「主人公がやる気を失った理由と、やる気を取り戻した理由が分かりにくいのが惜しまれる。」がんばっていきまっしょい tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公がやる気を失った理由と、やる気を取り戻した理由が分かりにくいのが惜しまれる。
高校のボート部の話なのだが、青春映画でよく見かける学校の成績とか、卒業後の進路とか、家庭の問題とか、恋愛沙汰とかにまつわるエピソードがほとんど描かれないことに、少なからず驚かされる。
それを象徴するのが、登場人物達の親が(話題に上ったり、声が聞こえたりはするのだが)まったく画面に登場しないということで、「ボート部の話」としての純度の高さが感じられた。
負けて、悔しさを味わって、次に勝つために努力するという、まさにスポ根ものの王道を行くような物語も、「あの頃」の自分に重ね合わせて共感が持てるし、懐かしくもある。
その一方で、せっかく練習に打ち込んでいた主人公が、花火大会の夜を境にやる気を失い、さらに、再びやる気を取り戻すという展開は、物語の大きなポイントになっているにもかかわらず、その理由が今一つ分かりにくいのはどうしたことだろうか?
主人公がやる気を失ったのは、密かに思いを寄せていた男子部員と、男嫌いのはずだった女子部員が親しくしているのを目撃したからだと思ったのだが、主人公に特に恋愛感情はないようなので、そんな嫉妬絡みの話ではなさそうだ。
どうやら、花火大会の夜に風邪をひいて練習に出られなくなったり、練習に復帰後にオールを折って仲間に怪我を負わせたりしたことで、主人公に、上手く行かない時の「諦め癖」が出てしまったことが、やる気を失った理由のようなのだが、ここのところは、もう少し分かりやすくした方が良かったのではないだろうか?
同様に、主人公がやる気を取り戻した理由も、仲間と練習する楽しさを思い出したからなのか、ライバル校のボート部員に、仲間と一つになることの大切さを教えてもらったからなのかが判然としないので、もっと明確な描き方をしても良かったのではないだろうか?
それから、CGアニメの絵柄や動きは美しくて洗練されているのだが、血と汗と涙の青春を描くのであれば、もう少し「泥臭さ」が感じられても良かったのではないだろうか?
いずれにしても、「ボート部をやる意味はある」と思えるようになった主人公は、結果のいかんに関わらず、仲間と共に一つのことに打ち込むことのかけがえのなさを知ったのだろう。そして、そんな彼女が生きた時間は、まさしく「青春」そのものだったと思えるのである。
なるほど、そういう「大人の事情」もあるのですね。
主人公だけでなく、他の4人の部員も、皆キャラ立ちしていたのですが、それぞれを描き込もうとすると、確かに尺も予算も足りなくなってしまうのでしょうね。
親が映らないのは、3Dモデル作成というコスト面が大きいのかな、と思います。
(モブだけ手描きの作品も多いし、リーのバイト先に来た客のクオリティだけ低かったし)
悦ネエの心理描写は本当に物足りなかったですね。
1クール作品なら、脇の話も絡めつつ良い作品になりそうなんですけど。