「生命力」サユリ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
生命力
激ヤバで最高なホラーでした。
しかもジャンルを転換させるという荒技を見事にやってのけて面白さに繋げていて、さすが白石監督だ、さすが押切先生だとなりました。
序盤は間取りが不気味だったり、女性の霊がちょろちょろ現れて不穏な雰囲気が漂っているんですが、まだ違和感程度というホラーあるあるですが悪くない出だしだなぁと思っていたところで一気にギアが入っていきます。
序盤から良い子感全開の則雄がとても良いキャラしていて頑張ってくれ…!と応援に身が入りました。
見える系女子の住田ちゃんが何やら怪しい発言で不安にさせてきますが、そんなもん遥かに超えてくるものが出てくるもんですから大変です。
お姉ちゃんが弟の顔を柱に思いっきりぶつけて怪我させた辺りからゾッとさせられ、サユリの霊が原因だという事は分かりますがなぜそうなったのかというのが分からないまま父も急に死に、続け様に祖父も死んでいくので戦々恐々していました。
呪いが回りに回って弟は3階から突き落とされてグチャグチャに、姉は自分で首を刺して死に、母はコードを首に巻きつけて自殺(若干ここでの母の絵面はやり過ぎ感はあった笑)ととにかく絶望を叩きつけまくってくるので大変でした。
母が引っ越さない理由とか家の呪いとはなんなのかという細かな疑問にも納得のいくシーンがあったり、この後の展開に活きてくるものもあって巧いなぁと思うところがたくさんあったのも良かったです。
家族全員死亡というとんでもない展開、特に子供が死ぬシーンって邦画にはあまり無かったのでその点でもインパクトがデカかったんですが、ここにきてボケてた婆ちゃんが覚醒して師範代の頃の自分を取り戻してサユリに立ち向かうという復讐胸熱展開はめっちゃ燃えました。
ボケを直した後の婆ちゃんがピンピンしまくっててさっきまではなんだったのかくらい拳は振るうわ口は悪いわで面白いですし、この作品の根幹にある生きる事の大切さを常に問いてくれるのも良かったです。
食事をしっかり取り(めっちゃ美味しそうで予想外の飯テロ注意)、しっかり寝て、しっかりと運動して、どんなことも笑い飛ばしていく姿勢には勇気をもらえました。
アクションも派手にやってくれますし、霊媒師が来た時に思いっきりボコボコにしてたのは面白すぎました。そんなやらんでもってくらいには大暴れしてくれる婆ちゃんに感謝です。
サユリの過去が中々に悲しいもので…。
父親に近親相姦させられ、母に助けを求めても見て見ぬフリをされてしまい、引きこもってからいざ部屋を出て復讐しようとしたら家族に殺されてしまいという思わず息が詰まるような展開がサユリの暴力性や行動の真の意味を表しているようで凄いなともなってしまいました。
サユリの家族を拉致ってくるハチャメチャな婆ちゃんの行動には笑いましたが、3人を見事にまで痛めつけていくのは中々にパンクでした。
もうサユリの分までやってるんじゃってレベルの傷つけっぷりに味方であるはずの則雄と一緒に引いて見ていました。
サユリも見事に恨みを晴らすように父親にAF(死を孕む)をキメて行くところはぎゃあー!!と叫びそうになりました。
妹にも容赦なくバールのようなものを振るい、母の目を潰してと復讐のオンパレードには傍観することしかできませんでした。
完全にモンスターと化したサユリに立ち向かう2人の前向きさが本当に見ていて清々しく、血反吐吐こうがボコボコにやられようが生き延びる事大前提で突き進んで行くので応援に力が入ります。
生きるための呪文を唱えて、住田に思いの丈を伝え、なんなら伝えすぎでサユリを突破していく様は最高でした。
その後も怪しげな雰囲気で終わらすという愚行は全くせず、元通りの日常に戻り、その中でより生きることを楽しく思いながら家へ帰るという爽やかな終わり方まで美しかったです。
ホラー映画を見て感動するというのは初体験で一本取られました。
原作ありというのも込みで1本で作品が完結しているというのもとても良くて、1から10まで無駄なく楽しめるJホラーで最高でした。今年ベスト候補です。
鑑賞日 8/26
鑑賞時間 15:20〜17:20
座席 D-18