリフまで書いてしまう。

ジョークのような開き直りのセリフ、
(本作は、R.M.F)も駆使して、
ホラーすれすれの自己意識の暴発、
またはバックファイヤーの、不協和音を鳴らしながら、

登場人物の奇声、奇行、愛情の押し付けは罪なんだろうか等、
を観察者のフィクスのカメラで追っていた。

そろそろネタも無くなってくるだろうと、
予想していたら、
女王陛下の悪態、プアーな尊厳の解放を、
ワイドレンズ、必要以上の仰角、伏角を多用、テーマも狙いも明確だった。

それに伴う美術の造り込み、というアップデートを遂げ、
魚眼のようなパースで、
現代社会にも通じる人間の心の闇や歪みを象徴しているよう・・・
とこじつける事もできなくはなかった。

驚きは隠せなかったが、すばらしい作品だった。

ところが本作は、
ヨルゴス・ランティモスがなんだか初期化されたようで、
撮り方のカロリーも低く、

[愛情][人質][疑い][奴隷]プレイ等、

全体的に変な事はやっているが、
それが単なる「変な映画」の域を出ない。

今後、可能であれば、
バリー・コーガンやエマ・ストーンのようなキャラが活きるような、
女王陛下や哀れなるのような、
ちゃんとしたシナリオライターを起用するほうがいい、

もちろん、ジェシー・プレモンス、デフォー博士も・・観たい、

ホラーやスプラッタ未満の作品を観たいが、
無理な注文なんだろうか・・・

エマ・ストーンの【しらんけどダンス】は笑えた。

蛇足軒妖瀬布