「この映画自体が、集団催眠によるものかもしれない、と言うカラクリが含まれていた」悪魔と夜ふかし Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画自体が、集団催眠によるものかもしれない、と言うカラクリが含まれていた
2024.10.10 字幕 MOVIX京都
2023年のアメリカ映画(89分、 PG12)
お蔵入りになったオカルトトークショーの発掘フィルムを視聴すると言うテイストのホラー映画
監督&脚本はコリン・ケアンズ&キャメロン・ケアンズ
原題は『Late Night with the Devil』で「悪魔と夜ふかし」という意味
映画は、1974年頃に人気を博していた「ナイト・オウル」と言うトーク番組の歴史にふれ、司会者を務めていた元ラジオパーソナリティのジャック・デルロイ(デビッド・ダストマルチャン)の人となりが描かれて始まる
番組は相棒のガス・マコーネル(リース・アウテーリ)との絶妙な掛け合いが見どころで、番組プロデューサーのレオ(Josh Quong Tart)、ディレクターのフィル(Christpher Kirby)たちと創り上げてきた
だが、ライバル番組の牙城を崩すことができず、ジャックは人脈を広げるためにも「ザ・グローブ」という秘密の会合に足を運ぶようになっていた
彼には女優の妻マデリン・パイパー(Georgina Haig)がいて、献身的に夫を支え続けてきたが、ある時、衝撃のニュースが世間を騒がせた
それは、タバコを吸わないマデリンが肺がんに侵されたと言うもので、病魔は一気に彼女を襲っていった
そして、ジャックの番組に出演した2週間後には帰らぬ人となり、ジャックは番組から姿を消すことになった
いよいよこれで終わりかと思われた1ヶ月後、ジャックは復帰を果たし、低迷していた視聴率を徐々に押し上げていく
そして、視聴率調査週間にて、「オカルト検証番組を生放送で行う」というアイデアを実現することになったのである
番組には、「奇跡の人」として名高いクリストゥ(フェイザル・バジ)、元マジシャンの非科学否定論者カーマイケル・ヘイグ(イアン・ブリス)、そして世間を騒がせている「悪魔との対話を綴ったノンフィクション」の執筆者ジューン・ロス=ミッチェル(ローラ・ゴードン)とモデルの少女リリー(イングレット・トレイ)が参加することになった
クリストゥは現場にいる観客にゆかりのある霊を呼び寄せ、カーマイケルはそれらを科学的に否定していく
だが、クリストゥが最後にコンタクトを取ったマミーは該当する人がおらず、そうこうしているうちにクリストゥは大量に黒い液体を吐き出して救急搬送されてしまった
映画は、クリストゥ退場ののちにジューンとリリーによる悪魔召喚が描かれ、それを催眠術だとカーマイケルが同じように実践する様子が描かれていく
被験者としてガスが選ばれ、彼は公衆の面前で体からミミズが湧き出す幻影を見せられる
VTRを再生することになったが、そのようなものは写っておらず、カーマイケルはその場にいたほとんどの人を集団催眠にかけることに成功していた
続いてリリーのVTRを再生すると、そこには映ってはいけないものが映っていた
それはジャックの妻マデリンの霊体のようなものであり、マミーはジャックがプライベートで妻を呼ぶ時の呼び名だったことがわかるのである
と言う流れのお蔵入りになったテレビショーを見ていくと言う流れになっていて、休憩時間なども記録映像として残っていて、それも包み隠さずに映し出していく
いわゆる事故映像のような番組になっていて、この映像を機にジャックは大衆の前から姿を消した、と言うことになっていた
映画は、「ザ・グローブ」にて「番組のためにあるものを捧げてしまったジャック」が描かれていて、それがマデリンの命と引き換えだったことが仄めかされる
そして、リリーとクリストゥの出現によって、マデリンの霊が番組にやってきて、そこで嫉妬に狂った彼女が様々な心霊現象を引き起こし、関係者を暗示にかけていたことがわかる
ジャックは末期癌の妻の望みを叶えるために「ザ・グローブ」の伝統的なナイフで彼女にトドメを刺すことになったのだが、実際にはリリーを刺し殺している映像が残っている、と言う感じになっていた
これらの映像がお蔵入りした理由は明白であるが、番組は生放送だったので、お茶の間にあの映像が流れていたことになる
映画は、放送された映像にジャックの脳内妄想が付加されている感じになっているが、本当に流れてしまった映像はもっと過酷なものだったようにも思えた
いずれにせよ、なかなか趣向の凝ったホラー映画で、B級っぽい設定のイロモノホラーのように思えるが、意外なほどに隙がない作品だった
リアルタイムで進んでいくが、映像にのめり込んで時間を忘れてしまう感覚になっていた
常に4:3の比率の映像で、時折16:9になるのだが、マデリンの病室刺殺や儀式などは4:3のままで、境界線のよくわからない内容だった
おそらくはジャックの脳内妄想的なものも含まれているのだが、それすらも映し出していると言う矛盾が生じていた
とは言え、このシーンは前半で登場するガスの腹捌きのシーンと同じく「視聴者をも集団催眠にかけた」という延長線上のものなので、実際にテープに記録されていたものと違っても問題はないのかもしれません