「おふざけで降霊番組やったら本物が来ちゃったよ、という粗い筋書きの安っぽいホラーの外見を装いつつ、アリ・アスター作品の風味も感じさせるような侮れない一作」悪魔と夜ふかし yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
おふざけで降霊番組やったら本物が来ちゃったよ、という粗い筋書きの安っぽいホラーの外見を装いつつ、アリ・アスター作品の風味も感じさせるような侮れない一作
悪魔とか幽霊とかどうせいるわけないし、まぁ視聴率稼ぎのためにちょっと仕込んどくか、と小ばかにして儀式をしたらほんとに呼び寄せちゃってさあ大変……、というホラー映画の定石の一つといってもいいような、ある意味使い古された感のある設定から始まる本作。
しかし面白いのは、出演者もスタッフも、どこまでが演出(仕込み)で、どこからが予想外の事態なのかがわかってないし、観客もまた同じ目線で物語を追わざるを得ない、という状況そのものです。
どこかで、ここまでは実は演出の一環なんですよー、と種明かしがされるであろうことをどこか心の中で期待してしまうのですが、そんな回収がなされないまま次の展開に進んでいくと、その宙ぶらりんな感覚が足元を揺るがすような不安に変わっていきます。
この、「観客であるあなたたちがどう感じ取ろうが、こちらは知らん」という突き放した態度がどこかスタジオ内の状況をすべてコントロールしていると高を括っている製作スタッフの姿と重なって見えます。
さらに中盤以降、現実と虚構の境界線すらあいまいになっていき、もしかしてこの物語、最初から……、と気づいてしまうところも含めて、アリ・アスター的であるとも言え、使い古された題材を用いつつ、まさに今現在のホラー作品となっていました!
コメントする