「徳川治世前期。 松前の国は、蝦夷地東にあるアイヌとの交易を進めてい...」シサム りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
徳川治世前期。 松前の国は、蝦夷地東にあるアイヌとの交易を進めてい...
徳川治世前期。
松前の国は、蝦夷地東にあるアイヌとの交易を進めていた。
武家の次男・孝二郎(寛一郎)は、兄・栄之助(三浦貴大)とともに交易のため東の白糠へと向かった。
が、ある夜、使用人の善助(和田正人)が荷受場で不審な行動をし、見咎めた栄之助を殺害して逃亡。
孝二郎は追跡の途中、崖から転落し、気が付いたときはアイヌのコタンで彼らに助けられていた・・・
といった物語で、監督の中尾浩之はあまり耳なじみがないが、脚本はベテランの尾崎将也。
助けられた孝二郎がアイヌの文化に染まっていくさまは『ダンス・ウィズ・ウルブス』を彷彿とさせるが、尾崎脚本らしい骨太で、かつエンタテインメント性でもって物語を進めていきます。
物語を進めるマクガフィン的仕掛けが二つ。
ひとつは、孝二郎の「仇討ち」。
武士としての矜持から、兄の仇・善助を追う。
(ただし、映画中盤は仇討ちに注力していない)
もうひとつは(ややネタバラシになってしまうが)、善助の持つ「密書」である。
通常、マクガフィンは、そのもの自体の意味に重きは置かれないが、本作では、ドラマの主題に大きくかかわってくる。
これが映画最終盤への物語へと繋がり、結果、現在へと繋がるラストへと展開する。
上手い脚本だねぇ。
映画後半は、松前を中心とした和人とアイヌとの激突、衝突のアクション。
アクションシーンはそれほど多くないが、鉄砲対弓矢の攻防にはハラハラさせられます。
なお、「アイヌ」という語は、彼らの言葉で「人間」を意味することが序盤で示され、和人との闘いの前に、非戦コタンの長がいう台詞が興味深い。
「人は人を殺さない」
本作の主題をなすものだが、古い映画ファンなら『猿は猿を殺さない』を思い出すはず。
ここいらあたりに、脚本家・尾崎将也の映画ファンらしさがにじみ出ていますね。
あわせて観たい作品は、前出の『ダンス・ウィズ・ウルブス』以外に『セデック・バレ』『ニューワールド』『1492 コロンブス』。