劇場公開日 2024年10月25日

「悔しいという苛立ち」がんばっていきまっしょい サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5悔しいという苛立ち

2024年11月2日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

幸せ

これまた公開週にも関わらず動員が恐ろしく少ない、閑散期特有の大コケ映画。アニメーション、ストーリー、音楽と全て自分の苦手そーな感じだったから見るのを戸惑うぐらいだったんだけど、意外や意外。過去に実写映画化、ドラマ化されている小説なだけあって、かなりいい青春映画だった。
ベタな展開ではあるけど、色眼鏡で見る青春ではなく、真っ向からぶつかってるような青春で不覚にも胸が熱くなってしまった。スポーツアンチだけど、こういうスポーツ映画だったら見れる。勝ち負けにこだわってないとことか、すごくいいね。

中身がいいからこそ、スタートダッシュミスってるのは残念に思えた。タイトルであり、わりと重要になってくる「がんばっていきまっしょい」という言葉を連呼し、サラッと意味までも説明してしまう。せっかくなら大事に扱った方が物語に深みが出ただろうし、序盤ではなくもっといいところで使うべきだったと思う。あの時見てたんだよ!って言われてもあんまピンと来ないし、始まって直ぐに情報を入れることを求める映画は優しくないと、個人的に思う。

あと予告でも感じていた嫌悪感はやっぱり拭えず。まあ最終的には見慣れたけど、こんだけ技術が進化している今、こんなアニメーションはどうも受け入れられない。Netflixの「攻殻機動隊SAC2045」は3DCGを物にしている感じがして大好きだったけど、基本この作りはどうしても安っぽく感じてしまうし、動きとセリフの不一致が気になって仕方ない。
本作は特に、フレームレートが少ないのか、動きがガクガクでかなり見ずらい。ボートの成長が絵で見て分かりやすかったのは良かったけど、正直なところ普通のアニメで見たかったな〜と何度も思ってしまった。だって、キャラが画面いっぱいに写った時とかのアニメ、めちゃくちゃ綺麗で超いい感じだもん。ぜったいそっちの方がもっと爽やかさ出るって。

ただこの映画、キャラクターが抜群に良いからあまり深いことが気にならない。感情の変化とか成長とか、細かな描写までこの100分以内という短尺で見事にまとめられている。バラバラのみんながひとつになっていって、些細なことでまたバラバラになってしまって、あの時と同じバラバラなのにやっぱり何かが足りなくて...。こういう高校生特有のもどかしさや歯がゆさを言語化、映像化出来る人ってホントすごい。
ほぼ0からのスタートの部活動。人生はそう甘くないと、ちょっと厳しいけどとても現実的なことを教えてくれる青春ドラマで、大きな夢を見せてくれる映画もいいけれど、個人的にはこういうどこにでもありそうな、だけど少し憧れてしまうような映画が大好き。自分もひと頑張りしようと、そう思えるからね。

長い間、じっくりと描いてもいいはずのテーマをこの短さに収め、そして完璧に描ききっていることに感服。こういうことなんだよな。無駄に長々と引き伸ばしてもなんの意味もない。見たかったキラキラとした瑞々しさが見れて満足度高かったです。ただ、「ゼンブ・オブ・トーキョー」という強敵が同日公開にいてしまったがばっかりに、若干目劣りしてしまうのが悔やまれるが...。

サプライズ