「デモン ストレーション」悪魔と夜ふかし レントさんの映画レビュー(感想・評価)
デモン ストレーション
視聴率競争に勝利するために病床にあった妻まで生出演させたものの、トップになれなかったテレビ司会者のジャック・デルロイ。彼は失意の中しばらく姿を消していたが、今回再起をかけて自ら企画を持ち込む。
その企画とはカルト教団の集団自殺事件からただ一人生き残った少女による悪魔降臨の生中継だった。
前座でスタジオを温めるためにキャスティングされた霊能力者に異常現象が起きたり、次第にスタジオは不穏な空気に包まれるが、それとは逆に視聴率は上がり続ける。
そして超常現象研究家のジューンの中止の声も聞かず降臨術を強行させたことから事態は大変なことに。
ジャックはトップになるために悪魔に魂を売り渡していたのだ。その望みはかなえられるが、彼はそのまま破滅へと向かうことに。
悪魔の姿がテレビの電波に乗って人々を恐怖に陥れる。悪魔にとっては電波に乗せて多くの視聴者たちを一度に呪えるからこの当時としてはこれほど悪魔にとって便利なものはなかったのかも。でも今はテレビなどのマスメディアからインターネットメディアの時代に。
現在ネット上では日々陰謀論やフェイクニュースのようなデマが飛び交い、人々を翻弄している。それら垂れ流される情報は人々を互いに疑心暗鬼に陥らせて分断させ争いを誘発させている。きっと現代の悪魔はテレビよりも広範囲に世界中に張り巡らされたネットにその居場所を見出したに違いない。
ジャックが最後につぶやく「眠れる者たちよ、目を覚ませ」とは今のネットに浸りきってる人々に対して向けられた言葉のようにも思えた。
作品の舞台である70年代といえば「エクソシスト」の大ヒットでオカルトブームに火が付いた時代。日本でも五島勉のノストラダムスの大予言がベストセラーになったり、テレビでも心霊番組とかよくやってたなあ。
いまでは鉄板のやらせであるスタジオ収録で機材が突然倒れたりとか、真剣にビビッてた気がする。子供だったし。
本作はいわゆるモキュメンタリー方式によって当時のオカルトブームにあやかろうとしたテレビ番組収録現場を再現したような作品。ただ、やらせのつもりが本当に心霊現象が起きてしまってシャレにならなくなるという。
怖がらせるというよりは、エンタメに徹した作品。スタジオに霊能力者と対峙する懐疑主義者を配置することにより予想通りの展開が繰り広げられて楽しませてくれた。
終盤の大暴れする悪魔にスタジオがてんやわんやの大騒ぎになるのには笑わせてもらった。まさかあそこまでやるとは思わなかったな。SFXもなんだか70年代風のチープさをあえて再現したんだろうか、懐かしい感じがした。この手の作品が好きな人にはたまらない作品。