「女優ナディーヌ・シュヴァリエ(ロミー・シュナイダー)の撮影現場に、...」最も重要なものは愛 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
女優ナディーヌ・シュヴァリエ(ロミー・シュナイダー)の撮影現場に、...
女優ナディーヌ・シュヴァリエ(ロミー・シュナイダー)の撮影現場に、ひとりのカメラマン(ファビオ・テスティ)が紛れ込んだ。
彼の名前はセルヴェ。
ゴシップ誌向けの写真を撮っているのだ。
ナディーヌは、一時期、名が売れたことがあるのだが、夫のジャック(ジャック・デュトロン)と結婚してからは、安っぽいエロチック映画に出演して日銭を稼いでいるのだ。
現場でナディーヌにひと目惚れしたセルヴェは、彼女を窮地から救い、輝きを取り戻してほしいと高利貸しから大金を借りて、彼女のための舞台を制作することにした・・・
といった物語で、アンジェイ・ズラウスキー監督作品ということで、怒声・嬌声が飛び交っての混乱・錯乱劇を予想しました。
たしかに冒頭の映画撮影現場では女性監督の怒声が飛んで混乱した様子が描かれるが、以降は意外とおとなしい。
それゆえにシーンごとのつなぎの粗さや演出の平板さが気になってしまう。
物語としては、下卑た稼業のセルヴェの純真さを描くことが主に描かれている(ように感じた)が、演じるファビオ・テスティが凡庸で魅力に乏しく、あまり興が乗らない。
一方、自分に魅力を感じていながら、手を出してこない(あまつさえ、初対面の際に、露骨に誘惑したが、乗ってこない)セルヴェに対して、逆に興味を持ったナディーヌの心情も、中盤、それほど描かれておらず、どうにももどかしい。
中盤、映画をさらうのは、ナディーヌのために用意した舞台『リチャード三世』の主役カール・ハインツを演じるクラウス・キンスキー。
お馴染みの特異な風貌で、貴族出身の役者という役どころで、妖しい魅力を放っている。
キンスキーが立ちすぎたのも、本作では欠点かもしれず。
最終的には、借金を返せず痛めつけられ瀕死のセルヴェに対して、ナディーヌが愛を叫ぶところで終わるが、これは冒頭のエロチック映画での撮影を受けてのもの。
映画現場では、「そんな演技はできない」と拒んだナディーヌが、実際の恋愛(かどうか判別すら難しいが)において、愛を見つけるという皮肉な純愛。
途中、キンスキーに食われていた映画が、終盤ではナディーヌ=ロミー・シュナイダーの映画に帰する。
後半は、「なぜか」目が離せなくなってくる。
このあたりが、ズラウスキー監督作品の魅力でしょうなぁ。
とはいえ、一般にはお薦めできない映画ですが。