「「JOKER/ジョーカー」を思い出す」悪魔と夜ふかし Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
「JOKER/ジョーカー」を思い出す
個人的に好きなデイヴィッド・ダストマルチャンが主演で、彼が主人公を務める作品というのも中々珍しいが、作品自体も珍しいタイプである。本作もPOVに当てはまるのかも知れないが、テレビの生放送という設定の為、画面酔いになる人も少ない様に見える。放送中は70年代の画面風なザラついた映像で描き、コマーシャル中はドキュメンタリー風でモノクロ調にする、表と裏の区別をはっきりつけている点も面白い。一躍"夜中の帝王"になる予定が、視聴率では2番手3番手、人気ランキングも2番手、という"もう1歩も引けない"状況からくる焦りがスタッフ等の対応からも見て取れる様である。そこで秘策として打ち出した、ハロウィン特番、生放送で悪魔と対峙するという物だったが、本番中という緊張感が伝わってくる、なんともバタバタしたせっかちな作品という印象だった。
演出がやたらとヤラセっぽいのだが、徐々に悪魔の手が伸びてくる辺りは不気味である。怖いかと聞かれればNOだが、POVにも驚かなくなった現代でも十分にインパクトを残せる作品ではないだろうか。生放送の阿鼻叫喚の地獄絵図はどことなく「JOKER/ジョーカー」のラストシーンと似たテンポにはなるが、何とも考えさせられるラストには良いショーを見せて貰ったと拍手をしたくなる思いだ。
主人公にも大っぴらに言えない事情もあり、現代であれば直ぐに特定されそうな事だが、ちゃっかり悪魔にバラされたり、本当に皆胡散臭い人物ばかり出て来て個人的には恐怖よりも笑いが勝ったが、主人公が自分自身と向き合う展開になる事や、妻亡き後NYから失踪し、久しぶりの復帰作である事、走馬灯の様に過去の"ウケた"瞬間に今の自分が置き換えて登場する事などから、本当はもう主人公はとっくに悪魔の手に堕ち、全部妄想だったのでは?と思えてしまう。一応冒頭では“記録映像です"みたいな説明も出るが、これと言った答えも出ない為色々考察するのも面白い映画だと言えよう。キャラクターの癖が強すぎて本当に胡散臭い作品だが、ホラー好きならば観て損はしないはずだ。
