「【敗れない映画】」室井慎次 敗れざる者 てっぺいさんの映画レビュー(感想・評価)
【敗れない映画】
いまだ実写邦画のダントツ1位を誇るシリーズの集大成。過去映像を懐かしみ、新たな切り口の展開に息を飲む。このシリーズは、やはりいつまで経っても他に敗れない。
◆トリビア
〇公式サイトには、”オールバックはムースで固める”や”美幌署署長時代、人妻と…”など、室井慎次にまつわるトリビアが掲載されている。
〇公式サイトに掲載された室井の”履歴書”には、住所や電話番号、広島県警察本部での経歴、猟銃免許の取得年月等、履歴が細かく記載されている。
〇日向を演じた福本は初の二面生のある役。「(小泉今日子が日向真奈美を演じる)当時の映像を見て、話し方や動きを自分なりに研究した」と振り返る。
◆概要
1997年に放送開始されたテレビドラマ「踊る大捜査線」シリーズで柳葉敏郎が演じる人気キャラクター、室井慎次を主人公に描く映画2部作の前編。
【製作】
#亀山千広
【脚本】
#君塚良一
【監督】
#本広克行
【出演】
#柳葉敏郎 #筧利夫 #真矢ミキ #福本莉子 #齋藤潤 #松下洸平 #前山くうが #前山こうが #矢本悠馬 #生駒里奈 #丹生明里 #松本岳 #佐々木希 #甲本雅裕 #遠山俊也 #西村直人 #赤ペン瀧川 #升毅 #飯島直子 #小沢仁志 #木場勝己 #稲森いずみ #いしだあゆみ
【公開】2024年10月11日
【上映時間】115分
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◆以下ネタバレ
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◆敗れざる者
過去の名シーンフラッシュバックから入り、それが次第に警察を辞職する室井の姿に変わる冒頭。亀山プロデューサーは、無念で思い破れても室井さんには決して“破れざる者”であってほしいという願望があったと語っている。室井は、過去の事件や新米弁護士の事を鮮明に記憶しており、“あなたはそんな人だ”と松下洸平扮する桜に言われたように、抑えようとしてもどこか室井の中に沸々と湧き上がるものが、劇中で至る所に描かれていた。そんな、警察を辞してなお“思い破れざる”室井の姿の一方で、自らの贖罪のように、事件の犠牲になった孤児を養う室井。タカの母親の仏前への礼儀を弁護士に問う室井は、穏やかにして真をつく里親ぶり。“1年生”ながらも、真摯に子供達に向き合う室井も、“思い破れざる”姿そのものだと思った。
◆懐古
それこそ冒頭のフラッシュバックから、昔の名シーンが劇中に続々と挟み込まれる。杏が作ったオムライスといった間接的なものから、室井が食べていたキムチラーメン、仕込んでいたきりたんぽなど直接的なものまで、当時を思い起こさせるアイテムが続々。レインボーブリッジが封鎖できなかったくだりが何度もしつこく描かれたのは、当時の許可取りに本当に苦労した製作側の怨念めいたものが見え隠れ笑。刑務所で再会した看守との当時の会話がきちんとエンドロールで示されるあたり、ライトファンに優しい演出も。そもそも当時の映像で冒頭とエンドロールを挟むのは、理論的にも感情的にもこの映画そのものが“懐古”に帰着する証拠。映画全体が、いまだに実写邦画でダントツ1位に君臨する本シリーズを誇り、懐かしむ感情で満ち溢れていた。
◆ラスト
室井家の小屋に火がつくラスト。タカが面会室で犯人に真理を説き(あのシーンは口数少ない室井の心をタカが代弁するようで、本当に胸が熱くなる素晴らしいものだった)、そんなタカに“大きくなった”と誇らしげな室井の姿も、“1年生”の室井に“そんな室井さんが好き”と抱きつく愛らしいリクの姿も、室井が小屋の整備に苦労していたフラッシュバックも全て、あの小屋の火がいかに残酷なものか、その振りかぶりの演出だった。室井の当時のコートが火に巻かれるのも、どこか犯人の憎悪が見えるよう。シリーズの実績的にミスリードで大どんでん返し、な展開はあまりなく、杏の仕業という事になるのか。それこそ本作そのものが次回作への大きな振りかぶりな訳で、“生き続ける者”が否応なく気になる終焉だった。
最後に余談だが、洋梨のあった死体発見現場にかけつけた車のナンバーは“04-74”(ようなし)と“08-31”(おやさい)。新城の車は“91-74”(悔いなし?)と、ナンバーに明らかな意味づけアリ。ただし室井の車は“22-74”と、これがどうにも意味が当てはまらない。もし何かお気づきの方おられたら、ぜひご教示ください。
◆関連作品
○「踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!」('98)
映画版第1作。実写邦画歴代興行収入第3位。FOD配信中。
◆評価(2024年10月11日現在)
Filmarks:★×3.7
Yahoo!検索:★×4.1
映画.com:★×3.6