劇場公開日 2024年10月4日

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「「悪魔は裏切らないが、人間は自らを裏切る」」悪魔と夜ふかし neonrgさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「悪魔は裏切らないが、人間は自らを裏切る」

2025年8月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

『悪魔と夜更かし』は、思いがけず非常に優れた作品でした。70年代テレビの雰囲気を巧みに再現し、番組部分とCM裏を切り替えるモノクロ演出が独自のリズムを作り出しています。限られた登場人物はそれぞれ明確な役割を持ち、簡潔ながら寓話性を帯びた物語が展開されていきます。

主人公ジャックは、圧倒的なカリスマではなく、弱さを抱えた“普通の人間”として描かれます。愛する妻への想いと自分の地位への執着の間で揺れ動き、ついに悪魔と契約してしまう姿には観客が共感できる人間的な脆さがありました。対照的に、サングラス姿のプロデューサーは欲望の化身として描かれ、相棒のガスは善意を体現することで構造を支えます。このバランスが物語に深みを与えています。

映画の核は「悪魔は裏切らないが、人間は自らを裏切る」という構造にあります。契約は守られますが、その結果は欲望の裏側を暴き出し、愛も地位も崩壊させます。これは“自己欺瞞”というキリスト教的テーマを鋭く寓話化したものだと感じました。単なるホラーではなく、隠されたもの(オカルト)が顕れることで、人間の本質と向き合わざるを得なくなる作品です。

同時に、オカルト映画としての快楽もしっかり備えています。番組のショー構造、陰謀論的リアリティ、怪異のショック描写(悪魔の顕現や惨劇の数々)は、ホラー映画的カタルシスを提供しながら、最終的には「誰も悪魔に勝てない」という冷徹な結末に収束します。その構造は日本の怪談「生き人形」を思わせ、テレビという虚構に現実の恐怖が侵入する瞬間の緊張感を生み出していました。

娯楽としてもテーマとしても二重に楽しめる、まさにオカルト映画らしい完成度の高い一作でした。見終わったあとに「ただのホラーではなく、隠されたものを暴く寓話だった」と思わせてくれる点が、この映画の大きな魅力だと思います。

鑑賞方法: U-NEXT

評価: 82点

neonrg
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